第30話

「コーヒーですか?ありますよ。でも高級で王都にしか売ってませんね」


「へ?」


私は今ライリーさんも交えて居間で昼ご飯を食べていた。


そして先程の話をお母さんとライリーさんに話していたところ、話を聞いていたライリーさんの答えに口に入れたご飯がポロッと落ちた。


「こら、マキお行儀悪い」


お母さんにテッシュを貰って慌てて落ちたご飯と口を拭いた。


「待って!コーヒーがあるの?この世界に?」


ライリーさんに詰め寄ると冷静な顔で頷かれる。


「はい、高くて少量しか作れないらしく田舎の方には出回って来ませんね。だから牛乳と混ぜるなんて初めてみましたよ」


ライリーさんはコーヒー牛乳の味を思い出しているのかゴクッと唾を飲んだ。


「あるところにはあるんだ…ならコーヒー牛乳も何とかなるかな?」


「そうねー、でも無理しなくてもいいんじゃない?高級なら高くなっちゃうでしょ。なら麦茶出してあげる方がお母さんはいいな」


「うっ、確かに…」


いくら美味しくっても高いならみんな飲めないしな…


「値段の交渉などは領主様に相談されてはどうですか?」


「そうね、今度聞いてみるわ」


それまでしばらくは家の在庫でどうにかしよう。


「でも異世界っていってもそんなに変わんないのね」


お母さんは貰ったおかずを食べながらしみじみと言う。

頂いたおかずはどれも美味しかった。


少し濃いめの味付けでどちらかと言うと外国の料理のように感じる。


「これだとご飯とか恋しくなるわね」


「そうだ!お米はあるの!」


私はライリーさんを睨みつける。

これはかなり重要な案件だ!


「米…もありますよ、それも王都ですが…」


「なんでもかんでも王都なのね」


なかなか手に入らなそうなのでガックリと肩を落とした。

近所で手に入るなら楽なのに…


「んー、じゃあマキ落ち着いたら王都ってところに行ってみてよ」


「行ってみてよ…って私だけ!?」


「だっておじいちゃんとお父さんは離れられないでしょ、お母さんは二人のご飯とかお世話しないといけないし」


「そうだけど…私だって掃除とか…」


「それは他の人でもどうにかなるでしょ」


「はい、なんなら部下を貸しましょうか?」


ライリーさんの言葉にお母さんが目を細めた。


「そんなー悪いわ兵士さんを掃除に借りるなんて」


「いえ、皆掃除洗濯は自分でやっているので得意ですよ。それに領主様からも手を貸すように言われてます」


「そう?ならお願いしちゃおうか、ライリーさんおかわりいる?」


お母さんはニコニコと笑うとライリーさんにご飯をよそってあげた。


「いただきます」


「どうせ私の意見は通らないのよね…まぁでも王都か、ちょっと興味あるな」


「いつでもいってください。案内しますよ」


「そこってどのくらい遠いのかな?」


「馬で一日程の距離ですから近いですよ」


うーん、馬で言われても距離がわからない。

でも移動に一日って言うのは結構大変な気がする。


「馬って…また馬車に乗る感じ?」


「いえ、馬に乗ります。馬車だともう少しかかりますよ」


「それって、乗馬って事?」


「はい」


ライリーさんは当たり前のように頷いた。


「無理無理!私馬に乗ったことないもん」


「そうですか…なら歩くとなると三日程かかりますね」


「三日…お母さん王都は諦めよう。さぁ仕事しよー」


私は食べ終わったお皿を持って立ち上がった。


「シンクに置いといて。まぁお母さんは歩きでも馬でも馬車でもマキの好きでいいと思うよ」


「えっ?」


「頑張ってね」


お母さんにニコッと笑われる…私に拒否権は無いらしい。


ガクッと肩を落としているとお皿を片付けたライリーさんがポンっと肩を叩いた。


「私で良ければ馬を教えますから」


「よろしく…」


ライリーさんに深々頭を下げた。

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