鬼ヶ島マッチポンプ
洞窟に恐る恐る入っていく。
ひんやりとした空気が肌を包む。
「……どうしてここに来てしまったオニか」
奥からよく聞きなれた声が聞こえてきた。
「お、大鬼さま?」
ドドン!!
と、いつも張り上げているお腹がどこか元気がなくなっていた。
「ど、どうされたんですか!? まさか桃太郎の手下に!」
「違うオニ……」
大鬼さまがガタっと手に持っていたものを落とした。
「……そ、それは?」
「君には見られたくなかったオニ……」
大鬼さまが落としたのはハンマーだった!
「ま、まさか大鬼さまが……」
「わ、私はとんでもないことをしてしまったオニ」
ガクッと大鬼さまがその場にひざまついた。
「……どうしてこんなことを」
「桃太郎からの指示だったオニ」
えっ、一体どういうこと……?
「あのときの私は推しの鬼子ちゃんの交際報道で荒れていたオニ……」
「交際報道!?」
確かに前に俺と鬼子ちゃんの交際報道が流れたときあった。
けどそれは何年も前の話だった。
「そのときに勢い余って桃太郎に封書を送ったオニ。“鬼ヶ島を襲ってほしい”と……。そのときに私が鬼子ちゃんを救い出せばきっと私に振り向いてくれるだろうと……。それが今頃になってこんなことに……」
「そ、そんな……」
いつも力強い大鬼さまが懺悔をするように俺にそう言ってきた。
「じゃ、じゃあなぜ船を壊すなんてことを!?」
「船で逃げたら桃太郎に襲われるオニ!! 標的にしてくれと言っているようなものオニ!!」
「そ、それでそのハンマーで……」
「許してほしいオニ……。ただこれだけは信じてほしいオニ。本当に私は鬼子ちゃんの幸せを祈っているオニ」
「大鬼さま……」
大鬼さまが泣き崩れてしまった。
大鬼さまの泣き声が洞窟の奥に吸い込まれていった。
ED1 懺悔のラプソディ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます