第2話 バカバカしい、俺帰るぞ。
「何があった? 話くらいなら聞いてやるぞ?」
「…いいの?」
泡瀬は腫れた目元を隠しながら聞いてくる。
普段の泡瀬の行動を考えれば異常だった。
俺に、自分の困ってることの話をしてくるなんて。だからこそ、今の泡瀬がどれほど弱っているか見て取れた。
「ここだと先生に見つかっちゃうかもしれないから場所を変えないか?」
「うん」
ということで俺たちは学校にある武道館前まで移動することにした。武道館は特に泥棒目当てで入ってくる人もいないほど古びていて、先生も見回りをしない場所だと勝手に学校で肝試しをしたことがあるヨウから聞いていた。
着くと、大まかな事情を泡瀬はポツポツと話始めた。
「私ね、今日3人くらいの女子に呼び出されたの」
「うん」
「「お前は生意気だ。私の翔ちゃんを奪いやがって」ってその内の1人に言われて水を髪にかけられたの。今も少し寒い」
そう言われて泡瀬の髪を見てみると確かに水気がある。 まだ、春だし寒いだろうな。
「あぁ」
何というか、普通にありえる話だった。
泡瀬は俺に対する性格こそあんなだが、髪はサラっと腰まで伸びた美しい黒髪。顔立ちも整っており特に目はパチっと開いた幻想的な水色で目立っている。それに、出ているところはでていて______ってこの話はしない方がいいな。
軽蔑の視線を浴びそうだ。まぁ、本人は女子とも良好な関係を気づいており俺以外には人当たりが良かったためこんなことはなかったみたいだけど。それでも、嫉妬をしてくる奴らはいたと言うことだろう。
当たり前の話だ。誰からも好かれる完璧美少女なんているわけないんだから。いたら、むしろホラーだと思うね。
「そ、それでね、私は心辺りなんてないのに「泥棒猫」だの、「ぶりっ子」とか罵られてね」
「今、俺は俺が女に生まれなくて良かったと思ってるよ」
「ひど、本当に鳥田は」
あまりに辛そうだったのでおどけてみると少しだけいつもの調子を取り戻した。そして、
少しは落ち着いたのか再びゆっくり話始める。
「それでね、今日学校で1日過ごしてしたら許してあげるけど…しなかったら、明日から「泡瀬さんはビッチで八方美人で私の翔ちゃんを奪った」ってみんなに触れ回って私をいじめるって」
「あぁ、なるほど」
「だから、私は今日は学校で過ごさなきゃいけないの。私だってこんなの変だって分かってる…けど従うしかないの」
そう言って泡瀬は下を向く。本当に泡瀬らしくないなぁ。一応理由を聞いた俺だったが…無駄だったな。時間の損だ。
「はぁ、バカバカしい。俺帰るぞ?」
「え?」
俺がそう吐き捨てて帰ろうとすると、泡瀬は驚いた顔をする。俺が慰めるとでも思ったのか? 俺はお前のライバルだぞ? やはり、今日の泡瀬は冷静じゃない。
「何だ? 俺がお前を慰めるとでも思ったか?」
「!!」
泡瀬は自分の異常さに気づいたようだ。普段の泡瀬からは想像できない行動だらけで疲れるな。しかし、それはそうと…。
「何やってんだ泡瀬? 帰らないのか?」
「!? 話聞いてた?」
泡瀬が心底驚いた顔をする。俺、変なこと言ったか?
「あぁ、聞いてたよ? 帰ると明日からいじめられるんだろ?」
「そうだよ。だから私は帰れないの」
「何言ってんの? ほら、帰るぞ。さすがに一応女子を1人で帰らさせるわけにはいかないから送っててやるから」
「一応じゃなくて女子なんですが!? ってか、どういうこと!? 話聞いててそれなら異常だよ?」
さっきから泡瀬は何を言ってるのやら。
「なぁ、泡瀬」
「何よ」
「お前さ、本当にそいつらがお前が帰らなかったらもういじめてこないと思ってるのか? お前に水かけてくるようなぶっ飛んだやつらだぞ?」
「あっ」
気がついたようで泡瀬はすっとんきょうな声を上げる。
「しっかりしてくれよ、泡瀬。そんなんじゃ学年一番の奪取なんて簡単だぞ? 俺としてはラッキーだけど。そんな奴らがさぁ、止める訳ないだろ? むしろ調子に乗ってヒートアップする可能性だってある」
「そんなのどうしたら…」
「いいんだよ、放っておけば。無視してやればいい。呼び出されても行かなきゃいい」
「でも、そんなことしたらみんなにデマが出回って私はみんなから無視されるんじゃ」
「冷静に考えろ。お前の周りの奴らはそんな話を信じるような奴らなのかよ。お前が積み重ねてきたものはそんな簡単に壊れる脆いものなのか?」
「っっ!! それは…でも」
そうは言っても怖いんだろうな。いくら心が許しあえる友人だって心の中までは分からない。だから、少しでも可能性があるから怖いんだろう。
「まあ、万が一そんなことになったら」
「なったら?」
「俺のこのセリフの責任だから、俺が責任持ってお前を守ってやるよ。まぁ、ねえとは思うけど」
「っ//〜!? 何でそんなこと」
耳が赤く染まっていく泡瀬。俺なんか変なこと言ったか?
「だから言ってんじゃん。俺の言葉の責任だって。あとは、学年1位様の弱みをきせずして握っちゃたから、その罪滅ぼし的な?」
「でも具体的にどうするの?」
「頑張る」
「学年2位とは思えないほど単純だね」
「でも、代わりに絶対にお前を1人にさせないって約束するよ。信じる奴がいても俺が証拠を集めてねじ伏せてやる」
「だから、どうしてそこまで」
「まあ、借りを作れるからってことにしておいて」
まぁ実際の所、俺が万全の泡瀬に勝ちたいからだがな。
「借りってどうしたら返したらいいの?」
「うーん」
しまった。そこまで考えてなかった。
「まぁ、泡瀬の勉強法を教えてくれたらいいよ? それを使って泡瀬に勝ち続けるから」
「対価と見合ってないけど、そんなんでいいの?」
「いいの。いいの」
俺としては、全力の泡瀬を叩きのめしたいだけなので気にする必要なんてないのだ。
「さっ、分かったろ? 帰るぞ? 送ってってやるから」
これで1人で帰らせて襲われたりでもしたら、困るしな。
「う、うん。分かった」
「?」
何だ? やけに従順だな。「まさか、途中で襲いかかってくるじゃ」とか普段なら言いそうなのに。やっぱり相当疲れてるな?
「あっ、ちょっと寄りたい所あるんだ。5分くらい寄り道してもいいか?」
「それくらい全然いいけど」
学校を出て時間を見ると時計は9時を示していた。なるべく寄り道を早く済ませて帰りたい所だ。
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
主人公が寄りたい所とは?
次回 忘れてた、俺達犬猿の仲なのにいっしょに帰るだなんて…気まずい。
気まずい下校イベント発生です。(笑)
良ければ応援と星をポチッとお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます