第10話
私達はあの後ジムさん達を見送ってお母さん達に報告に向かった。
私はお母さんにお父さんはおじいちゃんに報告に向かう。
「お母さん!ジムさん達が私達の安全を確認してくれてここでの滞在を歓迎してくれるって!」
「あらそーよかったわね。じゃあ今日はご馳走にしましょうか」
お母さんはのほほんと笑うとお茶を飲んで立ち上がり冷蔵庫の中身を確認する。
「そういえばさ、冷蔵庫とか扇風機とか使えたけど…どっから電気が来てるのかな?」
「え?そりゃ電力会社からでしょ。毎月お金払ってるんだから」
「いやいや!それは現実の世界のことでしょ、こっちの訳わかんない世界に来てるのに家電が使えるのおかしくない?」
私はパチパチと電球をつけたり消したりして見せた。
「電線とかどうなってるんだろ?」
ちょっと気になって外を見に行くと空中で電線が切れていた。
なにあれ…
まるで家の空間だけ切り取られてここに来ているようだ。
しかし考えたところで原因もわからなそうだった。
そっと境目を触ってみようと手を伸ばすと…
「マキどうした?」
お父さんが外にいた私に声をかけてきた。
「あっお父さん」
私はお母さんにした疑問をお父さんにも投げかけてみる。
「それは俺も感じていた。でも電気がなきゃお湯も湧かせないからな助かるよ」
確かに…やはりあまり深く考えない方が良さそうだ。
タダでさえなぜこんなところに飛ばされたのかも分からないし…
「それでお父さんのようは?」
「ああ、じいさんがお湯をせっかく沸かしたからもったいないとお前達も入れって言ってるぞ」
「あー入りたい!もうなんか疲れたしジムさん達が気持ちよさそうな顔で出てきたの見てから入りたくて!」
「ですよね!俺ももう一度入りたいくらいです」
「「え?」」
いきなり会話にライリーさんが入り込んできた。
「ライリーさん、どうしたんですか?」
「領主様にしばらく皆さんの護衛をしろと言われましたので、俺の事は気にせずにお過ごし下さい」
ライリーさんはそういうと銭湯の出入口の前に門番のようにたっている。
するとライリーさんをみて町の人達が集まり声をかけてきた。
「兵士様、ここの屋敷はどうなるのですか?」
「町の皆さんご安心下さい。こちらの方々は妖精のいたずらにてここにこられたのです。私と領主様で危害を加えるような人達でないと確認致しました」
ライリーさんが笑顔でそう説明すると町の人達はほっと胸を撫で下ろす。
そして今度は興味深そうに建物の周りに集まってきた。
「これが妖精のいたずらか、初めてみた」
「それではこの方々はここに住まわれる事になるのですか?」
「そうなると思います。近く領主様より報告があると思いますので皆さんもそのつもりでいて下さい」
ライリーさんにジロッと睨まれて建物を触ろうとしていた町の人が慌てて手を引っ込めた。
「まぁまぁライリーさんそんな怖い顔をしないで下さい。皆さんどのくらいお世話になるかわかりませんがよろしくお願いします」
お父さんが町の人達に頭を下げると私も慌ててそれに続いて頭を下げた。
「まぁまぁどうしたの?そんな怖い顔して」
するとそこに空気を読まないお母さんがのんびりと現れた。
お母さんにお父さんが軽く説明をすると…
「あら!ならちょうどいいから皆さんもお風呂に入りませんか?」
「え?私達が?」
町の人達は不安げに顔を見合わせている。
「もったいないですから是非どうぞ、ねぇお父さんもその方がいいと思いますよね?」
「そうだな、せっかく沸かした湯をお客様2人なんて寂しいな…」
近頃はそんな日も無くは無かっただけにお父さんの顔が曇る。
「じゃあ俺ももう1回入ってもいいですか!?」
ライリーさんが嬉しそうに顔を輝かせた。
「是非どうぞ、皆さんに入り方を教えてあげてください」
「任せて下さい!おい、みんな行こう」
ライリーさんがさんが町の人に声をかけると恐る恐る男の人が前に出た。
「兵士さんがそんなに言うなら…」
「そうだな、どんなところか興味あるし」
「私達もいいのかしら」
女性の人も声をかけてくれるが女風呂の用意はできてなかった。
「すみません、女性の方はまた今度…」
お父さんが申し訳なさそうに断ろうとする。
「あれ?でも女風呂の方からも湯気が出てますよ」
お母さんが屋根を見上げた。
銭湯の屋根には男風呂と女風呂の真ん中から大きな煙突が立っている。
その横に空気を逃がす窓がありお湯がはると湯気がそこから逃げるのだ。
それが女風呂の方からも出ていると言うことは女風呂もお湯が張っていると言うことだった。
私が慌てて確認に向かうとやはり女風呂にもお湯がなみなみとはっていた。
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