追ってから振り切れ

 リアムは歩道を駆けていき、道路脇に停まっている電動車椅子タクシーに乗り込んだ。


 そして、ひじ掛けに備わっている装置に触れると、リアムの前方に長方形の画像が映し出され、地図が表示される。


(ルォシーをかなきゃ。えーっと、ヒラチウヤはどこだ……あった。ここ。早く帰らなきゃ。)


 リアムは地図の一点を触れたあと、同じように数回画面をつついていく。


 それから、固定具を腹部に掛けたら、ひじ掛けの装置を操作する。


 すると、電動車椅子タクシーはゆっくりと道路上を進み始めた。


 一方、ルォシーも空いている電動車椅子タクシーに腰を掛けて、


「えっと、えーっと……音声入力! あの375番を追って!」


 電動車椅子タクシーから柔らかい大人の女性の音声が流れだし、


『申し訳ございません、もう一度おっしゃってください』


「んもう! 375番の電動車椅子タクシーを追従! できるでしょ!?」


『目的地の設定。375番の電動車椅子タクシー。よろしいですか?』


 ルォシーは腹部に固定具を巻きながら語気を強め、


「すぐに出発! 追って!」


『出発します』


 ルォシーを乗せた電動車椅子タクシーも路上をゆっくりと進み始めた。






 リアムを搭乗させた電動車椅子タクシーは国道を時速約十五キロメートルで進み続けていた。


 リアムは不安そうに後ろを振り向き、


(うわあぁぁ!? ルォシー付いてきてるよ! というか電動車椅子タクシー乗ってるし!)


 そして、口横に手を添えながら、


「ついてきちゃダメだってー!!!」


「どうしてダメなのー!?」


 電子車椅子タクシーに座っているルォシーも両手を口に添えながら大声で質問をぶつける。


 リアムも対抗するように声を大きくし、


「家に帰りなさーい!」


「どうしてー!?」


「もう空が暗くなるよー!」


「それなら大丈夫! だからお礼をさせてー!」


「負担かけさせたくないから! だから早く諦めて家に帰りなさーい!」


「なんでそこまで拒否するのー? ……あ、もしかして、照れてるのー? もう、そんなこと気にしなくていいのに! 安心してお礼を受けてよー! ……しょうがないなぁ、おせっかい焼いちゃうよ!」


 騒がしい乗客を乗せた二台の電動車椅子タクシーが道路を直進していった。

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