一日一首(令和四年七月)
晴れ間にと収穫したるズッキーニ。チャンプルー風に楽しくいただく
老健から介護医療院への転勤に「これを最後」と本など移動す
真夏日に生(お)ひ立ちにける蟷螂のイチイの木にて鎌ふりたてをり
初日から介護医療院は多忙にて脳(あたま)も疲れて無口になりゆく
雷雨やみ蒸し暑さます夏の夕、エアコン無しでは短歌も詠めぬ
金曜の午後に決りし勉強会。スタッフ向けの資料を準備す
七夕の短冊に書きし誓ひなる「拘束ゼロ」を必ず果たさむ
七夕の願いもむなしく今日付けの退職届で落着させたり
“小暑(せうしよ)”なれど気温あがらず風つよく作務衣に着替へてズッキーニを採る
雨止みてネットに広がるゴーヤーが黄色き小花を咲かせ始めぬ
夕食後に水やりせむと庭へ出で妻と語らふ宵闇のなか
拘束具を咬み切らむとさへする老いゐるに応へられざり無念の辞表
世話になりし職場の仲間に本などを「形見分けだ」と作り笑ひで
離職にて健康保険の切れぬ間に夫婦そろひてデンタルケアへ
とりあへず医者人生の中締めと職場をあとにす 岩木山笑む
大勢の作業員らが雨のなか草刈り機唸らせ虎刈りにせり
雨あがりねぷたばやしの稽古ならむ調子はづれの笛もまざりて
何生(な)るかと見つけし種を植ゑたるにその種は以前食べし西瓜らし
妻とふたり健康保険と年金の手続きのため市役所に来ぬ
聞きなれぬ「ケモブレイン」といふ言葉。治療がボケをさそふとは、ああ
強き陽もゴーヤーが簾とさへぎりてベランダ・カフェにほどよき風あり
昼食後の食器洗ひは我が役目「ありがとうね」と妻は微笑む
梅雨寒に小田嶋隆氏の訃報うけ著書『コラム道』を読みて追悼す
小指より小さき二本のゴーヤーなりいぼいぼそろひ食べごろの態(てい)
静岡の義姉より届きし鰻にて二日のほどを暑気払ひせむ
この度の『医の倫理綱領』の改訂にその趣旨いづこと深読みしてをり
梅雨あけの夏陽をあびてたくましく苦瓜二本ぶら下がりをる
夕餉すませ散歩に出かけし老い二人いつしか歩幅が広がる不思議
新しき健康保険証の届きけり世話にならぬやうにと財布にしまふ
「虚構だ」とあへて断る掌編もいづれは老いの愚痴と言はれむ
午前中の執筆でつかれし脳細胞も昼餉と昼寝で蘇りけり
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