第13話

近所?の皆さんに銭湯の良さを堪能してもらい、私達親子も害が無さそうだとわかると町の人達の接し方も変わってきた。


「本当にありがとうね!また入りに来ていいかしら?その時は何か持ってくるわ」


「私も、今度は近くの人達にも声かけてみんなで来るわね!」


まるで前の世界の時と変わらない近所付き合いのような雰囲気にお母さんは慣れた様子で話に加わっている。


「あらー、ありがとう。でもねーまだ領主様だっけ?ジムさんから連絡無いとダメみたいだから返事が来たらお願いね。でもお茶しに来るのなら大丈夫だと思うわ」


「ならうちにも来てー」


「いい店紹介するわ!」


「ありがとう」


もう友達を作ったようで楽しそうに約束を交わしていた。

お母さんのコミニュケーション能力の高さに脱帽する。




「じゃ、ユージ夜にでも酒でも飲もうや!」


「ありがとうございます。掃除が終わったらお邪魔しますね」


お母さんに驚いていると男湯の方からお父さんとお客さんが笑いながら出てきた。


こっちはこっちで酒友達が出来たようだ。


うちの両親は物腰の柔らかさから話しやすいのかよく声をかけられる。


それはここでも同じようだ。


でも知らない人だらけの世界でなんともなく楽しそうにする両親に少しほっとする。


お客さんをみんな見送るった後に2人に声をかけた。


「なーに、もう知り合いが出来たんだ。お母さん達はいきなりこんな世界に来ても驚かないんだね」


私の言葉に2人は顔を合わせると以外そうな顔をする。


「えー、だって引っ越したようなもんでしょ?しかもお店もあるし、お客さんも喜んでくれてるしいい事ずくめね」


「電気も通ってるし、水も出るし本当に助かるな。あとは薪もさっきのリックスさんが今度持ってきてくれるって言ってたよ」


「えー!もう薪を確保したの?」


「そりゃそれが一番大事だからな、まぁ使えるものか一度じいさんと確認してからになるけどな」


「そ、そう…」


なんか本当にお父さんもお母さんも問題無さそうだ。

それよりも私がここでやっていけるか不安になる…友達出来なかったらどうしよう。


「大丈夫よ、マキは私達の子だもの」


そんな私の不安をお見通しのようにお母さんが笑っている。


「そ、そうかな…」


「ええ、今日は私ぐらいの年の人しか来なかったからしょうがないけどみんなマキぐらいの年の娘や息子がいるって言ってわよ」


「そ、そうなんだ」


でも話が合うのか心配だな、こっちにはスマホもテレビもないし、何を話題にすればいいんだろ?


「何とかなるわよ、少し田舎に越してきたと思いましょ」


「そうだな、家族も一緒で店もある。ふくにまるもいるしこれ以上望んじゃバチが当たる」


「バチは当たらないんじゃ…だって勝手に連れてこられたんだよ」


「そのお詫びに電気とガスに水が使えるのかもな」


うーんそうだとしてもいい迷惑だ。


私が渋い顔をしているとお母さんが笑って頭に手を置いた。


「他のものがなくてもここにはお風呂を楽しんでくださる人がいるわ」


私達が何よりも望んだものだった。


「そうだね、後ろ向きな考えばっかりじゃダメだよね!よし、私も楽しもう!ここなら素敵な彼氏も出来るかも」


「カレシ?それは何か美味しいものですか?」


私達の話を聞いていたのか後ろにライリーさんがニコニコと笑って立っていた。


「いいえ、ライリーさんには関係ないものですよ」


私の答えにシュンとしながらライリーさんは持ち場に戻った。

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