第10話撃破
「あのマスコットを入鹿コロネさんが操ってるんですよね?切り離せばなんとか」
「さっきも言ったけど、ハルマにはあたいの魔力が流れ込んでんだよ。でもぉ、あたいは魔法は使えねえんだよな。だから魔法で奴らを倒せるとすればハルマなんだよ」
「僕は魔法なんて使ったこと無いです」
「魔法のバトンをペロペロ出来た時点で常人じゃないんだけどな~。おやぁ、ダッシュボードにお約束でこんなものが」
ヒサメさんが取り出したものは、オートマチックの拳銃に見えた。手渡されるとずっしり重い。
「これはっ」
「残念ながら弾倉のありかが分からねえ。この車の持ち主に訊いてみれば分かるとは思うけど、さすがにそんな余裕はねえ」
僕たちの乗ったドイツ車の後ろにガチガチと接触し、押し込むように走るワンボックスカー。入鹿コロネは再び中空に浮いていた。時速220㎞の世界で何故髪が乱れないのだろう。
「魔界に旅立てば、事故は回避できますよぉ」
「ハルマはどうなんだよっ」
「あたしに渡してくれれば、問題なしでしょぉ?ハルマさん、昨夜の続きをしましょ」
僕は冷静に考えた。
もうすぐT字路にさしかかる。カーブを曲がらせず、ガードレールにまっすぐ追突させる気なんだ。手にある拳銃には弾倉が無い。あっても魔女のマスコットに効くわけがない。
弾か。そういえば「はらたまきよたま」っていう呪文を昔のアニメの登場人物が使ってた。
「チューボーが何言ってんだ、明日14歳の誕生日なんだろ?」
「小学生の頃から搾精してたくせにぃ、うらやましい!」
「だったらてめえも勝手にやれや!」
「指が入るだけで痛いの!そういう年頃なの!」
怒鳴り合うヒサメさんと入鹿コロネ。この人達は人間じゃないからいいけど、僕は人間だから、あと15秒位で事故死。
やけくそだ。僕は防弾仕様の窓ガラスを開けて運転席のドルゴーに銃口を向け、突風に耐えつつちょっと捻った呪文を唱えた。
「はら、たま、きよ、弾!」
光の粒が銃口からぱしっと出て、ワンボックスカーの窓ガラスを突き破り、ドルゴーの左胸を貫通。そしてワンボックスカーは減速しながらバランスを失い、路肩に突っ込んで爆発して火を噴いた。
ヒサメさんはそれを横目で見ながらドリフトしつつT字路で左折。入鹿コロネは姿を消した。
「すげえ技もってんなハルマ、どこで覚えたんだ?さっきのあれ」
「僕にも、分かりませ~ん」
魔力を使い果たした感覚。目の前がうっすらと暗くなった。
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