暗いからこそ目立つ

 リアムとルォシーは町から少し外れた場所にある丘に向かっていき、備えられた階段を登っていた。


 そして、ルォシーは息を切らし、時々眠たそうにあくびをしながら、


「はぁ、はぁ……ふぁあ、ふぁ……ふぁあ、はぁ……はぁ」


「ん、大丈夫?」


 心配そうに振り返り、様子をうかがうリアム。


 ルォシーは硬い笑みを作り、親指を立てながら、


「うん、大丈夫! リアムと一緒だからね!」


「背中押してあげようか?」


「そこまでしなくていいよー! 大丈夫だから、がんばる!」


 二人は少し早めの呼吸音を鳴らしながら階段を登り続けていく。


 そして、階段を登り切った二人は、少し広い広場にたどり着いた。


 リアムは笑みを浮かべながら振り返り、


「ふぅ、到着だよ! ルォシー、ご苦労様」


「終わり? ふぅ、ちょっと運動不足だから、息が上がっちゃった」


「付き合わせちゃってごめんね」


「好きで来てるから、謝らないで」


「ちゃんと疲れた分のご褒美はあるから……多分」


「たぶんって……不安だなぁ」


「大丈夫、なはず。とりあえず、ほら、こっちこっち」


 リアムは広場端の手すりに近づいていき、手招きする。


 ルォシーもリアムの後ろをついていき、そして笑顔を浮かべながら、


【わぁ、綺麗】


 ルォシーは目を輝かせながら、夜闇に反抗して輝くヒラチウヤの姿をうっとりと眺める。


「素敵」


「魅力的でしょ? これが、ここが俺の住んでる町、俺たちの町ヒラチウヤ」


 ルォシーは微笑みながらゆっくり頷き、


「うん。とってもいいところだよ」


「まぁ、景色だけはね」


 眉尻を下げて強張った笑みを浮かべるリアム。


 ルォシーは小首をかしげながら、


「それにしても、すごく綺麗な町並みだけど、もう夜も遅いのに明かりがすごくない? それに、人通りも多いし」


「……この町の風習というか、夜型人間が多いんだ。だから結果的に夜が活発になる町になったっていうか……うん。昼はアンドロイドとかが対応してるし、うまく回ってるよ」


 リアムは慌ただしくつぶやく。


 ルォシーは腰で手を組みながら、


「なんだか不思議な町だね。というより、個性的? あー、つまり、やっぱり素敵ってこと!」


「……だよね」


 リアムは手すりに体を預けてうなだれる。


 ルォシーは視線をもう一度ヒラチウヤの景色に向け、微笑んだ。

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