第18話 告白の真実
「お願いします」
「うーん、そう言われても…」
目の前には、銀髪美少女の先輩の深谷先輩が俺に頭を下げてお願いをしてきている。
何も知らない人からしてみれば、こんな可愛い子が頼んでんだから聞き入れやれ。とか言われそうなシュチュエーションだし
…一部の銀髪好きの人から物凄く羨ましがられることだろう。銀髪美少女の後輩属性の先輩に頭を下げられお願いされるとか…。
でもでも…。
俺は一生懸命に頼む深谷先輩を尻目にほんの数分前のことを思い出していた。本当になんでこんなことになったのやら。
*
「すみません、待たせてしまいましたか?」
「いえ、待ってないです。私が頼んだことですので」
「そうですか」
深谷先輩に急遽体育館裏に呼び出された俺は、少し戸惑いつつも先に待っていた深谷先輩に声をかけた。
「それで…話ってなんですか?」
「はい。今からそれを言うです。…スゥ ハー。スゥ ハー。落ち着きましたです」
「そんなに緊張するようなものなんですか?」
「ええ、一世一代の物ですから」
「えっ!?」
頰を少し赤らめながら秘密を打ち明けようとするかのような深谷先輩の態度に戸惑う。
まるで、恋をする乙女の様な表情にこちらもつい顔が少し赤くなる。
まさか告白でもされるんじゃないだろうか?
いやいや、それはないだろう。
「どうしたんです? 急に首を振って?」
「えっ、あっいや、お気になさらず」
深谷先輩にそう返しつつも、僕の中では天使と悪魔によるやり取りが起こっていた。
天使『出会ったばかりなのにそんなことあるのかな?』
悪魔『一目惚れという可能性も捨てきれねぇぞ? それに、あの表情見てみろよ。完全に恋する乙女の表情だろうが』
やはりそうなのだろうか?告白されるのだろうか?
天使『うーん』
悪魔『なんだ? まだ、納得行かないのか?』
天使『いや…おかしくない?』
悪魔『何がだ?』
天使『
悪魔『……確かに』
グサッ 俺の心に99のダメージ、残りのHP1。
天使『だって、こいつ勉強してるのにもか関わらずずっとバカだよ? それに、顔だって雑誌で表紙取れる顔じゃないし』
悪魔『おおっ、それちょっと分かるぞ。裏から5ページ目くらいでひっそりと載ってそうな顔だよな』
天使『だよね!だよね! 全くオシャレしてないせいなのか、何というかモブより若干カッコいい程度の顔だし。むしろ、モブ顔が主人公だったり、モブ顔なのにオシャレするとカッコいい系のラブコメとかあるのに…微妙にモブ顔だけどほんの少しだけカッコいいから…何というか、1番モブっぽいというか?』
俺の心に999のダメージ。俺のライフはもうゼロだ。
天使『それに、性格もバカさを隠そうとしてて見てて無様だし…足臭そうだし』
お前、天使なんだよな? 俺からするとお前の方がよっぽど悪魔なんですが?あと、偏見やめい。
ということで脳内会議をしたらライフが削られるだけなので現実へと戻って来る。
「何なんですか!? そんな、今にも倒れそうな顔して」
「いいから、続けてください」
「大丈夫です!? これで話しかけても『返事がない。ただの屍のようだ』しか返ってこない雰囲気を感じるんですが!?」
「だい…じょうぶです」
「分かりました。実はですね」
「はい」
深谷先輩が真剣な顔つきでこちらを見つめくる。そして、真っ赤に染めた顔を必死にあげながらなんとか声を上げた。
「______て欲しいんです」
「なんて言いました?」
「書かせて欲しいんです」
「何をですか?」
「鳥田君とヨウ君をモデルとしたBL小説を書かせて欲しいんです!!!!!!」
深谷先輩から出たのは、俺には全く予想できなかった告白だった。
「ええっと、どういうことなんでしょうか?」
とりあえず、全く意味が分からないので尋ねてみることにする。
「そのまんまの意味です。鳥田君とヨウ君を元としたBLラブコメを書かせて欲しいんです。もし、良ければ賞とかにも応募させて欲しいんです」
「えっ!? あの、いや」
「私はピンと来たのです。鳥田君と出会ったあの日…鳥田君がヨウ君を電柱に縛りつける姿を見て…」
「…なんですか?」
嫌な予感しかしないが一応尋ねてみることにする。
「これは…縛りプレイです…と」
「発想の飛躍が凄い!」
「そして、私が邪魔にならないように隠れて観察していると…」
「あの時、妙に視線を感じると思ったら先輩でしたか」
「なんと、ヨウ君を電柱に縛りつけたまま、泡瀬さんと学校に向かう鳥田君の姿が…」
「それでなんて思ったんですか?」
もう、嫌な答えしか返ってこないのは分かっているが一応尋ねてみる。
「これは…放置プレイです…と」
「もう、思考についていけませんよ!!」
この人若干怖いんですが!?
「そして、私のタイプを聞いた質問に対しての鳥田君の「僕は、特に見た目とか外見とか気にしないですね」という答えを聞き確信しました。…鳥田君は、「性別なんて関係ない」と言っている…と」
「そこまで言ってないんですけど!?」
大分、飛躍されてた。
「そして、私の中にインスピレーションが流れこんで来たんです」
「あぁ」
「BLの神様が私にこの2人の物語に書けと囁いているんです」
「そんな神様が…」
*
というわけで現在に至る。本当に何故こうなった?
「だから、お願いです。嫌なら嫌で構いませんが…私は書きたいんです」
そう言い頭を再び下げる深谷先輩。
「ちょっと、頭なんて下げなくていいですから!」
「そうですか?」
俺が慌てると深谷先輩が顔をあげる。
「だから」
「鳥田!?」
「うん、なんか今声が?」
しかも、泡瀬っぽい声だった気がするが…でも、深谷先輩も気づいてないみたいだし。
「いや、気のせいかな? で、深谷先輩続けてください」
「はいです」
そして、再び真剣なオーラを出す深谷先輩。
「(鳥田君とヨウ君の関係に)一目惚れだったんです。大好きなんです。お願いします」
そう言って、また頭を下げる深谷先輩。
「先輩、先輩、顔を上げてください」
また、慌てて深谷先輩の頭を上げさせる。
とにかく、深谷先輩の気持ちは分かった。
先輩は、とても真剣な表情をしているし出来れば応えてあげたい。
俺とヨウが…と考えると少し気持ち悪くなってくるかそこは俺が我慢すればいい。
だが、問題はヨウだ。ヨウへの相談なしにこの件を承諾することは出来ない。ヨウと話し合う時間がいるな。
「気持ちは分かりました。…でも、少し考えさせて欲しいんです。先輩の真剣な気持ちには、真剣に答えたい」
「わ、分かりました。私、鳥田君の返事待ってますね?」
そう言って少しはにかむ深谷先輩。あとはヨウ次第だな。俺はそんなことを考えながら、先輩の笑顔を眺めるのだった。
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
深谷先輩は、ヒロインではありませんでした。主人公とヨウ君を推している人。ってことです。
この話を気に泡瀬さんが主人公を意識し始めるので、重要な人物でもあります。
泡瀬さんは、事情を知らないので誤解したままですけど。
ということで銀髪で後輩属性で少し腐っている美少女の深谷先輩大暴れでした!!
キャラが濃い!!!!
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