Chapter 2 第5話 玩具
私達の間を、絶妙な空間が支配している。琴音ちゃんにとって、よほどつらいことだと言うことが伝わる。聞いて良かったのだろうか、興味本位できいたが、おそらく失言だ。
こころ「えっと…嫌だったら…」
琴音「いや、もう勘づかれたから、言うよ。一緒に住む以上、知っていてくれた方が楽なこともあるんだ。」
こころ「わかった。ゆっくりでいいよ。」
琴音「わかった。それじゃ、話していくな。」
「昔、私は冒険者をしていたのは知っていると思う。Ⅱ族だから最初は弱いけど、なんとか強くなってやる、闘技場でパフォーマンスできるような人になってやるってね。その頃は子供なんていなかったから、一人であのダンジョンで色々狩っていた。でもある日、目が覚めたら突然見知らぬ土地にいたんだよ。ちょっと、話が飛躍しすぎと思うかもしれないけど、これが事実なんだ。突然、ワープした。前兆として、大きな地震はあったんだけどね。」
こころ「…その世界で起きた出来事?」
琴音「そうだ。あの世界に行かなければ今も私は元気に冒険者してるさ。」
こころ「…そう、」
琴音「…続きにもどるけど、困惑しつつも、辺りを見渡すとな、同じ境遇の人たちがいたんだ。私の周辺にいた人がみんなあの世界に飛ばされていた。集まって探索しようと思ったんだけど、そこに男の集団が現れてな、私達を次々と捕獲していった。全員、応戦した。でも、捕獲されるまであっという間だった。弾幕を撃っても無視して被弾しながら突っ込んでくるし、剣で斬ろうとしても素手で止められる。そんなやつらが集団だぜ?恐怖でしかなかった。」
こころ「…結局、逃げられた人はいないの?」
琴音「いない。全員捕まった。」
こころ「そう…続きをおねがい。」
琴音「わかった。捕まったあと、変な城に連れていかれてな、そこで私達をどうするのか不思議だったんだけど、見るからに王!って感じの人が出てきて、私達を見て、『今回は女が多いな。まあ構わん。いつも通り、男は労働力、女は玩具だ。お前ら、好きに使え。』って言ったんだ。私達のことを、人として見てなかった。男の人たちがどうなったか、私はしらないけど、女の人はみんなおもちゃとして扱われた。ストレス発散道具やら、ギャンブルのゲームに使ったり、何かご褒美で釣って遊んだり。
──また、無理やり性玩具にさせられたり、だ。」
こころ「そんなの、まともに耐えられないよね…」
琴音「もちろん。次々と自殺していった。でも、私は生き残った。一人一人死んでいく度に泣きそうになったけど、でも頑張った。朝はサンドバッグ、昼はペット、夕方はギャンブル道具、夜は性玩具。そんな生活だよ。寝る時間なんてなかった。ヤるのに汚いのは嫌だからって風呂に入れられることはあったし、飯も普通に食べさせてもらえてた。…昼のご褒美がほとんどだけど。」
こころ「自分の意思で何かすることはできなかったんだ…」
琴音「そうだったな。どれだけ疲れてても、どれだけ苦しくても。休ませてなんてくれなかった。」
いつの間にか、隣にいた琴音ちゃんは私にべったりくっついている。多分、思い出して怯えている。そっと琴音ちゃんを抱き寄せて、少しでも安心させてあげる。
琴音「…なかなか壊れないからって、とうとう王が私を使い始めてさ。誰よりも乱暴に使うんだ。毎日の鬱憤を晴らすからってサンドバッグにする。でも、鬱憤を晴らすためだから、もちろん全力で殴る。どれだけボロボロになっても気が済むまで殴り続けられた。おもちゃとしても乱暴。おもちゃなら従って当然って感じの態度で使うんだ。王に使われ始めてから、限界がきて、どんどん弱っていった。でも、弱ると回復されて、また使われる。」
こころ「自殺しか死にかたがないんだね…」
琴音「そうだよ。でもいつか助けが来るって信じて待ち続けたんだ。そんなある日、いつも通りに王にあそばれてたんだけど、
──妊娠、したんだよ。そこで。」
こころ「…優愛ちゃんと心愛ちゃんは、王との間にできた双子…?」
琴音「そう。王は、『理外』の力を持つ半人で、Ⅴ族の中でも特に強い方だった。だから、あの二人はⅣ族。」
こころ「妊娠したとはいえ、どう脱出したの?」
琴音「使えないっていって、捨てられた。服ももう破けて着せてもらえずに、半界のそこら辺にポイだよ。もちろん、服ないから恥ずかしくて助けなんて求められなかった。そもそも、弱りきっててそれどころじゃなかったけど。幸い、小さな村で保護されて、この家まで返してくれたんだけど…妊娠しちゃってるから冒険はもうできなくて。」
こころ「授かっちゃった子だから、一生懸命育ててたら、死にかけて私が見つけた、って訳ね?」
琴音「そうだ。ホント、命の恩人だよ。ここまで帰ってくれば大丈夫だとおもってたんだけど、村に残っていればきっとあんなギリギリの生活はせずに済んだのにさ。あのときの私は帰ることで必死だったんだ。」
こころ「まあ、しょうがないね…」
琴音「一応、これで全部だ。過去と、心愛達がⅣ族の理由。これでいいだろ?」
こころ「うん。知りたいことは知れた。ありがとね。
──そうだ、こういうことを思い出すとトラウマが蘇ってってことがあると思うんだけど…」
優愛「そば…いて…」
こころ「…?寝言かな?」
琴音「なんで私が言いたいことを言うんだよ…まあ、あの、今日寝るときまでそばにいてもいいかな…」
こころ「いいよ。安心するまで居て。」
優愛ちゃんの寝言と琴音ちゃんのちょっと可愛らしい発言で、場の雰囲気が少し和んだ。
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