一日一首(令和元年十月)
あしひきのやまとなでしこその半ばが五十歳越ゆとふ 十年後はいかに
日本は五人に一人が古希すぎてあの世で杜甫も苦笑しをらむ
死に場所を選ぶことさへ難き今 在宅ケアの体制急げ
選挙すみて高笑ひする代議士ら我ら愚民の憂ひ残して
こんな世にしてしまひしは誰のせい 億分の一の責任おはむ
「プロポーズされました」とふ末むすめ スマホの声の高さこころよし
ふりむけば盛岡弁の話し手は着物姿の碧い目の女
施薬院や悲田院などには僧医をりき われ爺医は看取る老健に侍りて
いつの日かみな一軒家だけの国にならば観る価値失ふこの人気番組
あなうれし日本人にまたノーベル賞 生年月日われと同じ人
日本人は二千人まで減るらしも三十世紀の地球や如何に
条例にて‘たばこ自販機’を撤去させし深浦町の健康志向よし
台風の去りて自前のカフェにて妻と肩ならべ読書するなり
『無医村に花は微笑む』の著者である将基面誠氏も婦人科医なり
村長のエピファニーここに:『民をして病ましむべからず、これ政』とぞ
神無月に〈老子〉を読みて道(タウ)の見ゆ天網恢恢疎にして漏らさず
辞書ひけば例文の見ゆ「起きる」の件「事件が起きる」「奇跡が起きる」
辞書にさへ誤りただす師の言に人間味あふると憧れてもをり
かねてよりナース言葉は難解で、リヒカ(離被架)アッキン(圧布)も日本語なりき
老醜も「老いの美学」と言ひたるは筒井康隆著〈筆力鼎を扛(あ)ぐ〉
推敲し洒落きかせしつもりのエッセイも妻にはうけず寂しき朝餉
パソコンは言はば外付け補助脳なり老医師われの頭脳の杖なり
みちのくの鞍掛山は錦秋なり〈即位礼〉の今日はおにぎりも旨し
望外の会長賞はありがたし さらに励めかそろそろ退(の)けか
臘梅が冬至に咲きぬ 二十年前東京にて惚れいま盛岡にて果たす
梅咲けば台湾からの絆見ゆ南三陸病院の庭に
妻留守の家居にひびく「ご飯できました」「お風呂わきました」と電子嬢の声
妻留守で冷蔵庫内は閑散たり外食にせむ十月の夜
妻もどり冷蔵庫内もにぎやかで津軽の珍味ならぶ夕餉ぞ
あまた花を携へ妻が津軽より戻りきてベランダが一気に華やぐ
三年(みとせ)すぎ施設長とて里こひし終の友には津軽富士ほし
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます