Chapter 2 第6話 連鎖

あれから数日。琴音ちゃんと一緒に二人の面倒を見ながら過ごしていた。特に変わったことはなく、人間界と違って平和な毎日。私に任されているのは人脈の確保もある。だから、決して真心くんたちのことを忘れてサボっているなーんてことはしてないよ…???


優愛「おはよう、ご飯できてるから、座っててね。」


唯一変わった点があるとすれば、二人が着々と大人に近づいている点。まあ、成長するから当然なのかな?とはいえ、まだこの二人も生まれて30年近く。まだまだ子供なのにしっかりしている。四人で家事を分担しているから、大抵のことはすぐに終わって、みんな好きなことができている。


こころ「琴音ちゃんと心愛ちゃんはどうしたの?」


優愛「どっちが多く狩るか勝負だってダンジョンに駆けていったよ。私も朝ごはん食べてあの二人を追いかけるつもり。こころも行く?」


こころ「うん、なんか面白そうだし、ついていく。なんならあのダンジョンの深層に潜ってみるのも面白そうじゃない?」


優愛「それいいかも!」


そんな話をしつつ、朝ごはんを食べ終え、二人がいるダンジョンにつく。でも、一層目にはいないようだ。最近は三層目で狩ってるって言っていたから、多分そこ…聞いてみるか。


こころ「あの二人どこまで行ったの?」


優愛「たしか四層目に挑戦するって言ってたよ。四層目への階段の場所は把握…」


こころ「…あの二人だけでここの四層目はまずい、優愛ちゃん急ぐよ。」


優愛「え…?」


このダンジョン、作りがしっかりしすぎている。1、2、3層目は初心者用の狩場としてうってつけの地形ばっかり。でもこの間私一人で潜りにきて、ついでに最深部の部屋の前まで行ってみたけど、四層目から急激に敵の強さが上がる。


それどころか、一層降りるごとに敵の強さは飛躍的に上昇する。5層にあ二人が行っていて、かつ時間が経っていたら、もう手遅れだ。


優愛「こころっ…速いよぉっ…」


こころ「…っごめんねっ脚力のトレーニングと行きたいけど今はそんな暇ない!」


優愛「ってちょっ…!?」


優愛ちゃんを抱え、走り出す。今は第三層目。ここにもあの二人の気配はなし。ということは、あの二人はもう四層目に行った。あの二人があそこで耐えられる時間にも限界がある。


こころ「舌噛まないでね。スピード上げるよ!」


優愛「ぎえーーーー!!!!」


四層目への階段。そこまでの魔物は全員結界を使ってここに来れないようにし、強引に進む。階段を降りてすぐ、二人の気配がした。幸い、弱ってはないようだ。この層から本格的に地形が入り乱れる。迷宮というのが一番自然なほどに。


琴音「心愛後ろ!」


心愛「にゃっ!こいつら、なんでこんな連携が取れるの!?」


猫みたいな掛け声は…左から!


そこは壁だったから、高密度のレーザーを放ち、壁を破壊し二人を確認する。ついでに二人が戦ってた魔物もお片付け。


琴音「うぎゃーーー!!!ってお前かよ!!!!!!」


こころ「あのねぇ…四層目に挑むって聞いたとき生きた心地しなかったよこっちは…」


琴音「だってこんな強いなんて聞いてないだろ。もっと段階踏むパターンだと思っててさ…」


こころ「まあ、二人とも無事で良かった。その様子だと、三人ならこの層で狩りしても良さそうだね。」


心愛「襲ってきた魔物で今のところ倒せなかったのはいないし、五層じゃダメ?」


こころ「いや、五層は更に敵が強くなる。悪いけどあなた達じゃ手も足も出ないね。」


琴音「…特効しなくて良かった…というか、なんでまだ起きてない優愛抱えてるんだ?」


え?優愛ちゃんはさっき起きてたはずじゃ…


優愛「…(脱力)」


あ、スピードを飛ばしすぎたみたい。ぐったりしてる。ちなみに後日談だけど、この後優愛ちゃんはジェットコースターとか絶叫系に乗れなくなった。なんなら全力で拒否するようになった。


こころ「…どうする、これから」


琴音「どうするも何も、こいつがこんなんじゃ、何もできないし帰るぞ。これこいつ絶叫系トラウマになるんじゃねーか?無理やり乗せて反応みたいけど流石に可哀想かな…」


この予想は後に当たることとなる。


優愛「ぐえー…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

突然だけど、私は肩たたきしてもらってる。なんでかって?そりゃあ決まってるよ。優愛ちゃんを猛スピードで連れ回したから。


優愛「だだだだだだだだだ…」


こころ「もう少し右かな。」


優愛「肩たたきじゃないってばーーーー!!!」


琴音「楽しそうやな。私は森で食べ物採ってくるぞ。」


心愛「あ、私たちで行きたい!」


琴音「?もう一人は誰さ。」


心愛「そりゃあ優愛だよ。前から二人の代わりに採りに行きたいって話してたの。」


優愛「私もう少しだだだだする」


琴音「そりゃあいいね。お前らの実力だったら多分盗賊出ても大丈夫だ。必要な材料は…っと、はいこれ。採ってきてくれ。」


心愛「了解。さあ優愛、行くよ。」


優愛「やだまだだだだだするの!」


心愛「全部母音aで読者読みにくいからやめなさい」


琴音「私たちがメタ発言するのってOKだっけ?」


こころ「だめだよ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ということで尺長いけど少し我慢してね…

私、優愛は心愛と一緒に森に来たよ。


心愛「優愛、メモ見せて。…あとは魚だけだね。」


優愛「川ならここにあるし、お魚さんこっちに来てくれてるよ。えっと…輪還ってどうやって回すんだっけ?」


心愛「お魚さんと目を合わせてあなたの命をくださいって祈るだけ。」


…人間のみんなにはわからない仕組みかも知れないけど、心恵世界では、『食物連鎖』ではなく、『心恵の輪還』によってサイクルが回ってる。


植物は草食動物のために、葉っぱをつける。草食動物は肉食動物のために肉を蓄える。そして最上位の、高度の知性を持つ生き物が、植物のために土地や肥料を用意する。ちなみに、輪還のために使ったものは元に戻る。


わかりやすいように言えば、食べられた生き物は生き返る。普通に殺されちゃった生き物は生き返らないけどね…


とりあえず、川のほとりにしゃがみ、お魚さんを見つめる。そうして体の下へと手をくぐらせて、目を閉じ、意識を集中させる。目の前のお魚さんと、意識が繋がっていくのを感じる。


繋がるのを感じる過程で、お魚さんの自分の身に関する自信が私に伝わってくる。相手にも同時に私が魚を欲しているという感情をも伝わっているのが直感でわかる。


『あなたの命をください』


心愛「いっぱい集まったね。」


優愛「始めて輪還を回して、なんか変な感じ…」


心愛「植物との輪還も今度やってみたら?なんにもわからないように見えて、植物にもしっかり輪還を回したいっていう強い意思があるんだ。」


優愛「今度やってみ…」


咄嗟に後ろへと下がる。理由は単純、盗賊が現れた。私達は無言で剣を取り出し、応戦する。


心愛「下がって!!!」


え…もう遅いよ…私はもう斬りかかる体勢に入ってしまった…

ならもう、全力で斬るしかない。しかし、敵は私の剣をいとも容易く受け止め、弾き返す。相手は複数。仲間が私を斬りつける。私は、対応できない…


???「初心者を狙うとは…お前らに道徳心と言うのはないのか?」

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