センパイ、あーん♪
昼休み。
「センパイ、センパイ。今日は空き教室で食べますか?それとも中庭?それとも屋上がいいですか?」
「んー、屋上だな」
「じゃあランチマットを用意して良かったです」
「相変わらず用意がいいな」
それから屋上に行き、ランチマットを広げて昼ごはんタイムだ。弁当はもちろん七瀬の手作り。
「センパイ、あーん♪」
「あーん、もぐもぐ……」
いつも通り七瀬にあーんして食べさせてもらう。付き合いたての頃はお互い恥ずかしくて続けられなかったが、今ではもう一つの習慣みたいになっている。
てかこの唐揚げうまっ!
「センパイ、美味しいですか?」
「うまいよ! タレにしっかりつけられているにも関わらず、サクサクとした食感。丁寧に作業している証拠だ」
「上手な食レポありがとうございます」
俺の感想に上機嫌な七瀬。
ふと、朝のご飯粒のことを思い出したので試しに白米が口に付くように食べてみた。
「あっ、センパイ。ご飯粒付いてますよ。まだまだ子供なんですからー。ん、ちゅっ……」
予想通りにまた唇で取ってくれた。
唇で取ってもらうのが癖になりそうだ……。
「センパイ今わざとしましたね?」
「……バレてた?」
「はい、バレバレです。私はセンパイの唇に触れられるので嬉しいですけど」
俺もそれが狙いでやったけど。
「じゃあ次は……ん」
七瀬はウインナーを半分口に咥え、そのまま俺の方に近づいてきた。
これはポッキーゲームみたいなやつか?
「ふぇんぱい、ふぁなでしゅか?」
可愛い姿に思わず見惚れているとウインナーを咥えいる七瀬がモゴモゴ言っている。
あまり待たせてしまうと何かしらあるので、俺は七瀬が咥えいるウインナーを箸で取り、
「ふむっ……!?」
驚いているの七瀬の唇にキスした。
目の前の七瀬は真っ赤にして目を見開いている。今日はよく顔を赤くするな。
ネットでこういう風にするといいと書いてあったので試しにやってみたが効果はあったようだ。
「というか早く食べないと昼休みが終わるぞ。あーんはもう終わりな」
顔を赤くして固まっている七瀬の頭をポンポンと優しく叩き、そう促す。
そうすると七瀬は我に返ったようにハッとした。
「だっ、ダメです! 私が全部あーんして食べさせます!」
「それじゃあ七瀬が食えないだろ」
「私もセンパイに食べさせてもらいます!」
「余計食いにくいだろ!?」
「それでもいいんです! 私の料理を私が食べさせるこれ以上の幸せはありません! 最後の最後まで、米一粒までやりますよ!」
これはいくら言っても折れなそうだな。
「それとも、センパイは口渡しの方がいいですか……?」
唇を触り上目遣いで色っぽく言うもんだからタチが悪い。
このままだと弁当じゃなくて七瀬の方を食べてしまっ———いやいやいや!何考えてんだ俺っ!?
その後、結局諦めて食べさせ合いの方をした。
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