一日一首(令和四年八月)
小気味よき驟雨で始まる葉月なり庭の生命(いのち)ら息吹きかへす
強き雨にスノーボールの茎たわみ耐へしのぶさまむしろ麗し
雷ひかりとどろきわたる大太鼓。神々きそふねぷた囃子か
一日おきに食卓へのぼるズッキーニひと株なれど地を長く這ふ
パーゴラよりトロピカルな甘き香ただよへりゴーヤーの可憐な黄花そよぎて
ズッキーニの勢ひに押され三株のオクラはやうやう一本みのる
オクラの苗三株育てしが実りしは一本のみなりそれも遅れて
ねぷたの共(むた)津軽の夏は終りなり小雨そぼ降る今日は立秋
他人事と読みゆく『〆切本』の可笑しみに惹かれていつしか涙さそはる
仏壇の富良野メロンの香りたち「いただきます」と破顔で妻は
岩木川の洪水警戒レベル5! リンゴ園浸水の悪夢がよぎる
朝鮮半島から串団子のやうな雨雲は青森を目がけ突き刺さりたり
雨雲が朝鮮半島から串団子の形に伸びて青森を襲ふ
手水鉢の〈吾唯足(るを)知(る)〉とふ文字は止まぬ豪雨にもじっと耐へをり
渡部昇一氏の〈知的余生〉に倣はむと雨の日は書斎で過ごす掃除のあとに
青森の「短命県返上キャンペーン」に〈命の格差〉ぞ見え隠れせる
迎へ火を上手く着けむと苦労せしに早も今宵は送り火を焚かむ
夢うつつに浮かびしフレーズを使はむと夜中に起き出づ無職の気楽さに
精神科医中井氏逝かれその回向にと〈病院ダム論〉を読みかへしをり
牢固たる〈癌もどき説〉を唱へたる近藤誠氏心不全にて急逝
スマートホンにヘリ墜落の報入り南三陸での支援がよぎる
『明鏡』の編集者氏に捻子まかれ医師の募集をネットに探す
感謝状に南三陸町長の笑顔を想ふ。ピグマリオン効果も
近隣の再開発の進みゆきこの年末には街うまるるか
一台の重機にあつさり廃屋は潰れしがあまたの思ひ出かへる
酷暑さり涼風わたる我が庭は秋明菊さき処暑のさまなり
西行法師願ひどほりに春に死す密かに断食を重ねし果(はて)か
つれづれに一日一話を書き継ぎてブログに残さむ日記の代はりに
土居健郎氏の『「甘え」の構造』を読み出すもバイクマシンの脚はまわらず
意外にも花壇の縁にアスパラガス、畑へ移植し来年を待つ
ブログにもランキングあり気にせぬと思えど気になる団塊世代は
縦書きにブログの表示を整へしデジタル歌集は『時をただよふ』
「甘やかし」と「甘ったれ」との蔓延に「甘え」の心性きえさりたるらし
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