一日一首(令和元年十一月)

滝沢の巨大タンクをながめつつ退職どき思案の四度目の十一月


〈レ〉をあげて「朝礼」といふ南部弁チョット気になる津軽衆われ


錦秋の鞍掛山の頂きにてスマホに撮らむ岩手山せまる


鞍掛山(くらかけ)は高さ八百九十七米 登りきりしが下山が問題


〈ものぐさ〉へ一日一首と詠みつづけ「老医」とわれ詠まれし十月目の幸


介護にも〈多様性〉では済まされぬ矢鱈とクレームつける人も居る


胃瘻の婆「おらさもまま」と言ひてのち無言に食しぬ茶碗八割


三年日記の3冊終了さて次は五年日記で喜寿を目指さむ


ポイントは〈下山〉にありと悟達して鞍掛山に人生を見る


朝市でもとめし柿に陽がそそぐ 岩手山頂の雪も消えむか


ゆるやかに車両基地から登りきて本線へ入る‘はやて・こまち’見き


ゆつくりと本線に発露する〈はやて〉見て安産のごと朝日ぞ祝ふ


「人生は歳の二乗で過ぎてゆく」森毅氏の言を今に肯ふ


月曜は〈モリオカNOW〉の掲載日。休刊ならばブルーマンデー


専門家にキンドル版はありがたし高価で重き原書に悩まぬ


孫悟空の乗りしとふ〈きんとうん〉は何ならむ 百寿にならば吾も乗れるやも


百歳を超えて生きむと求めしは「The 100-Year Life」のキンドル版なり


〈独楽吟〉とて橘曙覧を真似せしが「たのしみ」がとても52に及ばぬ


たのしみは朝おき出でて〈タイムズ〉に「モリオカNOW」の載るを見ること


たのしみは似非歌どもが添削で心にかなふ歌になるとき


たのしみは車両基地より本線へ〈はやて〉の現るるに立ち会へるとき


たのしみは温きふとんにくるまりて朝餉のかをりに目覚めたるとき


たのしみは早暁の市にて買ひあさり妻われ双手(もろて)に持ちかへるとき


たのしみは蜂屋柿買ひ皮むきて冬の陽に当て吊り下ぐるとき


たのしみは慌しくも朝食後チョコをつまみて珈琲のむとき


たのしみは常なら難き車庫入れを一発で決め「よし!」と言ふとき


たのしみは利用者の来ぬリハ室でマシーン踏みつつ歌つくる


たのしみは診察室でかはしたる老いが会話のかみあひしとき


たのしみは毎朝いるる珈琲に「おいしいね」と言ひて妻が笑むとき


冬の夕 大正生まれがまたひとり「だいじょぶだぁ」の笑み遺し逝く

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