第44話

「はい、これが最後の一本のコーヒー牛乳です」


私は自分用に残して置いたコーヒー牛乳を持ってきて伯爵様の前に差し出した。


「もうなかったのでは?」


そう言われて悔しそうな顔をして説明した。


「これは私が取っておいた本当に最後のコーヒー牛乳です!貴重な品ですからありがたく味わってくださいね!」


くそー、楽しみに取っておいたのに……


冷え冷えで汗をかいてるコーヒー牛乳が美味しそうでゴクリと唾を飲む。


後ろ髪ひかれる思いでコーヒー牛乳から目を逸らした。


「伯爵様、そちらも毒味をした方が……今度こそ私が」


うるさい兵士が今度はコーヒー牛乳を毒味しようとすると言い出した。


それなら私がしたいくらいだ!


「いや、いい」


すると伯爵様はそれを拒んだ。


「少ししかないし開かれた様子もないから大丈夫だ、それに毒味ならさっきグリフィスがしてくれたからな」


「私で良ければそちらもしましょうか?」


グリフィスさんも飲みたいのかコーヒー牛乳をじっと見つめている。


伯爵様は二人を無視してどうやって開けるのかと瓶を模索していた。


「上の蓋を開けて飲むんです」


私は仕方なく教えてあげるとなるほどとひとつひとつを素直に確認していく。


「ではいただこうか」


伯爵様が蓋を開けるとコーヒー牛乳をクイッと一口飲み込んだ。


何となくみんなで見つめていて同じように喉を鳴らす。


「ん、美味い。確かにほんのり甘くて火照った体にピッタリだな、これが飲めなくなるとは残念だ」


「そ、そんなに美味しいのですか?」


伯爵様の美味しそうに飲む姿に兵士達が思わず聞いてしまっていた。


「ああ、私はこれを飲む為にここまでしたからな」


ふっと笑っと私の方を見た。


ドキッとして私はグリフィスさんの後ろに少し隠れた。


「ありがとう、お邪魔したね」


伯爵様がお礼を言うと瓶を私の方へと差し出してきた。


「いえ、ご利用ありがとうございます」


瓶を受け取り態度の違いに呆気に取られた。


「ブルード様、こんな奴にお礼など必要ありませんよ」


失礼兵士の態度にはもう慣れてきた。


こっちこそさっさと帰って欲しいので口答えしないで無視する。


「コーヒー牛乳代を払ってくれ、ニール」


「はい、旦那様」


ニールさんがお金の入った袋をポンっと番台に置いた。


しかしそれはコーヒー牛乳代にしては重そうな音がする。


恐る恐る中を出して確認するとジャラジャラとお金がたくさん出てきた。


「「え?」」


私とムカつく兵士だけが驚いて伯爵様を二度見する。


「ちょっと多いみたいですね、あっここから取れって事ですか?」


「当たり前だろ!こんなに払うわけないだろ」


ムカつく兵士がお金を取り上げようとするのをグリフィスさんが止めた。


「いいえ、それは今日の迷惑料と諸々の費用です」


「いや、こんなに頂けませんよ!」


「そうです!こんなのにやるくらいなら私に…」


ムカつく兵士がグリフィスさんの手を払って伯爵様に詰め寄ろうとする。


「ロータス、君の態度は目に余る。今日でクビだ」


「へ?」


ムカつく兵士はロータスという名前らしく、いきなり伯爵様に笑顔で解雇されていた。





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