第15話
すっかり湯の支度が整うとライリーさんが急いでリザ様と領主様を呼びに向かった。
「あら、今日もお風呂に入れるの?」
煙突からの煙に近所の人達がホクホク顔で様子を見に来た。
「なんかジムさんとこのリザちゃんって子がうちの銭湯に入りたいらしくてこれから来るそうなのよ」
「リザ様が!」
そう聞いてみんなが渋い顔で様子をうかがっている。
「それは大変な事になったわね、私達に出来ることがあったらいいんだけど」
助けてあげたいが領主様の娘のわがままでは口出しできないのだろう。
「じゃあ話だけでも教えて貰えるかしら、リザちゃんってどんな子なの?」
「あー、そうね。とっても可愛らしいのよ、綺麗なお母様に似て…ただ領主様もやっと出来たお子様で大切に育てたからわがままなところもあるけど貴族だから仕方ないところはあるわね」
「まぁ自治会長さんのわがまま娘ってところかしら」
「じち?何かしらそれ」
「なんでもないわ、まぁそのくらいなら問題無さそう。ありがとうね」
お母さんはその後も少し近所の人と井戸端会議をしていた。
しばらく待っていると昨日と同じように馬車が到着する。
そしてそこからはすまなそうな顔のジムさんが降りてきて女性をエスコートしていた。
すごく綺麗な女性と可愛らしい女の子が揃って降りてきた。
「この度はよろしくお願いします」
ジムさんが頭を下げると女性が隣に並んで軽く会釈する。
「主人から話はうかがっております。私エミリア・クラークと申します。この度は妖精のイタズラで大変でしたね、私でお力になれることがあればおっしゃってくださいませ」
ゆっくりと微笑みながら声をかけてくれた。
「そしてこちらが娘のリザです。仲良くしてください」
「まぁまぁご丁寧に、私は福田 泉です。主人の勇治と娘のマキです」
おじいちゃんは薪を見ているのでボイラー室からは離れられない。
私達はエミリアさんとリザちゃんにペコッと頭を下げた。
「今日は楽しみに来ましたの。主人の髪や体がスベスベのサラサラになってましたでしょ?一体何をしたのかと問い詰めてしまいました」
エミリアさんがそういうとジムさんがビクッと肩を揺らした。
あんな綺麗な人なら問い詰められても良さそうだがジムさんと目が合うと苦笑いをしていた。
「マキさん妻と娘をお願い出来るかな?」
ジムさんに言われて私は快く頷いた。
どんな子が来るのかと警戒していたが思ったより可愛い子で嬉しくなる。
「リザちゃんよろしくね、じゃあ行こっか?」
少し屈んで声をかけるとリザちゃんはムスッとして腕を組んだ。
「ふん!お母様が言うから仕方なく入ってあげる!案内しなさい」
そういうとスタスタと歩き出した。
私はリザちゃんの態度に唖然と立ち尽くした。
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