第14話初デート、それぞれの思惑 上

電車の中で、岩崎さんと楽しくお喋りして、彼女の事をだいぶ聞く事が出来た。

私立修学院学園 高等部に通っているらしい。

修学院学園と言えば、日本有数のエリートが通う、超難関校であり、卒業生には、政財界で活躍している人物が多数いる。

幼稚園から、大学迄の一貫教育であり、中学からは、外部受験も可能だが、入試の問題が非常に難しく、突破して入学できる物は、殆どいないらしい。

男女共学ではあるが、男女はクラス別に分かれている為、異性とは、廊下ですれ違う程度で、殆ど交流が無いらしく、彼女も家族以外の異性と殆ど喋ったことが無いらしい。


あの日、俺の車の前に飛び出したのは、学習塾の帰り、迎えの車を待っている間に、いつも構っている犬(ゴールデンレトリバー、近所の飼い犬)が、その日は偶々機嫌が悪かったらしく、岩崎さんに吠えたので、驚いてつい…という事らしい。


まぁ、普段は大人しい犬、しかも大型犬に吠え掛かられれば、驚くのは、仕方ない。


「川上様は、自衛隊にいらっしゃったのですよね?」

「ん?ああ、大学を出て2年間だけだけど。」

「立派な職業に就かれていらっしゃったのですね。やはり、辛いお仕事なのですか?」

「う〜ん。それ、よく聞かれるだけど、以外にそうでも無い。確かに最初は、体力的にはキツイけど、すぐ慣れるし、訓練は体力がつけば、辛くなくなる。むしろ、民間の会社の方がキツイね。自衛隊で一番キツイのは、人間関係だね。自衛隊って所は、完全に階級による縦社会だし、それに幹部は別だけど、独身者は基本寮暮らしで、7〜8人が同じ部屋で暮らしている。だから、完全なプライベートな時間なんて、殆どない。だから常に気を使うし、それが嫌で辞めて行く人も多いよ。」


岩崎さんも、普段知る事のない、自衛隊の内情を聞いて、驚いていた。

そんな話をしていると、水族館の最寄り駅に着いた。

昼には少し早いが、先ずは食事を摂る事にした。

「岩崎さん、少し早いけど、お昼にしようか?何食べる?」

「は、はい。でしたら、ファーストフードが食べたいです…。」

「え!?ファーストフードで良いの!?」

「ええ。普段あまり食べる機会がありませんが、お母様が好きなので、2人で買い物した時などに食べた事があって…。」


そう言えば、岩崎さんのお母さんは、一般家庭の出だっけ?

なるほど、なら、ファーストフードも食べた事あるか。

岩崎さん、意外に庶民的なんだなぁ。


「了解。この辺だと近くに、Bur○er Ki○gがあるけど、そこで良い?」

「はい💕、お任せします💕」

ふぇ〜…何この子、マジでカワイイんだけど…。


Bur○er Ki○gに入り、俺はワッ○ーセット、岩崎さんはチーズ○ッパーJrのセットを注文した。

商品を受け取り、席に着き、岩崎さんがバーガーの大きさに驚く。


「Bur○er Ki○gって、初めて来ましたが、ハンバーガー、大きいんですね!!」

「ん?いつもはマッ○?」

「はい。私のハンバーガーでも、ビック○ック位あるのに、川上さんのは、もっと大きい!」

「ははは。ビック○ックは、Bur○er Ki○gのワッパーに対抗して作られた商品だからね。あと、ここは、ハンバーグを直火でグリルしているて、マッ○のハンバーガーとは、だいぶ違う。俺はBur○er Ki○gの方が好きかな?さ、冷めない内に食べよう。」

「はい!いただきま〜す!はむっ!」

岩崎さんは、小さな口を目一杯開けてハンバーガーを頬張ると、目を大きく開け、「ん〜〜!」と

驚きを表す。

ちゃんと口の中を飲み込んでから、「すっごく美味しいです!!パティが香ばしい!グリルには、炭火を使っているのでしょうか!?」

彼女も気に入ってくれた様だ。

しかし、ちゃんと口の中の物を飲み込んでから、話す所なんかは、さすがお嬢様だと思う。


「そう、炭火でグリルしてるよ。しかも注文を受けてから、パティを焼くから、マッ○よりは、時間がかかるけどね。」

「ファーストフードで、ここ迄美味しいなんて!!」

「残念なのは、日本では店舗数が少なくて、中々食べられないけどね。」

「そうなんですか?もっと店舗数が増えれば良いのに……。」

「日本では、先に○ックが広まっちゃったからね。それに、マッ○と比べると、値段も1.5倍位するしね。」

「この味なら、その値段も納得です!」

「ははは、気に入ったみたいでよかったよ。」

岩崎さんの意外な一面も見れて、楽しく食事した。


食事も終わり、水族館に到着した。

中に入ると、親子連れやカップルが多かったが、あまり混んでいなかった。

入ってすぐに、この水族館の近海の海域を、再現した水槽からはじまり、この水族館で一番大きな大水槽に進む。


大水槽には、色な魚が泳いでおり、その中で目を引くのは、マイワシの群れだ、数百匹はいるだろう群れが、一糸乱れずに泳いでいる。

また、エイやシュモクザメといった、大型の魚やウミガメ、そこのほうには、ネコザメなんかもいる。


岩崎さんは、水槽の魚達をうっとりと観ながら、

「うわぁ!綺麗…。」

「そうだね。でも俺なんかは、ついつい魚を見ると、旨そうとおもっちゃうんだよね。」

「ふふふ、水族館の魚を見て、そう思うのって、日本人だけらしいですよ?魚、好きなんですか?」

「どちらかと言えば、肉の方が好きかな?でも、魚も好きだよ。」

「あ、川上さん。見て下さい!猫ザメがこっちに来ましたよ!ふふふ、カワイイ💕ずっとコッチ見てますけど、向こうからもこちらが見えているんでしょうか?」

「きっと見えていて、岩崎さんの可愛いさに見惚れているんだよ。」

「もう!ネコザメに見惚れられても嬉しくないです!!私が見惚れて欲しいのは、川上さんだけ…💕」

そう言って、耳まで真っ赤になりながら、俺を見つめる。

お互い見つめあっていると、後ろから女性に声をかけられた。

「は〜い。そこの初々しいカップルのお2人さん!今日のデートの記念に、写真はいかがですか?」

どうやら、記念写真のセールスの様だ。

岩崎さんが嫌じゃなければ、記念写真を撮るのはやぶさかでは無いってか、俺は撮りたい!


「岩崎さん、どうする?」

「川上さんにお任せします…。」と、真っ赤になって、俯いてしまった。

「じゃあ、お願いします。」

「は〜い。じゃ、そこで並んでくださ〜い。は〜い、彼女さん、恥ずかしいのはわかりますが、顔あげて〜。彼氏さ〜ん、もっとくっ付いて〜ってか、肩、抱いちゃいましょう!そーです!良いですよ〜、はい、撮りますよ〜?はい、チーズ!」パシャッ!


「は〜い、お疲れ様でした。こんな感じです。」

撮った写真を、デジカメのモニターで確認させてもらった。

岩崎さんは、俺に肩を抱かて顔を真っ赤にしながらも、本当に幸せそうに、ふにゃっとした笑顔を浮かべていた。

俺は緊張しすぎて、ぎこちない笑顔だったが、初デートの記念写真としては、初々しさが出ていて、良い思い出だと思う。

「は〜い。写真は出口でお渡しします。これ、写真の引換券です。」

記念写真の代金は、千円だった。

観光地の料金としては、安いのではないだろうか。


大水槽から、順路通りに周り、クラゲの水槽や、ペンギンのいる水槽を見て、外にあるイルカが居るプールの方へ回る。

イルカショー迄は、まだ少し時間がある様だ。

途中には、ふれあい水槽という、アメフラシやネコザメなんかを直接触れる水槽があったので、寄ってみる。


「川上さん!ヌメヌメします!あ!なんかムラサキ色の液体が!!」

「鮫肌って、本当にザラザラしてます!」

「ヒトデって、意外に硬いんですね。」


普段触れる事のない、海の生き物に、岩崎さんは大はしゃぎで、俺も微笑ましく彼女を見ていた。


イルカショーの時間が近づいてきたので、イルカプールに行くと、係のお姉さんが、カッパを貸出てくれた。


「何故、雨ガッパが必要なんでしょう?」

「多分、ショーでイルカがジャンプした時に、飛沫が飛ぶから、服が濡れない様にじゃない?」


イルカショーを楽しんで、ショーの最後、クライマックスで、イルカ3頭が一斉にジャンプした際、派手に飛沫が飛び、俺も岩崎さんも頭からズブ濡れとなった。

「いや〜。やっぱり濡れちゃったねー。でも、すごい迫力だった。岩崎さを、大丈ぶっ!?」

急いで、係のお姉さんがバスタオルを持って来てくれたので、ありがたく受け取り、岩崎さんにも渡そうと、振り向いた所で固まる。


彼女が着ているのは、白ワンピース。

それが濡れた事で、肌に張り付き、淡いピンクのブラが透けてしまっていた。

俺は慌てて、「ゴメン!」と言いつつ、目を逸らす。

岩崎さんは、顔を赤くして俯きながら、「いえ…」と言っていた。

俺は、その時、俯いていた彼女の口元が、怪しく微笑んでいた事に、気が付かなかった。

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