第3話 蔵の中
大叔父にも、
伯父にも
わたしは会った記憶がない
離れは座敷奥の渡り廊下を行った
突き当たりの蔵に隣り合わせに
造られていた。
日当たりを考えると、
不自然な造りだったが
そう思うようになったのは
大人になってからで、
そのときは静かすぎる屋敷の一角の
高い塀と真っ白な壁が
近寄ってはいけないという
母と祖母からの戒めを
不思議にも思わず、
寧ろ逃れたい、そう思ったのだった。
ひとつには
父方の伯父から
贈られた人形のこともあった。
ただ、怖くて、
でも誰にも言えなくて震えていた。
その人形には
そんな思い出しか浮かんでこない。
美しい着物を纏った人形は
まるで生きてるようだったけれど、
贈られたときに一度だけ抱えた
そのときの事は忘れられない。
人形からかすかに声がした。
見ているわよ、忘れないでと。
人形は微かな息を吐いて、
そう言ったのだった。
人形 夏洲(かしま) @karyoubinga
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