第6話 まるみちゃんが怒ったら…
給食も終わり、生徒達は思い思いに昼休みを過ごしている。
春香の席は窓際で、あたたかな日射しと心地よい風が入って気持ちいい。
春香は、窓の外をぼーっと眺めながら王子の事を考えていた。
(王子様、お昼ご飯、ちゃんと食べたかな?まだ、家にいるのかな…。)
すると、まるみがすごい勢いで春香の方に向かって来ると、ばんっと机に
両手をついた。
「どうしたの?まるみちゃん。」
あまりの迫力に、春香は少し椅子を後ろにひいた。
「どうしたの?じゃないですよ!さっき、後藤さんに聞きました。昨日、図書館に閉じ込められたって本当ですか?」
まるみは、後藤と同じ生徒会のメンバーなのだ。
「あー、そうだった。そう!大変だったの。でも無事脱出できたから。まるみちゃん、落ち着いて!!」
(その後の出来事が衝撃的すぎて、すっかり忘れてた…)
まるみは、続けて言った。
「幼馴染さんが駆けつけて、解決したそうですね…。」
「そう、あっちゃんが助けてくれたの。だから、大丈夫だったんだよ。」
まるみは眼鏡をおさえて、寂しそうに目を伏せて言った。
「…私、春香さんの力になれませんでした。」
「まるみちゃんってば、大げさ!」
明るく笑う春香を見て、まるみは軽いため息をつくと、今度は自分の両手を組み合わせ、ごりごりと2回まわした。
「では、後の事は私に任せて下さい。今回の件、一体誰のしわざですか?」
「あー、たぶんなんだけど。吉田と田中がやったんだと思う。声が聞こえたんだ…。私と話しがしたい人がいるから待てって言って、そのまま図書室に閉じ込められちゃったの。」
「という事は、黒幕は…」
そこで、春香の席にもう一人、勢いよくかけ込んできた人物がいた。
「ごめん!!!」
両方の手の平をあわせて、春香に向かっておがんでいるのは、畑中だった。
「…やっぱり、あなたでしたか。」
まるみの声は、いつにもまして穏やかで、それが妙に怖い。
「いや、俺が頼んだわけじゃないんだけど、吉田達が勝手にっていうか、気を利かせてっていうか…。ともかく悪気があったわけじゃないんだ。
すぐに図書室に行こうとしたんだけど、誰もいないって八木セン(先生)がいうから…。でも、やっぱり図書室にいたんだな?どうやって外に出たんだ?」
「言い訳はそれで終わりですか?女子生徒を閉じ込めるって、これ、立派な犯罪ですよ?」
まるみは、口元に薄ら笑いまで浮かべて、畑中にじりじりと近づいていく。
眼鏡の奥の目が笑っていないのは、見なくてもわかる。
「いや、ホントに悪かった。山村、無事に帰れたのか?」
畑中は、春香に近づこうとした。
「春香さんに近寄らないでもらえますか?」
まるみは、畑中の手首をむんずとつかんで冷たく言った。
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