クマ娘キューティーファイト

ムネミツ

第1話 目指せ、足柄山カップ!

 「金太さん、どうですか♪ 私の勝負服♪」

 「うん、星空の女神様みたいでポーラらしくて良いと思う♪」


 マネージャーの金太の前に、黒地に金の星空模様のスパッツにスポーツブラと言う格好でプレハブから出て来たポーラ。


 プラチナブロンドの髪と青い瞳に健康的な褐色の肌。


 二メートルの身長、鍛えられた全身の筋肉に豊満な胸を持つ美少女がそこにいた。


 「この勝負服で足柄山あしがらやまカップ、頑張ります♪」

 「うん、僕もサポートは頑張るよ♪」


 身長は百六十台でそこそこな美少年の金太は、自分のパートナーであるこの美しいホッキョクグマのクマ娘に尽くそうと誓った。


 「それじゃあ、足腰のトレーニングからやろうか♪」

 「はい、宜しくお願いします♪」


 二人はグラウンドに出ると、他のクマ娘達が同様の練習をしている中で空いているコースに立ちポーラが金太を背負ってのウサギ跳びを開始した。


 クマ娘にとってパートナーのマネージャーは、恋人であり世話が借りでありトレーニング器具でもあった。


 「む~っ! マネージャー、ダイエットしたでしょ! マレーに掛かる負荷が減っちゃうから食べなきゃ駄目だよ!」

 「いや、マレーはスピードで勝負した方が良いと思うんだけど?」


 ポーラと金太ペアの後ろではマレーグマのクマ娘マレーとそのパートナーが言い合いながらウサギ跳びをしていた。


 「……むむっ、金太さん! マレーさんよりも私に集中して下さい!」

 「いや、俺は何もしてないって!」

 「金太さんの臭いが動きました! マレーさん達の方に振り向いた証拠です、金太さんは私のパートナーなんですから余所見をしては駄目ですよ?」

 

 クマ娘達は自分のパートナーへの執着が強く、ポーラも金太への執着が強かった。


 「ウサギ跳びよりも、四つ這いで走る方が腕も鍛えらえるよ♪」

 「ちょ、ツキノワちゃん速過ぎるって!」

 「僕が日本代表の、ツキノワグマだ~~~っ♪」


 ツキノワグマのクマ娘こと、ツキノワはセーラー服風の勝負服が汚れるのも構わずにマネージャーを背に乗せて四つ這いで手足を動かして走っていた。


 「ツキノワに抜かされた! マレーも四つ足で走る、太陽が月に負けてられないもん!」

 「いや、勝負服汚れるから駄目だって!」


 太陽の模様の赤い勝負服姿のマレーが、ツキノワに対抗心を抱き自分も手足四つで走り出す。


 「皆さん、レースを始めたみたいですね? 私達もやりましょう♪」

 「ちょっとポーラ? そう言う空気は読まなくて良いから!」


 ポーラも四つ這いになって駆け出す、彼女の背の上の金太はクマ娘に跨りおうまの稽古状態だった。


 この出来事を切欠に、ファイ専で四つ這いレースがトレーニング科目やクマ娘同士の決闘法として確立されて行くのであった。


 「……ふう♪ 何故だかわかりませんが、とても楽しかったです♪」


 いつの間にか、レースになっていた四つ這い疾走を終えてポーラが呟く。


 「思い切り体を動かすのは、気持ち良いからね♪」

 「あ、コンビニでアイス買って食べましょう♪ インターバルです♪」

 「バケツサイズは駄目だからね? 晩御飯はちゃんこ鍋作るから」

 「……う、金太さんのちゃんこ鍋の為なら我慢します!」

 「じゃあ、奮発してポーラの好きなシャケ沢山入れるね♪」

 「シャケ! 本当ですか、じゃあ頑張ります♪」

 アイスかちゃんこで悩んだポーラ、彼女の心の中の戦いはちゃんこ鍋が勝利した。


 その決まり手はシャケ、クマ娘は何故か全員シャケが大好物であった。


 ポーラと金太は学食棟に向かう。


 学食棟は良く食べ、良く寝て、良く闘うをモットーとしたクマ娘達の憩いの場。


 一階はフードコートと大型スーパー、二階はコンビニで三階は居酒屋やラーメン店で四階がパーティー会場にもなるレストラン。


 学食棟はクマ娘やマネージャーだけでなく、学校関係者全員の胃袋を預かるファイ専の生命線であった。


 ポーラと金太は二階のコンビニで百円のアイスを二つ買うと、一階へ降りてフードコートのテラス席に座った。


 「チョコミント、美味しいです♪」

 「安納芋バーも食べてみる?」

 「そ、それは間接キッス! 受けて立ちます♪」


 ポーラはチョコミントのバーを一気に食い終えると、金太が差し出した安納芋バーを一気に食った。


 「……尊い、愛の味がします♪」

 「……あははっは、まあ良いか♪」


 そして二人はスーパーでちゃんこ鍋の材料を買った。


 「じゃあ僕は先に寮に戻って料理してるね?」

 「私はみっちり打撃練習で、お腹を空かせておきます♪」


 ポーラと金太は一旦別れて、それぞれ自室での調理と打撃練習に向かった。


 室内運動場、サンドバッグをドスドスとワンツーで殴りタックルをかますポーラ。


 「足柄山カップ、豪華箱根温泉旅行ペア招待券っ! トロフィーよりも、こっちが欲しいです!」


 打撃練習を終えて、壁のポスターを見るポーラ。


 ポスターにはキューティーファイトの神奈川県大会、足柄山カップの優勝賞品が記載されていたのであった。


「優勝して、温泉旅行で深く結ばれるペアになるのは私と金太さんです!」


 ポーラの渾身の左ストレートが、サンドバッグを破壊した。

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