第49話 キモオタ、入院
「おい! 木本君! 大丈夫か!?」
「うぅ……ここは……?」
アスカさんの声、僕は病院で目を覚ました。全身が包帯だらけ。
ガイドがアスカさんに連絡し、運んでくれたようだ。
「よかったです! キモオタ君……」
枕元で涙ぐむガイド。
「ガイドから話は聞いたよ。まさか魔王が現れるとはな……」
「はい……まあ魔王といっても分身だったみたいですけどね。力も本物の半分くらいと……」
「……半分でこれか……」
僕のボロボロの体をみてアスカさんは絶望する。
「木本君は間違いなくこの世界でも有数のレベルだ。それでもここまでやられてしまうか……」
「……」
「ま、まあ、なにはともあれ、無事でよかったよ。今日は念のため入院するといい」
「……はい……」
魔王の炎に焼かれた全身が痛むがひとまず命拾いをしたようだ。
あれが魔王か……恐ろしいな……
夜の病院。
「キモオタ君、傷は大丈夫ですか?」
僕と契約しているガイドは僕から離れることは出来ない。一緒に病室だ。
「うん、ガイド連絡してくれたおかげで助かったよ」
「いえ私一人じゃキモオタ君を運べませんから……それにしても、魔王は強かったですね……」
「……」
もちろん、魔王が弱いわけなどないと分かっていた。
でもあそこまで強いとは。
ネクロマンサーを倒したくらいで浮かれていた。
今の僕では何度やっても勝てないだろう。
「ま、またレベルアップ頑張りましょうね……!」
「……僕じゃ無理だよ。半分の力の魔王にこんなやられたんだ。勝てるわけないでしょ……」
「キモオタ君……」
「ガイドだって見ただろ? 人間に魔王なんて倒せるわけないんだよ……」
「そんな……キモオタ君なら倒せますよ!」
「魔王なんて天災みたいなもんじゃないか。僕が多少強くなったって敵うわけないよ。
もう残りの人生、田舎にでも移り住んでスローライフを……」
『ガラガラ』
病室の扉が開く。
「情けないわね!」
「え!?」
「サ、サクラちゃん……!?」
「……誰がサクラちゃんよ……」
夜更けの病室にいきなり現れたサクラちゃん。
呪いが解けたばかりの彼女もまだこの病院に入院していた。
「一回やられたくらいで何メソメソしてるのよ! なにがスローライフよ!」
「うぅ……」
「もういいわよ! 私とお姉ちゃんで魔王は倒すわ!」
「……」
「ガッカリしたわよ……」
「え?」
「お姉ちゃんはアンタのこと、キモいけど世界を救う男だって言ってたのに……」
「アスカさんが!?」
「……キモいけど勇気のある男だって言ってたのに」
「……キモいけどって……」
「私は元々アイドルじゃなくて、冒険者になりたっかたのよ! それが気づけば可愛すぎてアイドルになっちゃって……」
「うむ、納得の可愛さですね」
「……と、とにかくね! アンタみたいにせっかく強くて冒険者になれたのにウジウジしてるやつはムカつくのよ! もう知らないわ!」
「……」
サクラちゃんは勢いよく扉を閉めて出ていった。
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