第9話
「頼むから、本当に騒ぐのだけはやめてくれ」
「もう、わかってるわよ」
「おまえに恥かかせるわけねーだろ」
「…頼むからね」
こうして俺は心配な二人を連れ教室の前まできてしまった。ほんっとにこわい。
まじで頼むぞ、お父さん!お母さん!
俺はいつも通り黙って教室の後ろから入っていこうとしたときだった。
「みなさん、おはようございます。私は古町 怜の母の古町 真子(ふるまち まさこ)です。うちの怜ちゃんがいつもお世話になっております。親贔屓抜きにしても、とてもいい子なのでどうかみなさんうちの怜ちゃんと仲良くしてあげてください。」
「みんな、おはよう!私は古町 怜の父の古町 一(ふるまち はじめ)だ。うちの息子は諸事情があって学校を休むことも多々あるが優しい子なんだ。うちの息子とできるだけ遊んでくれ!よろしく頼む」
ハハハッ、思わず二度見しちゃったよー!
何言ってんだ!?この二人
教室も静まり返っているじゃないか!
終わった、ほんとに終わった。
さらば俺の平穏な学校生活
「えー?古町くんのご両親ですかー?」
「合唱の発表は明日なのになんで今日来てるんですか?」
「まさか、息子さんに『応援しに来てー』とか言われたんですか?」
「えっ、まさかマザコン?」
「「「「アハハハ」」」」
くそ!久しぶりの陽キャ女子軍団だ、最近なりを潜めていたくせに!
ここぞとばかりに攻めてきやがって!
「えーと、あなた達は何?怜ちゃんの友達?それともガールフレンド?」
「えー、怜!おまえこんなにかわいい子を四人も彼女に?なんて羨ましいんだ!」
誰かあいつら叩き出せって!
「か、彼女じゃねーし」
「だ、誰があんな陰キャと好んで付き合うのよ?」
「私もっとイケメンがタイプだし」
「私達も男を見る目はありますから!ないですよ、あなたの息子さんは!」
やめとけって、あの二人には勝てねーから
「お母さん、怜はこの子達から『陰キャ』って呼ばれているようだね……、お父さん今日ここに来れてほんとによかった。あだ名で呼んでくれる様な友達がいるなんて!」
「お父さん私ね、本当はすごく心配だったの!
怜ちゃんがいつもクラスの子達に酷い言葉や暴力を受けていないかとか考えてしまっていたの!だけどそれも杞憂だったわ!こんなにこの子のことを大好きな人達に囲まれているんですもの!」
いやー、世界でたぶん初めてだせ。
自分の息子が陰キャって呼ばれて喜んでる親は。
「だ、だから好きなんかじゃないって!」
「あなたの息子さん全然かっこよくないですし」
「陰キャ以上にかっこいい男なんて、この学校たくさんいるし!」
「勘違いしないでください」
うおー、結構食らいついてるねー!
「それにしても、懐かしいわね。こんな教室を見ると昔を思い出すわ。私も昔はお父さんによくこんな態度をとってしまっていたっけ?最近はね、こういう子達のことをツンデレって言うらしいわよ。」
「そうだね、懐かしな!でもね、お母さん。たしかに昔のお母さんはこの子達のような態度をよくとっていたけど俺はずっとお母さんのLOVEな気持ちは感じていたよ」
「まあ、こんなところで恥ずかしい。でも、そっか。私の気持ちはちゃんとお父さんに届いていたのね」
「ああ、だってお父さんもあの時からお母さんのことが大好きだったからね。大丈夫、君達の気持ちもしっかり届いてるよ」
「お父さん」
「お母さん」
「ふふふ」
「ははは」
死にてえー、まじ死にてえ〜
だ〜れか俺を殺してくれ〜
どうやったら学校で親の惚気話聞くことになるん?
終わったって、ほんまに俺の学校生活
「…ズズッ、す、すごく良い話でした」
「…ッう、めちゃくちゃ感動しました」
「うわわーん」
「私達の思いもちゃんと伝わりますかね?」
えー、何!?どうしたの?
めっちゃ刺さってない!?
いや、めっちゃ刺さってない?
怖いってあの二人、世界変えれるじゃん。
「大丈夫よ!安心して!私達も数々の困難や、すれ違いを乗り越えてきたの!」
「何かあったら相談に来なさい!俺達が話は聞いてあげるから!絶対に君達のLOVEな気持ちは届くから!」
「「「「ありがとうございます」」」」
「おう、どうした?どうした?席につけー、
朝のホームルームはじめるぞー」
ナイスタイミング!
いいところで担任の佐藤先生が来た!
「「おはようございます」」
「あ、おはようございます?すみません、どなですかね?」
「「私たち古町 怜の母(父)です。いつも先生には息子がお世話になっております」」
「あー、怜様のお父様にお母様でしたか。いつも私の夜のおかずに息子さんを使わせて頂いてもらっています。」
ん?
おい!ド下ネタじゃねーか!
初手の挨拶じゃねーだろ!
教師失格だろ、あんた!
「「いやいや、分かりますその気持ち」」
お父さん!?お母さん!?
「ついでのようになってしまい申し訳ないのですが、お義父様、お義母様、息子さんを私にください。」
あんたまで暴走してどうするんだー!
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