第48話 魔王の分身

『ククク……はじめまして』

 魔王はうっすらと透けている?


『ネクロマンサーがやられたと連絡をうけて一度挨拶をしたくてな。おや、精霊も? なるほど、どおりで人間ごときがここまで強くなれたわけだ』


「くっ!」

 僕は剣を構える。


「ダ、ダメです! キモオタ君……逃げましょう!」

 ガイドは恐怖で固まっている。自分の世界を滅ぼしかけた魔王が目の前にいるのだ。仕方ない。


「お、お前を……お前さえ倒せば……!」

 僕は魔王に斬りかかる。


『キンッ』


「な、なに……」

『ククク、いきなり物騒だな』

 魔王は僕の剣を指先受け止める。


『慌てるな。まだ本調子ではない、この体は分身だ。倒しても意味はない』

「分身!? それで透けてるのか……」

『この体は本来の私の力のせいぜい半分くらいだろう。

 まあでも、やっと治ってきた体だからな。すこし力を試させてもらうか』


 魔王は手をかざす。黒い炎が僕らを襲う。

「くっ……」

 僕は光魔法で炎を受け止める。すごい魔力だ。

 一撃防ぐだけで魔力の消費が激しい……


「はぁはぁ……これで半分だと……!?」

 分身で半分の力だという魔王の魔法、その力はネクロマンサーとは比べ物にならない力だった。


『おお、光魔法。ネクロマンサーがやられるわけだ……これは挨拶だけとはいかないようだな』


「くそ……強い……」

「キモオタ君……逃げましょう……」

『逃がさん! ザコかと思ってたが、人間とは言え危険な芽は摘んでおかないといかんな』

 魔王は手に魔力を集める。


「キモオタ君!」

「ガイド! 離れてろ!」


 僕は剣を再び構える。

 ネクロマンサーを倒した必殺技、キモオタ・ストラッシュしかない!

 光魔法を使い魔法剣に。これでダメならヤバいぞ……


『ほう、魔法剣か』

 僕は魔王が炎を放つと同時に飛び掛かる。


 くそ……多少食らうのは仕方ないか……

「ぐわぁぁぁああ!」

「キモオタ君!!」


 僕の体に魔王の炎がまとわりつく。味わったことのない衝撃だ。

「ううぅ……うわぁぁあ!」

『むっ!?』

 僕は最後の力を使い、魔王の炎に焼かれながら僕は剣を振り下ろす。


 キモオタ・ストラッシュ!


『ザンッ!』


 僕の剣は魔王の体を真っ二つに切り裂く。


「やった……キモオタ君!」

『素晴らしい。まさか人間にここまでやられるとは』

「はぁはぁ……うぅ……」

 魔王の体が砂のように崩れ落ち、まとわりついていた黒い炎は消えた。


『ククク、残念だが分身の体では君には勝てないようだ。

 もう少し待っててくれ、あと2か月もすれば完全回復する。

 その時はお前を殺してこの世界を滅ぼす。その次は貴様らの世界だ!』

 魔王はガイドを指さす。


『キモオタか……忘れんぞ!』

 魔王の分身は消滅した。


「キモオタ君!」

 ガイドが僕に駆け寄る。


「ガ、ガイド……やったよ……うぅ」

 魔王の炎に焼かれた体に激痛が走る。

 僕はそのまま気を失った。

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