第3話は?結婚!?なぜに!?下
相手が入院している病院に着き、受付に面会を申し込むと、暫く待つように言われた。
待合室で、ボーッとしていると、黒服にサングラスのガッチリした男が2人俺の前に立ち、「川上様ですね?お嬢様がお待ちです。こちらへ。」と案内された。
俺は、『は?お嬢様?え?マジ?』と思いながら、男の後に続いて、エレベーターに乗った。
エレベーターは最上階に留まり、特別室と書かれた部屋の前に案内された。
男が部屋の前で、「失礼します。」と、俺の服の上から、ぱんぱんとボディーチェックをしてから、部屋をノックすると、中からシックなメイド服を着た女性が出てきた。
メイドなんか、秋葉原にいる、所謂メイドさんしか見た事なかったが、こちらは本物のメイドさんのようだ。
メイドさんは、俺を見ると、「川上様、本日はお忙しい中、お運び頂きまして、ありがとうございます。私は、鈴奈様専属メイドの大庭と申します。どうぞ中へ。」と案内される。
部屋の中に入ると、白衣を着た女性と、ベットに座っている女性の2人だった。
ベットにいるのが、お嬢様なんだろう。
事故を起こした時にも見たが、正直気が動転していて、顔なんか覚えていなかった。
改めて見ると、目元がクリッとした、非常に可愛らしい女の子だった。
大庭さんから、「川上様、こちら、岩崎家ご令嬢の鈴奈(れいな)様です。鈴奈様、こちら川上様でございます。」
鈴奈さんは、俺の顔をポーっと見ると、段々と顔に朱が刺していき、ついには耳や顔まで真っ赤になった。
「は、は、初めまして、い、岩崎 鈴奈と申します。こ、こ、この度は、か、川上様のく、車の前に飛び出してしまい、誠に申し訳ございませんでした。が、川上様には、お怪我ありませんでしたでしょうか?」
「いえいえ、とんでもない。こちらこそ、初めまして。川上 裕二と申します。私は、車でしたから、特に怪我はありません。そちらこそ、お怪我の具合はどうですか?」
「は、はい、お陰様で。詳しくは、主治医からご説明致します。」
すると、白衣を着た女性が一歩前に出て、「主治医の狭間です。お嬢様は当初、転倒の際に、脳震盪を起こされていたご様子でしたが、脳波等に異常はありませんでした。また、お身体の方も、軽い打身程度でした。今日まで様子を見て、入院頂きましたが、問題なければ、明日にも退院いただけるでしょう。」
狭間先生の説明の間、鈴奈さんが俺のことを、顔を赤くして、超ガン見しているのが気になったが、怪我が大した事なくて、ホッとした。
「そうですか!良かった!こんなに美しい女性に一生モノの傷跡が残らないで、良かったです!!もし、そうなったら、責任取って結婚しなきゃ。あ、俺なんかじゃ、鈴奈さんに失礼か!はははは。」
雰囲気を和まそうと、軽い冗談のつもりだったのたが、鈴奈さんは、「け!け!結婚〜!ふきゅいう〜…。」と、更に赤くなり、心なしか、頭から湯気がでているような…?
お金持ちのお嬢様みたいだし、こうゆう冗談に免疫がないのだろう。
俺は、慌てて岩崎さんに謝った。
「い、岩崎さん、初対面で大変な事を申しました。申し訳ありませんでした。」
すると鈴奈さんは、少し悲しそうな顔したと思うと、「い、いえ。代わりに、コチラも少し不躾な事をお伺いしても、よろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ。」
…不躾って、何を聞かれるんだろう?
「川上様は、運命の人に出会う確率って、ご存知ですか?」
「いえ。存知上げません。不勉強で申し訳ない。」
「とんでもないです。これは、宇宙に知的生命体がいる確率を計算する計算式がございまして、それを応用して、運命の人に出会う確率を、計算した方がいらっしゃいます。」
「へぇ〜。そうなんですね。随分と夢のある計算をした方がいるんですね。因みに確率はどのぐらいなんです?」
「その方の計算では、0.00001%だそうです。」
「随分と低い確率なんですね。ま、その位じゃないと、運命の人とは言えないか。」
「ええ。でも私、今日運命の人に出会えました。」
「は?」
「か、川上様、現在お、お付き合いされている方は?」
「そんな人いませんねぇ。残念ながら。お恥ずかしい話しですが、彼女いない歴=年齢ですよ。」
こう答えると、岩崎さんは一瞬大輪の花が綻ぶ様な笑顔を浮かべたが、また、少し悲しそうな顔をしながら、「で、では、今、片想いされている方はいらっしゃいますか?」
「う〜ん。それもいませんねぇ。」
すると再び、大輪の花が綻ぶような笑みを浮かべて俺を見る。
「ほ!本当ですか!?良かったぁ!!」
何が良かったと言うのだろう?
「私、決めました!!か、川上様、わ、わ、私を貴方のお、お、お嫁さんにして下さい!!!」
ふ〜ん。この子が俺のお嫁さんねぇ…。
……ん?この子、今なんつった?
え?汚嫁?いや違う!お嫁さん!?
お嫁さんって、結婚相手、伴侶、神様に永遠の愛を誓っちゃう人の事?(ここ迄の思考0.2秒)
「はああああ?え?え?…本気で言ってます?」
「も、もちろん!わ、私は本気です!今日、川上様と言う、運命の方ど出会いました!!私は、この運命を信じます!!」
「いやいや!!ちょっと落ち着いて!!だってほぼ初対面ですよ!?しかも岩崎さんは、事故の被害者で、俺は加害者!恨まれこそすれ、いきなり、プロポーズされる意味が判らないですよ!!」
「そ、そんな!川上様!事故は川上様と出会うキッカケに過ぎません!!私は、あの事故で川上様と言う運命の方に出会ったのです!!私は一目貴方を見た時から、お慕いしてしまいました!!」
「岩崎さん…。俺は26ですよ?見たところ、貴女はまだ、高校生ですよね?」
「はい、高校3年生です。今は17ですが、半年後には、18になります。」
「ほら、俺とは9つ差があります。これから大学や、社会に出れば、俺より若くて、将来性のある男は沢山いますよ。今は、一目惚れの気持ちが強いですが、すぐに冷めて後悔するかも知れません。第一出会ったばかりで、お互いの事を何も知らないでしょう?」
「そんな…。どうしてもダメでしょうか?」
岩崎さんは、目に涙を溜めて、上目遣いに子犬の様な目で見つめてくる。
ウッ!そんな目で見られると、心がグラつく〜!
「まずは、お互いを知るために、お友達からって事でどうですか?」
すると、大庭さんから、「鈴奈様、僭越ながら私も川上様のおっしゃる通りかと。先ずは、お友達から初めてみては如何でしょう。」
「大庭…。判りました。川上様、先ずはお友達から、お願い致します。」
「判りました。」
「ささ、鈴奈様。川上様と連絡先の交換をしてみては?お互いお友達になられたのですから。」
「そうね。川上様、よろしいですか?」
「勿論ですよ。へぇ、お嬢様様もLi○eとかするんですね。」
「ええ。グループチャットとか、便利な機能が多いですから。こちらが私のIDです。」
「川上様、宜しければ、私もID交換をお願い致します。」
俺は、岩崎さん、大庭さんの2人とIDを交換した。
風俗嬢やキャバ嬢以外(どちらも営業用のID)の女性と初めてID交換して、感動してしまった。
草葉の陰から、親父やお袋も喜んでいるだろう。
早速2人に、Vtuberのスタンプを送ると、岩崎さんからは、カワイイクマのスタンプ、大庭さんからは、S○Oのアス○のスタンプが返信されてきた。
俺は、「暫くは暇なんで、いつでも気軽にメッセージ下さいね。」
すると、岩崎さんが「お仕事中とか、ご迷惑になりませんか?」と聞いてきた。
「あ、今仕事は、なんと言うか、暫く休みなんですよ。」と濁しておいた。
まさか事故を起こしたことで、会社と揉めてクビになりそうとは言えない。
岩崎さんは、なんだか納得していないような顔をしていたが、一応、「そうなんですね。判りました」と言ってくれた。
そして、「川上様、折角お友達になったのですから、もっと砕けた口調で大丈夫ですよ♪私の方が年下ですし。」
「そう?わかったよ。じゃあ、俺のことも様付けはなしで。岩崎さん、大庭さん、これから宜しく。」
「はい♪川上さん」
「私はメイドですので、このままで。川上様、よろしくお願致します。」
面会時間も終了に近づいていた為、あしたの退院の時に顔を出す約束をして、お暇する事にした。
俺はまだ知らなかった。
岩崎家のお嬢様が、どの程度のお嬢様なのか。
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