一日一首(令和四年六月)
蛇苺の赤き小さな実をよけて踏み石の端にそつと足おく
コロナ禍の老い二人には生協の食品宅配もライフラインか
エッセイを医師会報に書き続けいずれ纏めむ『爺医の繰り言』
枯れし庭木いつしか蟻の巣窟なり大鋸で引き漸う駆逐す
ひつそりと木陰でいぢけし紫陽花を濡縁わきへいざ移植せむ
週末のガーデニングの名残かと足腰さすりて職場へむかふ
父の日にとパッションフルーツ到来し一匙ごとの話題は子どもら
久しぶりに夏陽浴ぶれば心地よくセロトニン増し深き眠りも
半月まへ戯れに植ゑしキタアカリが立派に芽を出し縮れ葉さへ生(は)ゆ
『社会的共通資本』の医療なるにもはや破綻のあるを憂ふも
高枝を剪定せむと太枝用鋏もつ両腕に渾身の力を
枯木を伐り強き陽射しに曝さるる五株の万年青は日陰へ移す
薄紅と白ハナミズキの連なれる津軽の「街道」をタクシーにて通ふ
つがる市に梅雨のなければ残雪の岩木山を愛でむ地吹雪忘れて
庭縁に赤白ロゼのアスチルベ雨曇りのなか咲ききそひゐる
松の木を妻は小まめに剪定し我は生垣を大ばさみにて
蔵書あふれ新たに本棚作りしに書斎を背表紙の壁になすはめに
『桃太郎』も芥川龍之介の手になれば心証かはりて「理不尽」とさへ
梅雨なれば書斎のエアコンを除湿にして今日「父の日」は蔵書を整理す
ふるさとへ戻りて一年、町内会のねぷた運行にいくらか寄付せむ
帰郷一年の記念日なれば丹精を込めし庭にて思ひ出かたり合ふ
名を呼べば酸素は邪魔だと首を振る媼は最期に何を思ふか
夏至すぎてズッキーニはいま黄花咲き食卓へ上る日の近からむ
太陽の余命を聞けば人の世のなんと短く切なくもあり
ジャンボヒマワリ本葉出づれば「地植えしよう」と妻は指図し吾は穴を掘る
朝陽あび苦瓜の蔓は手のごとく掴みてネットを攀じ登りけり
梅雨うけて庭に薄紫(はくし)のあやめ咲き編目模様が雨粒にゆがむ
ジャガイモを半分に割り植ゑたるに二株として花咲かせたり
プランターの赤き小かぶを一つ抜き夫婦で半分づつ食ふは喜び
震災後の石巻市民に尽くされし医師・長純一先生おしや逝去さる
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