第7話 まるみちゃんが怒ったら…②

まるみは、畑中の手首をつかむと、そのまま引きずるように教室から連れ出してしまった。まるみは普段は穏やかで、口数も少ない。春香が困った時には、そっとフォローしてくれて、いつも味方でいてくれる。

でも、今回のように激しい面を見せたのは初めてで、春香は圧倒されてしまった。

春香はしばらくぼーっとしていたが、急に心配になり、まるみ達を探すべく教室を飛び出した。


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まるみは、がっちりと畑中の腕をつかんだまま、ずんずんと校内の廊下を歩いていた。


「鳥越!ごめん!悪かったよ。でも、怒るなら、山村本人だと思うんだけど…」


まるみは、黙ったままなお歩き続けている。

畑中も一応性別は男で、文科系女子にひきずられる程小柄こがらでもないのだが、どうやっても、まるみの手を振りほどく事が出来ない。

そこで、吉田とすれ違った。


「お!今度は鳥越と仲良くしてんの?心変わりがはえぇよ!」


「誰のせいで、こうなってると思ってんだよ!!」


まるみは、吉田の事も目に入らないのか、畑中を連れて行く力がゆるむ気配はない。

そうこうする内に、きた棟の裏にある小さな教会に着いていた。


この清音学園は、昔、大きなお屋敷があった跡地に建てられている。

屋敷があった頃の名残なごりで、学園の敷地内には立派な木や丁寧に作られた花壇や、ものものしい井戸があったりと、不思議なものが点在している。

その中でも、この教会は生徒の中でも有名だ。


とにかく古い。美しかったであろうステンドグラスは曇り、雨風に汚された壁は薄汚い。そして、生徒がいたずらに入ったりしないように、鍵ががっちりとかけられている。学園を建てる事が決まった時に取り壊そうとしたが、”たたりがあった”とか、”どうしても壁が壊れなかった”とか噂されているが、真相はわからない…。

というわけで、一種の心霊スポットのような扱いをされているのだ。

教会の前に着くと、まるみはやっと畑中から手を離した。


「鳥越!やりすぎだろ。手首が赤くなって…」


やっと解放された畑中は文句を言おうとしたが、まるみが、無表情のまま畑中の顔をひたっと見ているのに気づき、口を閉じた。


「畑中豊さん。」


「はい…。」


「私の大切な人を傷つけたらどうなるか、思い知ってもらった方がいいようですね。」


「ちょっ、何言ってんだよ。…おまえ、なんか変だぞ。」


よく見ると、まるみの体の周りに、うっすらと赤いオーラのような物がまとわりついてきている。畑中は、地面が気のせいか少し揺れているような気がした。

まるみは、左手を眼鏡にそえると、一つ深呼吸してゆっくりとそれをはずそうとした。その時、畑中の背後から声がした。


「やめておけ。」


畑中が振り向くと、そこには、教会を背に、見慣れないジャージを着た男が立っていた。




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