第20話

やってきた!文化祭本番!


みんなが優勝に向かって放課後や昼休みと時間を作っては練習をしてきた。


みんなのまとめ役、学級委員長の林田君が最後にクラスを鼓舞している



「今日が文化祭本番だ。合唱の練習の成果を見せつける日だ。僕たちはたくさん喧嘩もした」


周りを見渡すとみんな真剣な顔をして林田君の言葉を聞いている。中には頷いて話を聞いている人もいる


(そうだよな、たくさん喧嘩したもんなー。ん?喧嘩?俺がいじめられてただけじゃね?)


よくよく考えると、みんなパート練や合同練習など言い合っていた記憶がない

あれ?俺だけじゃない?




「先生ともぶつかった」

(先生とぶつかることなんてあったか?)


いや、それも…


俺の所為じゃね?

俺がピアノの練習で先に帰ろうとしたから…


いや!考えたらダメだ




「それぞれに温度差もあったと思う!」


俺もこのセリフには首を振る

温度差はしょうがないよな

これはみんなのことだもんな


ん?


なんか最後の朝練に遅刻して来たやつおったくない?


いや、いやいや

いなかったな!そんな人はいなかった!




「時間を見つけてはたくさん練習してきた!」


そうね!これは良いことよね?

俺だって学校が休みの日も練習してたからね!




「日曜日もみんなで集合して練習した」


「えっ?」

俺は思わず声が出てしまった


みんなの視線が俺に集まる。


日曜日に練習?

行ってない、行ってない


「あー、古町君の連絡先を知ってる人いなくて誘えなかったんだよ。ごめんね」


「あっ、そうなんだ。こちらこそすみません」


みんなからの視線は、かわいそうなものを見るような視線だった

来なかったことを怒られるより辛いよこの視線




「だが、そのたびに乗り越えてきた!!」


みんな、「うんうん」と勢いよく首を縦に振る

なんか…、俺だけ場違いやん


「今日はこれまで頑張ってきた成果を発表する日だ!取るぞー優勝!」


「「「「「「「おう!」」」」」」」


居た堪れない空気のなか

みんなで体育館に移動した



保護者席にはすごい数の人が座っているのが見える。だか、うちの親はやはり見つからない


まじで、どこに行ったんだ?

先に体育館でとんでもないこと起こしてるのかと思ったのに


えっ?

期待してんのかって?

バカ!そんなんじゃないんだからね!




「わざわざ、すみません」


「本当にありがとうございます。校長先生」


「いえいえ、お安い御用です。これほどの楽器を貸して頂けるので有ればこちらとしても大助かりです」


「いえ、校長先生。私たちも怜ちゃんにはいつものピアノで弾いてほしいと思っていたのでありがとうございます」


「はっはっはっ!よかったらいくつかお譲りしますよ」


「本当ですか?」


「いいわね。私がもう使っていないものでよければお譲りしますよ」


「ありがとうございます」



そこにあったのは、古町家からピアノをはじめヴァイオリンやフルートなど有名な楽器がいくつもトラックの荷台に積まれいく姿であった

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