第16話
「マキ?リザちゃん行っちゃったわよ」
「へ?」
私が唖然としてる間にリザちゃんは銭湯の入り口の前でまだかとこちらを睨んでいた。
「な、なにあれ!?」
あまりに可愛くない態度に驚いてお母さんを見た後にジムさん達に目を向ける。
「す、すみません…リザ、こちらの方達は保護対象の方達なんだよ。態度を改めなさい」
ジムさんが注意するとリザちゃんは面白くなさそうに眉をひそめた。
「はぁ…困ったなぁ。マキさん本当にすみません」
ジムさんが謝るとエミリアさんも一緒に頭を下げた。
「すみません、私たちがあまりそばにいてあげれないのでなかなか言うことを聞いてくれなくて…」
エミリアさんも困ったように同じ顔で眉をひそめていた。
「あらー反抗期かしら?」
お母さんがそんな事を言うとジムさん達は不思議そうに顔を見つめる。
「「反抗期?」」
「なんですかそれは」
「子供から少し大人に変わる時に誰しもが通る道よ、何にでも反抗したくなったり口答えしたくなるの」
ジムさん達はまさにそれだと頷いた。
「少し前まで素直な優しい子だったんです。ですからなぜあんな態度を取るのか不安で…」
「子供なんだからたくさん反抗させてあげなきゃ、じゃないと大人になって反抗期むかえちゃうわよ」
反抗期か…まぁそう思えば少し可愛いもんかな
私は原因がわかって少しスッキリするとリザちゃんの元に向かった。
お母さん達は少し話してから向かうようで先に行っててくれと頼まれる。
「じゃあリザちゃん行こうか、ここで靴を脱いで閉まってくれる。それとも私がしまおうか?」
「自分でできます」
下駄箱に自分の靴を閉まって見本を見せるとリザちゃんは少し興味深げに見ていた顔を引き締めて同じように閉まった。
中へと入ると見た事が無いものに顔を輝かせる。
その顔をみてクスッと笑うとハッとしていた。
「な、なに!」
「ううん、何か気になるものがあったら聞いてね」
「そうやって私まで気に入られようとしても無駄よ」
「気に入られる?」
私はなんの事だと首を傾げた。
「お父様もお母様もあなた達が来てからずっとあなた達に夢中なんだもの!絶対何か変な事してるに決まってる!」
「あー…」
これはお母さん達を取られたような気がしてるのかな?
私は違うと言おうと思ったが今の状態では何を言っても無駄かもしれないと言わせておくことにした。
「まーそれはリザちゃんがちゃんと見て体験して決めてね、じゃあまずはこれね」
私はジムさんが興味を示していた鍵付きロッカーを案内した。
リザちゃんはしまう物がなかったので髪飾りを入れて鍵を自分で回してしまっていた。
「これって本当にまた出せるの?」
「なら一回出してごらん」
私が鍵を開けてみろと促すと嬉しそうに鍵を回していた。
「あ、あいた!」
そして髪飾りを取り出してまた閉まっては鍵をかける。
「他にも大事なものがあれば入れておけば?鍵をかけるから大切に守ってくれるよ」
そういうとリザちゃんは持っていたハンカチの様な布を大事そうに閉まった。
「それはなぁに?」
「お母様がくれたハンカチ、大切というか無くしたら怒られるから…」
何か言い訳をする様にサッと閉まっていた。
「そっか、綺麗で素敵なものもらったね。じゃあ無くさないように鍵はしっかりと腕に付けててね」
リザちゃんは頷くと小さな腕に鍵を通した。
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