鬼ヶ島タイタニック

「よし! これで荷物は全部乗ったオニな!」


 船の修繕に丸二日。

 大鬼さまのバックアップもあり船一隻をしっかりと修繕することができた。


 そして今日、俺たちは大鬼さまに見送られ鬼ヶ島から脱出するのだ。


「北には鬼の集落があるオニ。そこに行けばきっと助けてくれるオニ」

「大鬼さま……」


 大鬼さまは最後まで俺たちを全力でをサポートしてくれた。


「大鬼さま、どうして俺たちにここまでしてくれるんですか……?」

「……」


 俺がそう言うと大鬼さまはふと目を瞑った。


「今、目を瞑っても鬼子ちゃんのあの歌が聞こえてくるオニ」

「?」

「私はずっとずっと鬼子ちゃんのファンだったオニ。だから君のことがずっと羨ましかったオニ……」

「大鬼さま……」

「気にするなオニ。鬼子ちゃんファンとして鬼子ちゃんの幸せを願うのは当然のことオニ!」


 ふぅと大鬼さまが息を吐いた。


「……最後に鬼子ちゃん。握手をしてくれないオニか?」

「はい……!」


 鬼子ちゃんががっしりと大鬼さまの手を握る。


「本当に……本当に今までありがとうございました……!」

「新たな旅立ちに涙は似合わないオニよ……。それに私は君のそんな涙を受け取れるいい鬼ではないオニ」

「そ、そんなことは……」

「さぁ! もういいから行くオニ!」


 大鬼さまが俺たちの乗った船を力いっぱいに押して、海辺に出していく。


 船はどんどん海に出て行き、ついに大鬼さまの手を離れてしまった!


「元気でオニーーー!!」

「大鬼さまーー! どうかご無事でーー! 北の集落で待ってますから!」


 そんな声を張り上げながら大鬼さまの姿が小さくなるまで鬼ヶ島を見つめていた。


「……鬼子ちゃん、大鬼さまからいただいたたくさんの贈り物を無駄にしないようにしよう」

「うん……」


 波風にかき消されないよう、大鬼さまの声を耳を研ぎ澄まして聞いていた。

 大鬼さまが泣いているような喜んでいるような不思議な声をあげていた。




ED2 哀愁のラプソディ




 

 

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