👴 短歌どろぼう 🖌

医師脳

はじめに 題名「短歌どろぼう」について一応の事情説明をする

 読売新聞の看板コラム『編集手帳』の6代目執筆者。

 竹内正明氏の著書『名文どろぼう』のカバー袖から――。


   名文どろぼう

 人の心を打つ名文を書くには、名文を盗むことから始めよう。

 当代随一の名文家が、小林秀雄からスティーヴン。キング、落語、六法全書まで、秘密のネタ帳から古今東西の「名文」を絶妙に引用して綴る人生の四季。

 名文の芳香に浸る至福のひととき。


 『名文どろぼう』竹内政明著(文春新書)にオマージュを捧げて『短歌どろぼう』と命名したい。

「人の心を打つ短歌を詠むには……」


     *


 福澤諭吉翁『福翁百話』の第20話から――。


   一夫一婦偕老同穴

 古来偕老同穴は人倫の至重なるものとして既に已に其習慣を成し、社会全体の組織も之に由りて整頓したることなれば、今俄に変動せんとするも容易に行はる可きに非ず。


 さて我が老夫婦で詠めば……。


  令和五年五月六日は金婚式そして現役医師たるを夫婦で祝はむ


  向き合ひて本読むうちにお互ひを空気のやうに忘れゐにけり


  秋晴れの彼岸の入りにゴマおはぎ食べつつ話題は来む金婚式


  大寒の盛岡の朝はアイスバーン転倒おそれて妻と手つなぐ


  豆乳に乾燥果実に寒天に…愛くはへしが妻の車厘(じぇりぃ)ぞ


  推敲し洒落きかせしつもりのエッセイも妻にはうけず寂しき朝餉


  ベランダの満艦飾なす洗濯に我ら夫婦の幸せのみゆ


  秋晴れのベランダに餃子を包みつつ「敬老の日だね」と夫婦で笑み交はす


  干し柿の出来ぐあひ如何と試食して妻は笑顔に上々ならむ


  夕食で「今日はいい夫婦の日だって」と自分のカキフライ二個妻は別け呉る


  妻が言ふ「あなたもがんばって!」に団塊世代われの競争心むらむらと湧く


  秋の宵「夫婦は二世」との言知りて妻の横顔そつと見るなり

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