第2話 選抜戦に向けて
「まずは、今度の日曜の校内選抜戦を勝ち抜かないと!」
「はい、校内での代表決定戦で三位までに食い込めば行けますね♪」
寮の自室でちゃんこ鍋を食べながら語る金太とポーラ。
何故学校の寮が男女別ではないのか? それは、クマ娘がパートナーと認識した男性を離そうとしない性質による。
クマ娘を軍事利用した古代ギリシャやローマ帝国でも、クマ娘とパートナーの男性はセットで運用すべしとされていた。
ローマの道はクマ娘が作るという諺は、古来より人類の文明はクマ娘が担ってきた証明であった。
日本でも、熊女房は金の草鞋を履いてでも探せという諺やクマ娘と男児は机を離さずという風潮が明治時代に学制制度と同時に生まれた。
第二次世界大戦時代を舞台にした映画『戦火のクマ娘』は令和の時代でも語り継がれる名作となっている。
司法でも男子がクマ娘に見初められた時点で婚約が成立と見なされ、地球はクマ娘ファーストで動いていた。
「ポーラ、選抜戦に疲労を持ちこさないようにトレーニングして行こう?」
「はい、ここで怪我したりしたらつまらないですから♪」
「甘い物の間食は控えようね?」
「……ううっ、アイス好きにはハードトレーニングよりも辛いです!」
「計量も、選手が乗り越えないといけない課題だから♪」
金太は心を鬼にした、アイスを食べている時のポーラの笑顔は可愛いが競技者たる試合の場に立てぬと言うのは駄目であろう。
校内代表選抜戦へ向けての調整が始まった。
「ポーラ、後十往復やったら上がろう!」
「はい、泳ぎは得意なのでがんばります!」
「ランニングも頑張ろうね?」
「……そっちは、苦手です日本は暑いですから」
「ランニングも頑張るなら、カップでアイス食べても良し♪」
「めっちゃ、頑張ります♪」
午前は水泳で全身運動、屋内プールにて浮き輪に乗った金太を重しにして競泳水着姿のポーラが泳ぐ。
小遣い稼ぎに北極海で母親と漁業をしていたポーラの泳ぎは豪快だった。
「アイス♪ アイス♪ バケツでアイス♪」
「いや、バケツサイズは食べ過ぎだからカップまで!」
午後のランニング、他のクマ娘同様に青いジャージ姿になり腰にタイヤを括りつけてタイヤに金太を乗せて走るポーラ。
金太からアイスの制限されたポーラのやる気が下がった。
「ポーラと温泉行きたいな」
金太がぼそりと呟く。
「行きます! 温泉♪ 温泉♪」
金太の呟きでポーラはやる気を出し、ランニングを頑張り体力を上げた。
「はい、チョコミント♪」
「金太さん、食べさせて下さいあ~ん♪」
「はい、あ~ん♪」
身長差四十センチのカップルが、アイスの食べさせ合いをしていちゃつく。
金太とポーラのペア以外にも、同様の行為をあちこちでペアが行なっていた。
「じゃあ金太さん、宜しくお願いします!」
「ああ、行くよ!」
地下のトレーニングルーム、巨大なマニピュレーターを持つ黄色い小型パワードスーツ。
その名も、グラップルローダーを装着した金太とポーラが向かい合いスパーリングを開始した。
クマ娘の存在がロボット技術を発達させた。
並の銃器や地雷ではクマ娘を止められない、戦車は砲弾を回避されて倒された。
対空兵器で武装したクマ娘には戦闘ヘリや航空機に負けない。
そうした超人生命体としてのクマ娘に対抗する為、尚且つ人類がともにクマ娘と戦う為に開発されたのがグラップルローダーなのだ!
金太が操作する巨大な機械の腕と、ポーラの腕が組み合う。
手四つの力比べは互角、そこからポーラが力を抜き手四つを解く。
「あ、やば!」
「機械の反応が遅いです、破っ!」
腰の入ったポーラの頂肘が、グラップルローダーのボディを打つ。
「ぐはっ! ローダーのボディのHP、七割持ってかれてる!」
グラップルローダーは手足とボディにHPが設定されており、四つの内の二か所HPがゼロになれば安全の為に停止する。
「なら次はグラップリングです!」
「ああ、来いっ!」
次にポーラの低空タックルが来る、金太は止めようとするもタックルの衝撃でボディのHPがゼロになりエアバッグが発動してテイクダウンで転ばされる。
「腕一本、これで終わります!」
「……ああ、腕のHPも切れたか」
「うふふ♪ さあ、防具を外しましょうね♪」
アームロックで金太のグラップルローダーを停止させたポーラが、テキパキとロックを解除してローダーから金太を引き出した。
「さあ、後は二人でストレッチをして上がりましょう♪」
「ポーラはローダーを壊さないでくれるから助かるよ♪」
「壊したら罰則ですし、金太さんが乗ってますから♪」
グラップルローダーを倉庫に片付けて来たポーラが、金太と会話する。
他のクマ娘は、マネージャーとのスパーリングではグラップルローダーを壊しがちだがポーラは違った。
「グリズリーさんも、壊さないですよ♪ 壊すのはマレーちゃんやツキノワさんですね♪」
「意外とパワーがある人の方が、力加減で来てるよな?」
「だからこそ、グリズリーさんは厄介です」
二人でストレッチをしながら、ポーラはグリズリーに闘志を燃やした。
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