第66話 開戦

 アスカさんとサクラちゃんの活躍でモンスターを全滅し、大きな扉の前にたどり着いた。

 一目見て分かる、ここに魔王がいるのだろう。


「ここに……魔王が……」

「はい……この部屋から凶悪な力を感じます……」

 ガイドも緊張している。無理もない、精霊界をメチャクチャにした魔王がここにいるのだ。


「ここからは木本君に頼るしかないからな……頼むぞ」

「はい……」

 アスカさんが僕の肩に手をのせる。


「これまでのトレーニングを思い出すんだ。木本君は限界までレベルアップしてきた、必ず魔王にも通用する!

 いざとなったら私が盾になってやる! 魔王を倒さないとこの世界はお終いなんだ!」

「はい。責任重大ですね……」


「アンタが倒し損ねたら私が倒してやるわ!」

「うん……サポート頼むよ」

 言葉とは裏腹に緊張感が隠せていないサクラちゃん。




 僕らは扉を開き、魔王の部屋に入る。

 青白く光る空間が広がる。

 奥には人影が。


「キモオタ君、久しぶり、いや、はじめましてかな?」

 間違いない。魔王だ。

 人間より少し大きい背丈、黒いローブを纏い黒いオーラをまき散らしている。分身とは違う禍々しさ。

 これが魔王なのだろう。


「前回は私の分身だったからね。こうして会えてうれしいよ」

「くっ……」

 魔王の声に思わず身構える。


「分身とはいえあそこまで戦える人間がいるのは驚いたよ。君は間違いなく世界最強だろう。

 君を倒せはこの世界を滅ぼすのはすぐだろう。この世界を滅ぼした後は、昔、滅ぼし損ねた精霊界にもいかねば」


 魔王は僕に向かって歩き出す。

「さあ、始めようか……!」


 魔王は僕に詰め寄る。

「30年ぶりに回復した体だ。ウォーミングアップになるくらいは付き合ってくれよ?」

「みんな……離れてください……!」


 魔王の手が振り下ろされる。鋭くとがったドラゴンのような爪だ。

 僕は剣を抜き、爪を受け止める。


『キィィイン』

「なに……!?」

 今までのすべてをぶつけるんだ!


「うおぉぉおお!」

 僕の斬撃に魔王は後ろに飛び避ける。


「ふふ……分身と戦ったときよりだいぶ成長しているようだな……!」

 魔王の黒いローブが宙に舞う。僕の剣は魔王のローブを切り裂いた。


「ああ、あの頃とは違う!」

 ネクロマンサーと戦ってからバーチャルモンスターと戦い続けた。

 今の僕の戦闘スキルは魔王にも通用するようだ!


「ふふふ、ウォーミングアップにはなりそうだな……」


 世界の存続をかけた戦いはこうして静かに始まった。

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