鬼ヶ島アイドルオタクラプソディ

丸焦ししゃも

プロローグ 鬼ヶ島の総大将

 俺は鬼ヶ島の門番の赤鬼だ!


 鬼ヶ島の治安を守る大切な仕事をしている!


「右! 左! 異常なし!」


 今日も鬼ヶ島は安全だ。


 週休二日制で残業なし。

 朝は9時から出社で夕方は5時には帰れる!


 昔の鬼ヶ島はブラックだったと聞いているが、今は全然そんなことはなかった!

 

 そしてそんな今の鬼ヶ島は、一匹の強力なリーダーが整備したらしい。


「調子はどうオニか?」

「そ、総大将!」


 大鬼さまの巡回の時間だった!

 そう、この大鬼さまこそが昨今の鬼ヶ島に改革をもたらした偉大な鬼なのだ!

 

「は、はい! 今日も問題ないでございます!」

「今日も鬼ヶ島が平和なのは君たちの働きのおかげオニ」


 大鬼さまからねぎらいの言葉をいただく。

 大鬼さまは部下との距離が近く、いつも気軽な感じで話しやすかった。


「め、滅相もございません!」

「うーん、君もそろそろいい歳オニね。結婚とかは考えてないオニか?」

「そ、それは……」


 前述のとおり、鬼ヶ島勤務になんの不満もないが俺には悩んでいることがあった……。

 俺にはもう何年も付き合っている彼女がいる……。

 鬼ヶ島アイドルグループのセンターの鬼子おにこちゃんだ!

 長く付き合っているので周りには周知の事実として知られている。

 そろそろ頃合いだとは思うのだが、中々鬼子ちゃんにプロポーズできずにいた。


鬼子おにこちゃんは待ってると思うオニよ」


 大鬼さまが親身になって俺たちの心配をしてくれていた。


「は、はい。私もそろそろだとは思っているのですが……」

「何か問題があるオニか?」

「じ、実はお恥ずかしながら金銭面に不安を抱えてまして……。結婚指輪も満足に買えない状態でして……」

「……そうか、君の家は色々大変だったときがあるオニもんね」



ドドン!!



 大鬼さまが大きなお腹を張り上げた。


「あまり高いお給料が出せなくていつも申し訳ないとは思っているオニ」

「そ、そんなことは!」

「これを君に渡したいオニ」


 ポンっと大鬼さまが抱えていた大きな袋を俺に手渡した。


「こ、これは?」

「それを売ればきっと結婚指輪くらいにはなるオニ」


 渡された袋の中身をのぞいてみる。

 なんと! そこには高そうな財宝が入っていた!


「どうしたんですかこれ!?」

「それは私の私財オニ。君がそんなことで悩んでいるのに私だけが私腹を肥やすわけにはいかないオニ!」

「そ、そんな!? こんなの受け取れませんよ」

「いいからいいから! これは君の上司としてではなく、君のことを大切に思っている友人として渡したいオニ。しっかりプロポーズ決めてくるオニよ!」


 大鬼さまがぽんっと俺の肩に手を置いた。


「お、大鬼さまぁ……」


 大鬼さまの優しさに思わず涙がこぼれてしまった。

  



※※※




数日後



「おぉーー! ようやく祝言か! おめでとうオニ!」


 今日は大鬼さまのいる大広間に来ていた。

 大広間は鬼ヶ島の丁度中央の位置あたりにある。


 無事、鬼子おにこちゃんにプロポーズが成功し大鬼おおおにさまに結婚の報告に来ていたのだ!

 

「こんなめでたいことは久しぶりオニ! 鬼ヶ島総出でお祝いするオニよ!」



おぉーー!



 周りの同僚も大鬼さまの一言に歓声をあげた!


「おめでとうオニ!」

「羨ましいぞーー! アイドルの鬼子おにこちゃんと結婚なんて!」

「今度、男同士で一杯やろうオニ!」


 同僚が次々と俺に祝福の言葉をかけていく。

 

「み、みんなありがとう! 俺、絶対に鬼子おにこちゃんのこと幸せにするから!」



パチパチパチ!



 大きな拍手の音が聞こえる。

 みんなが笑顔で俺を祝福してくれている。

 あまりにも幸せな瞬間に自然と涙ぐんでしまった。


「そ、それもこれも大鬼様のおかげです! 本当にありがとうございます!」

「ふふふっ、あんまり気にするなオニよ。けど、これだけは守ってほしいオニ」

「な、なんでしょうか?」


「必ず鬼子ちゃんを守るオニ! これは命令オニよ!」



ドドン!!



 大鬼さまが大きなお腹を張り上げた!



 ――俺は鬼ヶ島の門番の仕事に誇りを持っている!


 尊敬にできる上司に、仲のいい同僚!

 そして愛する人と家族になることができた!


 これからもこの大鬼さまを支えるために鬼ヶ島で一生懸命働いていく所存だ!



ケーンケーン!



 そんなお祝いムードの大広間に一匹のキジがやってきた。

 なにやらくちばしには紙をくわえている。


「大鬼さま、このキジ何かを持っているようですが」

「おっ、電報が何かオニ? 早速祝電かもしれないオニな」 


 大鬼さまが嬉しそうにキジからその紙を受け取り、その書面に目を通していく。


 ――ニコニコしていた大鬼さまの顔がどんどん険しい表情になっていく。


「お、大鬼さま? どうされたんですか?」

「……」

「……あっ、すまないオニ」


 いつもおおらかな大鬼さまが真剣な表情になっていた。


 がやがやとしたお祝いモードが一変、大鬼さまのただならぬ様子に全鬼が注視する。


「……みなの者、よく聞いてほしいオニ」


 大鬼おおおにさまの一言で場が一瞬で引き締まる。


「この文書はからオニ」



ガヤガヤガヤ!



 場が騒然となる!


「えっ……あの桃太郎?」

「つ、ついにこっちにまで?」

「そ、そんな……」

「あ、あの食べると気持ち良くなる怪しげな団子を広めているという……?」


 ――鬼界隈の超有名人 “桃から生まれた桃太郎”

 各地の鬼ヶ島を滅ぼしまわっているという超危険人物だ。


「落ち着いて聞いてほしいオニ。この文書には桃太郎は今日から三日後にここに侵略に来ると書いてあるオニ」


 大鬼さまの声に場がさらなる混乱に陥っていった。




※この物語は選択肢方式のマルチエンドな物語です。

次話の最後から選択肢が出ますので、ご自分が思った選択肢のタイトルにお飛びください。

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