第19話

ハァハァ

俺は死ぬ気で家に逃げ帰った


家の近くにあんな怖い人がいたなんて引っ越した方がいいぞ!

でも、カツラや眼鏡してたから顔はバレてないはず…


いや、考えるな!

もう、忘れろ!



「おかあーさーん、顕微鏡返してきたよー」


「…」


あれ?返事がない?


「お母さん?」


家中を探したがどこにも姿が見当たらない

まさか、先に学校行ったのか?


あいつら息子にあんな怖い人の相手をさせて、自分達は颯爽と避難しやがった!

なんて両親だよ!



「はあー、俺も学校行くか…」

文化祭は特に持って行く物もないので、携帯と家の鍵と筆記用具を鞄に入れて学校に向かった






学校に着き、1年生の校舎に向かっているとどこのクラスからも歌の練習をしているのが聞こえてきた


「え?合唱の練習してない?」


まさか、うちのクラスも?

血の気が引いていくのがよく分かる

今の俺は真っ青な顔をしていることだろう


やっちまったー!

朝練なんて話あったか?

どうする?帰るか?体調悪いって連絡するか?

でも、あの二人が学校いんじゃん


終わったー

誤ったら許してもらえるかなあ?

「でも、謝るしかないか」




自分のクラスの近くに行くと、みんなが優勝に向けて朝から真剣に声を出して練習していることが伝わってくる

「怒鳴られるだろうなあ」


俺は意を決して教室に入った


「「「「「「「…」」」」」」」


俺を見た途端にみんなの合掌が止まった

「練習の邪魔してすみません。遅れて来てほんとに申し訳ございませんでした」


俺は姿勢を正してスッと頭を下げた

何言われるんだろうなあ



「「「「「「「大丈夫だった?」」」」」」」




「え?」

俺は頭が真っ白になった

何って言われた?



思わず頭を上げると勇輝や遥を含めクラスの全員が心配そうな顔で俺のことを見ていた


「怜君のお母さんから聞きました。『危険な隣人から両親を守るために盾になっている』ということを」


「え?」


「すげーな怜!家族のために戦うなんてかっこいいぜ!」


「あ?う、うん」



チョロ軍団に至っては顔を真っ赤にして目を逸らしている



どういうことだ?

お母さんが嘘でもついたのか?

でも、二人の姿が見当たらないんだよなあ



俺はいろいろ考え黙り込んでしまった



すると、佐藤先生が俺の元へ近寄って来た

「怜様…」


「おい、コラ」

俺はすかさず小声で突っ込む


「う、うん。怜君のお義母様に電話で連絡を頂いていましたので安心してください」


「そうですか」

(電話?)



そして、佐藤先生は声を張り上げてみんなに聞こえるように言い放つ


「これで伴奏者も揃ったので優勝に向けて最後の練習をしましょう」


「「「「「「「はい!」」」」」」」



いい返事をしたみんなは改善点やもっと出来ることを学級委員長がリーダーとなり話し始める




そこで、俺は気になっていた事を小声で先生に聞いてみた


「先生、うちの両親が見当たらないんですけどどこにいるか知りません?」


「すみません、怜様。私にはお二方がどこにいらっしゃるのか分かりません」


「そうですか…、ありがとうございます」



俺はなんとなく不安を抱えながら最後の練習の伴奏を弾くのであった








ーーーーーーーーー

作者です。

お話を読んで下さっている方へ。

なかなか話が進まず間が空いてしまい申し訳ございません。

これからも日が空きながらの更新になるかと思いますが、どうかよろしくお願いします。

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