センパイ、私以外の女の子と極力話したらダメですからね?

「相変わらずラブラブだな〜!」


 シューズに履き替えて教室に向かおうとした時、後ろから声を掛けられた。

 俺の友達の木村涼太郎きむらりょうたろうだ。

 容姿は短髪に琥珀の瞳に程よくついた筋肉。笑った時に見える八重歯が特徴的だ。


「おはよう、涼」

「おはようございます、木村先輩」

「おう、おはよう!にしても律は相変わらず冴えない顔してんなー」


 相変わらずコイツも地雷踏むの好きだなー。


「センパイが冴えないとは聞き捨てならないですね?センパイは世界一格好良いですよ?何言ってるんですか?目腐ってるんですか?眼科行ったらどうですか?今すぐ行ってください」


「あっ、えっ、ち、ち、違うんだ七瀬ちゃん……っ!」

「気安く名前で呼ばないでください。呼んでいいのはセンパイと友達だけです」

「俺もセンパイなんだけど?」

「何言ってるんですか、アホですか、脳みそ腐ってるんですか?は男のセンパイは律センパイだけです」

「前から思ってたんだけどお前ってMっ気あるのか?」

「ないとは思うが……」


 七瀬の毒舌を涼は週に一回は必ず受けている。


「センパイ、こんなのが友達で大丈夫ですか?」


 涼のことを完全に蔑んだ目で見ている七瀬。


「大丈夫大丈夫。それにイジメられたら七瀬に報告するし」

「そうですね。センパイをイジメるようなことをしたらどうなるか……分かってますよね♪」

「俺イジメたりしないから!」

「はいはい分かってるからそんな大声だすな。じゃあ七瀬、ここでお別れな」


 一年生は一階、二年生は2階なのでここでお別れである。


「うぅ、寂しいです……。休み時間も会いに行きたいですけど、友達の方も大切なので……」

「分かってるよ。七瀬はいい奴だな」

「えへへ♪」


 友達想いな七瀬が可愛くて思わず頭を撫でる。朝より機嫌がいいため撫でても何も言われない。


「お前らよくこんな公衆の面前で惚気られるよな…」


 学校内なのでもちろん生徒はいる。登校してきた生徒たちがチラホラと俺たちの方を見ているが慣れているので気にしない。


「センパイ、分かってますよね?」

「ん?」

「私以外の女の子と極力話したらダメですからね?」

「善処する」

「絶対ですよ?」

「アイアイサー」

「信用できない返答ですね……。では」


 そう言い残すと七瀬は行ってしまった。


「七瀬ちゃん相変わらずお前にベッタリだよな」

「そうか?」

「鈍感かよ……。まぁお前もそれなりにベッタリだが」

「当たり前だ。七瀬は可愛いからな」

「うへっ、盛大に惚気られたぜ……」


 舌をベーとだし、リアクションを取る涼。

 今日も騒がしい学校生活が始まりそうだ。

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