第31話

銭湯の方は毎日お客さんが来るようになってきた。

お客さんがお客さんを呼びチケット交換にしたのも入りやすい価格とあって頑張って毎日薪割りをして入りにくる常連さんもできた。


「おー、マキちゃん。薪をここに置いとくよ」


「はーい!ゲンさんいつもありがとうございます」


「俺ね、もうここのお湯無しじゃあ寝れない体になっちゃったよ」


「ふふ、それはよかった」


ゲンさんはその常連さんの一人、毎日早起きして薪を切ってくるのだ。


「ゲンさんはい、チケットです」


「ありがとう、じゃあ仕事終わったらまた来るな」


ゲンさんはチケットを受け取ると仕事に向かって行った。


「そういえばゲンさんのお仕事ってなんなんだろ?」


隣りで護衛兼お店の手伝いのライリーさんに聞いてみた。


「ゲンは狩人だ、これから森にいって獣を狩るんだよ」


「狩人!」


そんな職業がこの世界にはあるんだ…


「獣って…鹿とか熊とか?」


「しか?くま?」


ライリーさんが眉をしかめた。


「あっ、熊いないんだーよかったー」


じゃあどんな物を狩ってるんだろ?


私はうさぎとかなら可哀想だなーと思っていた。


その後もチケット交換の人が列を作る。

ライリーさんと協力しながら捌いているとようやく終わりが見えてきた。


チケット交換は仕事の合間にしているがかなり時間を取られる。


今はライリーさんの部下の人が掃除を手伝ってくれているが…これは本格的にバイトを雇った方がいいのかもしれない。


そんな事を考えているとチケット交換の人が来なくなってきた。


「朝の時間だけにみんな来るね」


「そりゃみんな仕事があるからな、来るならその前じゃないと」


なるほどならその時間だけ雇ってもいいかも!

後でお母さん達に相談してみようと決めた。


チケット交換の机を片付けて掃除の手伝いに向かう。


ライリーさんはそのまま護衛するらしい。


「ていうか護衛必要?誰から守ってるのかな」


「それは…まぁ色々と、なにか合ってからでは…目障りかも知れませんがよろしくお願いします」


「私達としたら申し訳ないと思ってて、こうして手伝って貰ってるし」


「それを言ったら俺達もご飯をご馳走になったり助かってますから」


「それならいいけど、お母さんはニコニコ笑いながらこき使うから気をつけてね」


「その程度でへばる体力ではありませんから大丈夫です」


ライリーさんは力こぶを見せて軽くウインクした。


「頼りにしてます。じゃあ私補充に行ってくるんで店番よろしくお願いしますね」


脱衣場に行くと兵士さん達がモップがけをしていた。


「皆さんお疲れ様です!麦茶で休憩してください」


私は麦茶を兵士さん達に渡した。


「マキさんありがとうございます。いただきます」


最初は怖がっていた麦茶だがライリーさんが美味しそうに飲む姿に兵士さん達も覚悟を決めて飲んでその味にハマったようだ。


「はぁー美味いです。ご馳走様です」


「この後お昼にしますからもう少し頑張って下さいね」


「「「はい!」」」


「なんかすみませんね」


私はコップを片付けながら皆にお礼を言うと、兵士さん達は笑顔で首をふった。


「いや、こんな仕事なら喜んでやりますよ。マキさんもいずみさんもユウジさん達も凄く優しくて親切ですし」


「本当に!わがままな貴族の護衛に比べたらここは天国ですよ」


「えーそんな大変な仕事もあるんですね」


「まぁここだけの話、貴族の方にはプライド高い方が多いので気をつけて下さいね」


「そうなんだ」


「護衛も賊からもありますが貴族からの護衛でもありますよね」


え!?


貴族から護衛してる?


私は笑いながら話す兵士さん達の話に驚きながら聞いていた。

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