センパイ、ジャージ貸してください
「おい律。あれ、お前の彼女じゃね?」
「ん?」
クラスメイトの指差す方向を見ると体操服姿で髪をポニーテールにしている七瀬が顔を覗かせていた。
目線が合って手招きされたので廊下に出る。
「センパイセンパイ」
「どうした?」
「センパイって今日体育あります?」
「あるよ」
「ジャージ持ってます?」
「あるよ」
「じゃあ貸してくれません?」
「いいよとは言えないな。理由を聞かせろ」
何に使うつもりだ?
「もちろん体育中でもセンパイの温もりを感じたいからです♪」
なんて可愛い理由なんだ。好きという感情しかない。
「ちょっと待ってろ、取りに行く」
そしてジャージにある物を入れ、再び廊下に出る。
「これで今日の体育は乗り切れます」
「今日の体育ってそんな辛いものなのか?」
「バレーです」
「バレーって辛いか?」
「センパイ、知らないんですか?女の戦いは熾烈なんですよ?」
「そうなのか?」
「そうですよ。運動部の子とか本気でスパイク打ってくるんです。おかげで手がすぐ真っ赤になります。アザでもできたら大変です……」
「アザか。アザくらいすぐ消えるだろ?」
「ほんとセンパイは分かってませんね!薄らと残るんですよ!」
女の子にしか分からない悩みなのか?
「それに、残ったらセンパイが抱く時に……嫌というか……」
「おまっ、抱く時って……」
「おい聞いたか。篠宮の奴、橘さんを今夜抱くらしいぞ!」
「あの2人、まだしてなかったんだね。あんなラブラブだからもう経験済みかと思ったー」
盗み聞きしてたらしいクラスメイトが騒ぎ出す。
あーもう……。
「センパイだって綺麗な私を抱きたいですよね?」
「抱くって、お前な……」
「センパイは私のこと、抱いてくれないんですか? 他の女の子を抱くんですか?浮気するんですか? もしかして別れるんですか? そんなの嫌です。ブツブツ……」
あー七瀬さんが微ヤンデレモードに入られてしまった。全く……。
「どりゃ!」
「センパイは私のものですよ———わぷっ!?」
ジャージを投げつけ、早口言葉が止まったところで七瀬の耳元に近づき囁く。
「心配すんな。俺はお前がどんな姿でもいずれ抱くから」
「………っ」
七瀬の反応から驚いているのが分かる。そして耳が赤くなったことから恥ずかしいがっている。俺も頬が熱い。
「分かったなら早く体育に行く!」
「は〜い。ふふっ♪」
ジャージを大切そうな抱きしめた七瀬は上機嫌な様子で体育館へと向かって行った。
「篠宮の奴橘さんになに囁いたんだ!?」
「橘さん頬赤かったよね?」
「ま、ま、まさか今夜本当に抱くとか……」
「お前らは勝手に人の話を聞くな!」
その後、何を言ったのか質問攻めにされたが、無視し続けた。
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