第22話

校長先生による開幕宣言と共に一年生の合唱コンクールが始まった


これだけ長い時間待たされたからか

どのクラスも特に緊張することなく課題曲、自由曲共に素晴らしいパフォーマンスを披露している



このクラスが終わればとうとう俺たちの番だ!

練習の集大成をぶつけるんだ!


と、みんなすごく熱くなっている

みんな目がすっごくメラメラしてる



みんなアッチーな!

熱すぎでアイスみたいに溶けそうだぜ!

ほ、ほぉ、ほら!見てみ!

ちょっと溶け出してる!


て、おまえこれただの冷や汗やないかい!



そうだよ!

止まんねーんだよ!

おもんないの自覚した瞬間止まんねーんだよ!



うわー、寒くなってきたー

逆に、寒くなってきたー

凍えて死にそー


ほ、ほぉ、ほら!見てみ!

めっちゃ手先がブルブル震えてる

て、おまえこれただの末端冷え性やないかい!





「その震えじゃねーよ」ってツッコまんかい!



ただただ読み進めやがって!

こっちはいっぱいボケてんねん!


フッて、鼻でいいからフッて笑えよ!

もっとツッコめよ!


こっちはメンタル死にそうやねん!

もっと笑ってくれよー!




「続きまして1年4組の発表です」


「起立」



ほーら、始まっちまったじゃねーか!








定位置に着くと指揮者が観客に向け礼をする


俺は静かに椅子に腰を下ろす


まっすぐに指揮者を見る

ただ一点、指揮者の手が動くのを待つ


バッ


指揮者が腕を上げる

俺はその合図に合わせ鍵盤に指を揃える


深く深呼吸をし肩の力を抜く



いち、に、さん、しっ

俺は指揮者の四拍子に合わせゆっくりとピアノを弾き始める


優雅に繊細に大胆に俺はゆっくりと音を奏でる



みんなの歌声が聞こえてくる


始めは小さくサビは大きく


強弱をつけ優しく、一言一言を丁寧に



届けたいという一心で、伝えたいという一心で


言葉を音楽という形で




優しい優しい音色にのせて

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