第3話 残酷 魔族との邂逅
【・・・鑑定】
僕は生きているかを確認するために鑑定を掛けた。
種族:ファントムフェンリル
レベル:367
体力:432
攻撃力:455
魔力:679
魔法力:912
素早さ:524
スキル:幻惑の霧。統一。魔力砲(風・毒)
称号:魔族の手下。幻惑の王(第三段階)。
状態:死。
うん、やっぱり魔族が絡んでいたか。魔族の手下ということは・・・洗脳されていたかな。
「ね、ねぇ。亀谷くん。その狼みたいなのは死んだの?」
恐る恐るというような声が背後から聞こえる。
「・・・うん。もう倒した。こいつはファントムフェンリルといった魔物で、幻惑の霧と言ったスキルを使って、獲物を疲れさせて食い殺す奴だ。こいつが倒れたから、もう体育館に行けるはず。」
「じゃ、じゃあ、はやく行かないと。他のみんなは体育館にいるんでしょ。」
と、矢木さんが少し震えた声で言ってきた。
・・・。振り返ってこのことを告げるのが怖い。振り返ってみんなが僕をどんなふうに見ているのかが怖い。けど、言わないと。
「・・・その体育館にこのファントムフェンリルを操っていた奴がいる。恐らく、その奴とはこのクラスの学級委員の二人だ。」
恐らくと言ったが、ほぼ確定だ。
「え、あの二人が!嘘でしょ!それにこの狼を操っていたって・・・。じゃあ他の人達は!」
今度は伊那さんが声を張り上げた。あまり話したことはないが穏やかな性格の子だ。そんな子が声を張り上げたからか、周りも、「あいつは大丈夫かな・・・。」とか「ターくんならきっと生きてる。」などの声が上がっている。
「・・・・・危険だし、もしかするとみんなの望まない光景があるかもしれない。僕一人で行ってくるよ。」
と、言った瞬間空気が固まった。・・・望まない光景。それは、大切な人が無惨に殺されている場面だ。
「そ、そんなの。私達だって友達を、みんなを助けに行きたい!!!」
と、クリスさんが言ったが、足が震えている。女子はスカートだから震えているのが丸わかりだ。
「・・・ブラックフェンリルにも、負ける人たちがみんなを助ける?友達、恋人、兄、姉、先輩を救いたいのはわかる。けど、危険だ。だから行かせたくない。分かって。」
これは本心だ。数ヶ月過ごしただけとはいえ仲良くしてもらったみんなを死なせたくない。
「そんな!」
クリスさんが悲痛な声を上げる。
「・・・足手まとい?私達。」
と、今度は矢木さんが言ってくる。
「・・・・・いや、自分の力だけでなく魔物を操らないと行けない時点で、低級魔族だろう。みんながいても大した足手まといにはならない。」
「ならっ!」
「・・・矢木さんは、人が殺されているのを見て何も感じないわけじゃない。きっと心に傷を負う。それは他のみんなも同じ。だから「だからって、亀谷くんだけにそんなことさせるなんてできない!!!」」
僕の言葉が終わる前に矢木さんが叫んだ。思わず驚いてしまい反論がすぐにできない。
「それに、この世界ではもうそんなこと当たり前なんでしょ。」
と怯えながら言われた。
けど、
「なんでそのことを。」
そう。まだこの事は話していないはず。
「こんな状況になって、魔族というものもいて、それがここだけだなんて思うわけ無いでしょ。」
考えてみればそうだ。
「そして、いつからかわからないけどクラスメートだったものを見てみたいの。」
しっかりとした目で言われた。こりゃ無理だね。
「はあーーーーー。分かった。でも護衛はつけるからね。」
久しぶりになるけど、怒ってないよね。
「やったー。て、え護衛って?」
とキョトンとした顔で言われた。その後ろから「やばい顔が真っ白だ」「もっと腕押さえて!」「血で滑ってもう無理!」という声が聞こえた。
よく見てみると、石川君が片腕を食いちぎられ血を大量に流していた。顔面蒼白だ。
「!石原くん!」
今まで対話していた3人も忘れていたのかびっくりしている。
そろそろまずいな。
「みんなどいて。」
はやく助けないと。
「でも。」
「いいから。石川くんが死んじゃうよ!」
焦る気持ちを押させながら言った。
「!分かった。みんな離れて。」
矢木さんが言って、全員が少し離れた。
「ありがとう。これで助かるよ。」
【エクストラヒール】
【フラッシュ】
僕はエクストラヒールを唱えると同時に切断された腕のところにフラッシュを使った。
「キャッ。眩しい。」
誰かが言ったがあまり気にしなかった。なぜなら、回復魔法はあまり使ったことがないからだ。一応、死にかけの人でも治せるエクストラヒールまでは覚えているけど、怪我をしてもヒールで治るため実証して以来使っていなかったのだ。
結果は・・・。
「あ、な、な、治っている!」
「うそ!」
「え、切断されてたよね。」
「これが魔法・・・。凄い。」
治っているみたいだ。
「良かった〜。あれで治っていなかったらどうしようかと思った。」
本当にドキドキした。
「す、凄いね。腕も治せるなんて。」
と、矢木さんが言ってくる。
「それより護衛って?」
とクリスさん。
「それよりってね。」
と矢木さん。
「だって、部位欠損魔法は異世界物でよく出てくるよ。」
とクリスさん。
「いきなり目の前で見たら驚くでしょう。」
と矢木さん。
「なんで言い争いしてるの。護衛は僕の従魔だよ。」
二人をなだめながら護衛について紹介する。
「僕は従魔はあまり持たないけど、というか正式に従魔契約を結んでいるのは2体だけなんだけどね。」
そう、僕は2体しか持っていない。けど、
「1体でも低級魔族くらいは余裕で倒せるから。安心して。」
「え〜と、どんな姿なの?」
と、矢木さん。
「可愛いの?かっこいいの?」
とクリスさん。
「う〜〜ん。まぁ喚ぶよ。」
【召喚サモン:ガーネ。コスモ。】
僕がそう喚んだ瞬間床に2つの魔法陣が現れた。そこからまばゆい光が溢れ出し、現れたのは・・・。
「「か、可愛い〜。」」
とふたりは叫んだ。なぜなら、出てきたのは赤い瞳の子犬と青い瞳の子猫だったからだ。
「わん!っわんわわんわん!」
「にゃーにゃにゃにゃーにゃー。」
と二匹が叫んだ。・・・僕の方を向いて。
「ねぇ。なんて言ってるの?」
と矢木さん。
「はわわ~。かわいい〜〜。」
とクリスさん。
「あぁ。簡潔に言うとほったらかしにすんな。だよ。」
苦笑いしながら言った。この2体は通常の従魔よりべったりが強いらしいので、こうなることがあるのだ。
「へ、へぇ〜。」
「ガーネ、コスモ。ほったらかしにしていたことは謝る。けど、今はここにいる僕以外の人を守ってくれないか。」
真剣に頼み込む。目と目を合わせて真剣に。すると。
「・・・ワンッ。」
「・・・にゃあ。」
了承のようだ。
「ありがとう。」
さて、急がないと。
「みんな。僕と一緒に体育館に行きたい人は来て。このガーネとコスモがなにがあっても守ってくれる。ただ体育館には残酷な光景があるかもしれない。それでも来る人だけは僕ときて。」
全員思案してから、
「私は行く。」
「俺も行く。」
「俺も。俺の手で絶対に桜を助けるんだ。」
「僕も行く。」
「わ、私も。お姉ちゃんに会いたい!」
と、腕を食いちぎられて絶賛気を失っている子以外は行くようだ。
「そう。分かった。でも、石川くんにも護衛が必要だね。」
【スキル:無機物生命】
スキルを唱えると、椅子などが組み合わさり、石川くん護衛対象の周りを囲んだ。
「ねぇ、これなに?」
と矢木さんが聞いてきた。
「壁?」
とクリスさん。
周りからは、椅子が動いたことによって驚きの声が漏れている。
「これは、簡易ゴーレムで、僕の魔力でつなぎ合わせているんだ。」
これなら、少しは保つ。
「石川くんは大丈夫。さあ、体育館に行くよ。」
急がないと。
「「うん。」」
「みんな、固まりながら走って。ガーネ、コスモ。みんなの周りを周回して守って。」
「ワン。」
「んにゃ。」
そうして僕達は体育館に向かって走っていった。
「着いた。みんな。静かに。」
僕が、そういうと全員顔色を青くしながら静かにうなずいた。常人には感じることができない魔力。それがみんなに感じさせるほどなのだからかなり濃密な魔力なんだろう。だが、残念なことに僕は、これ以上濃密な魔力を魔王討伐の際に感じたからなれてしまったようだ。
そんな事を考えながら中の様子を確認していると中から男と女の声がしてきた。
{おい、人間どもがフェンリルどもから逃げ出してきてるぜ。}
{えー、アイツラ全く役に立たないじゃん。しょうがないから私達が相手するか~。}
{しゃぁねぇ。人間の二匹や三匹喰って残りは献上するか。}
{そ、そんな二、三匹喰うなんて………せめて五、六匹でしょう。}
{お、いいこと言うねぇ。じゃあ、どっちの方にする?檻の人間か?それとも、外の人間か?}
{檻の奴は疲れ切っていて生きが良くないから、外のやつにしましょう。}
そう言われた瞬間、後ろのみんなが更に顔面蒼白になった。
{そうだな。【エアバインド】}
と、男の方の魔族が魔法を放ってきた。
「ッ!みんな!固まって!」
【サンダーシールド】
ドンッ!ガラガラ。ゴンッ!
シールドを貼り終えた瞬間、男の魔族が放ってきた魔法とぶつかった。とても重い音と、壁が崩れる音がする。
{お、こいつは・・・}
{どう、何人捕まえた?まさか、三とか言わないよね。}
{いや、ゼロだ。}
{はっ?}
{ゼロだ。どうやら、防がれたらしい。}
{ッ!どうやら、少しは楽しめそうね。}
ガラガラ
壁の崩れていく音と同時に立ち込めていた煙も晴れてきて、2体の魔族の姿が見えた。
{{ッ!}}
{あいつは………}
{たしか………亀谷水流。だが、なんで魔法を防げる?}
二人は驚いているようだ。今が好気だが・・・。
「みんな、動かないでね。ガーネ。コスモ。」
「クゥン」
「みぃ」
「全力でみんなを守って。頼りにしている。」
「ワンッ!」
「ニャアアアア!」
僕がそういった瞬間、二匹は白い光に包まれた。この状態なら大丈夫だろう。
「宜しく。」
そう言って、薄緑を取り出す。
「亀谷くん。気をつけてね。」
他の人は魔力に当てられて、声も出せない中、矢木さんがそう言ってきた。
「うん。ありがと。」
そして、魔族のもとに向かう。そして、そこで見た光景は・・・。
「ッ!酷いな。」
そこには、魔法の檻に囲まれた生徒と、抵抗したのか、武器を持った状態で半分食い散らかせられた先生たち。ただ、喰われているのは、若い女の先生だけだった。
「これは・・・。」
絶句していると、魔族が話しかけてきた。
{おい、亀谷。なんでお前なんかが俺の魔法を防げる。}
しかし、僕は答えない。
{おい、返事しろ!}
「ねえ、この人たちはお前らがやったの。」
{ったく。こっちの質問に答えろよ。まあいいや、俺たちは寛大だからな。そうだ。全部俺たちの成果だ。ちなみに女だけ喰ったのは他のが不味いからだ。なぁ、エイノメー。}
{ええ、不味い男の肉なんて喰いたくもないわ。}
{そういうことだ。さあ、こっちの質問に答えろ。なんでお前みたいな下等生物が俺の魔法を防げる。}
ああ、こいつらに先生たちは喰われたのか。
「・・・答えてあげる。それはね、」
【雷流 壱の技 放電】
激しい雷の音と共に、二体の魔族の首が飛んだ。
「お前らのほうが弱いからだよ。」
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