始まり 鬼ヶ島脱出作戦

鬼子おにこちゃん! 大変だ! 三日後に桃太郎がくる!」


 大鬼おおおにさまのところから急いで愛する鬼子おにこちゃんが待つ家に帰ってきた。


「も、桃太郎!?」


 家事をしていた鬼子ちゃんの手がピタッと止まる。


「あ、あの桃太郎がついにこっちまでに来るの!?」

「そうなんだ! 今、桃太郎の部下が大鬼さまに電報を持ってきて!」

「そ、そんなぁ」


 鬼子ちゃんが、薬指にはめた指輪をもう片方の手でぎゅっと握りしめた。

 大鬼さまのおかげで買えた大きなダイヤ入りの指輪だった。


「お、俺! 絶対に鬼子ちゃんのことは守るから!」

「あ、あなた」


 鬼子ちゃんの震えている肩をしっかりと抱きしめる。


 お、俺はどうなってもいい!

 鬼子ちゃんのことだけは何としてでも守らないと!


「……鬼子ちゃん。鬼ヶ島から一緒に逃げよう」

「で、でも……どうやって……?」

「鬼ヶ島の南側に船着き場があるんだ! 船も何隻かあったかと思う! ちょっと見てくるよ!」

「ま、待って! 私も一緒に行くわ!」

「鬼子ちゃん……」

「私たちはもう一蓮托生よ……。私のことを置いてかないで……」

「……分かったよ、鬼子ちゃん! 一緒に船着き場に行ってみよう!」


 鬼子ちゃんの手を強く握りしめ、俺たちは船着き場に向かった。

  



※※※




「そ、そんなぁ……」


 鬼子ちゃんと船着き場に着くと、愕然とする光景が広がっていた。


「ふ、船が全部破壊されている!?」


 凄惨な現場だった。

 全ての船が木っ端みじんに破壊されているのだ!


「あなたどうしましょう……」


 鬼子ちゃんが心配そうに俺に声をかけてきた。


 俺は思わず次の言葉を出していた。



1 「だ、誰がこんなことを……」



2 「違う脱出方法を考えないと……」

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