第22話 一緒に洗い物しよ?
「にゃ、にゃー……ね、ねえ野村。私、その……食べすぎちゃったんだけど。カレー食べすぎちゃってちょっとしんどいにゃぁー……にゃぁー?」
カレーも食べ終わった事、綾乃ちゃんと行った手前私も作戦実行、私も二人きりになる作戦。
隣に座る日向にふわふわと甘えるように近づく。
「ん、大丈夫か柊木? ダリアちゃん多分あっちで茜先生と一緒にご飯食べてると思うけど、一緒に行くか?」
「にゃにゃ、そう言う事じゃなくて、一緒ってとこはあってるけどそうじゃなくて……!」
「え……! あ、あー日向! そ、それなら柊木さんと一緒に洗い物、してきてよ! ぼ、僕たちは遊びたいからさ! それなら柊木さんと二人で洗い物、お願いしていいかな? 二人で洗い物、ちょっとしてきてよ!!!」
予想外に連れなかった日向に焦って目線を本田君に向けると、少し焦ったようにでもちゃんとアシストしてくれる。
ナイス、ありがと流石可愛いと人気の本田君!
「いや、新洗い物とかそう言うのはみんなで……」
「……にゃー」
「わかった、一緒にしてくるぜそれなら。柊木と二人でも別に悪くないしな、むしろ良いかも」
「……! の、野村、その、私も……」
じっくりとつれない日向を見つめているとそんな嬉しいことを言ってくれて。
私だって、そのいつも日向と居れて、今度の休日も日向の家で……
「しかし食べ過ぎダウンとかすごく柊木らしいな、それ。この前もピザ食べ過ぎてたし、カレーも食べるの初めてか?」
「……ち、違う! バカバカ、バカ! た、食べたことあるし、ずっと食べてたし! も、もう鮫島! ダメ、そう言う事言わないで! バカ鮫島!」
「アハハ、そりゃすまんかった。あと、その名前学校で呼んじゃダメ。呼んでいいのは、二人の時だけ……二人きりの家以外でそれで呼んじゃダメ。ヒミツだから、その名前……今は柊木と二人のヒミツだから」
そう言ってシーっと唇に指をやる日向。
な、何その言い方……えへへ、すごく嬉しいじゃん、それ! にゃーん!
「にゃにゃ……ご、ごめんね。ごめんわかってる……えへへ……えへへ、鮫島……にゃーん♪」
「……だからそう呼ぶなって。二人の時以外ダメだって。その猫声もダメ」
「でも、だって……えへへ、今からは二人でしょ? 洗い物中は二人でしょ、鮫島?」
「……柊木、お前本当に食べ過ぎでしんどいのか?」
「にゃーん♪ にゃにゃーん♪」
「おいごまかすな……全くもう……柊木ならいいけど」
☆
「そ、その私、ぽんぽんぱんぱんだから、食べ過ぎてしんどくて、遊べないから……だから洗い物、するです。私が洗い物するます」
つんつんと僕のわき腹をつついてきた斉川さんが遠慮気味に、でも何かを期待するような甘い上目づかいでそう言ってくる。
「へー、そうなんだ! お腹痛いのか、それなら仕方ないね! よろしくね、斉川さん! 私は佑司君と一緒に遊ぶから、斉川さんに裏方頼んでいいかな? 斉川さんに洗い物頼んじゃっていいかな?」
「え、その、えっと……あぅぅ、樹神君……あうぅ、待ってぇ……うゆ」
その斉川さんの声に嬉々として反応するのは工藤さん。
いつの間にか僕の左手をぎゅっと柔らかく握って身体を密着させながら斉川さんに向かってそう言って……遊ぶの良いけど、いやでも!
「あはは、斉川さん一人でしなくて大丈夫だよ。こう言うのは片付けまでみんなでしないと! だから僕も手伝うよ、洗い物。あの二人はどこか行っちゃったけど、僕と工藤さんで洗い物、一緒にしよ?」
「佑司君? 佑司君? 佑司君?」
「……え、樹神君、その……え、良いんですか?」
ぎゅっと手を握る力を強めてくる工藤さんに、あみゅっと目を丸くする斉川さん。
みんなで食べたんだから、洗い物はみんなでしないとね!
「うん、良いよ。一緒にしようというか、一緒にしないとだよ! ほら、工藤さんも一緒にするよ、食べたものは片づけないと!」
「ううっ、そうだけど、でも今は私というか、その、私だけというか……私が佑司君の事先に誘ったし、それで……それにみんなからも誘われてるし、佑司君と私、みんなから遊び誘われてるし……それに佑司君そっち行っちゃったら私じゃなくて……」
「一緒にするんだって、だから。工藤さんも一緒だよ、三人で洗い物するの。やるべきことしないで気持ち悪いし、ね?」
汚れたお皿を放置するのも気持ち悪いし!
それに斉川さんも調子悪いなら危なくならないように一緒に居てあげたいし……僕なんかでいいかわかんないけど、でも一緒に居ればダリアちゃんとかにすぐに報告できるし! だから洗い物3人でするべきだと思います!
「えへへ、樹神君、その、来てくれますか? 一緒大丈夫?」
「うん、もちろん! 調子悪いならなおさらだよ! 工藤さんも来るよね? 一緒に洗い物するよね? その後、みんなで遊ぼ?」
「……むー、でもやっぱり、佑司君私じゃなくて……でも行かないと絶対……で、でも私だけを、私と二人で……」
「あー、見つけた光! ちょっと来てちょっと来て! 光の力が必要なんだよ、光莉に来てくれないと困るんだよ!!!」
ブツブツと何か呟いていた工藤さんの手を後ろからてってと走ってきたクラスメイトの生物部・和田さんが焦ったようにグイっと掴む。
「ちょ、小春ちゃん、私今その……えっと、佑司君と、その……」
「え、あ、ご、ごめん! 佑君、イチャイチャタイム邪魔してごめん! ちょっと光借りてくよ、一大事だから! ごめん、佑君! では!」
「あ、うん、わかった。た、楽しんできてね……だ、大丈夫、工藤さんは?」
「うん、もちろん! 行くよ、光! 光の力が必要なんだから!」
「待って、私やっぱり洗い物……佑司君と一緒に洗い物……あーあ! うわぁぁ……」
そしてじたばたと抵抗する工藤さんを力で抑えた和田さんはそのままズルズル引きずるように引っ張っていく。
滑りのいいナカをつるつるとキレイに滑って行ってあっという間に外に行ってしまって……え、えっと。
「……なんかわかんないけど、工藤さん行っちゃったね」
「だ、大丈夫かな? なんかその……無理やり、だったけど。止めないで、大丈夫、なのかな? その、私はえっと、樹神君と……で、でも無理やりはダメだし……」
「確かにそうだけど……ま、まあ和田さんと工藤さん仲いいし? なんかその……僕らじゃわかんない世界があるのかも? と、取りあえず、僕たちもその、洗い物しよっか。それでもし斉川さんが復活したら工藤さんのとこ、一緒に行こ? 洗い物はしとかないといけないしね!」
「う、うん、そ、そうだね。洗い物しよ……えへへ、ありがと、樹神君……私、復活できないかもだよ? ぽんぽんぱんぱんだから無理かもだよ?」
「ふふっ、その時は……その時考えます! 取りあえずは洗い物だ!」
えへへ、と可愛く笑った斉川さんにグッと手を挙げる。
まずは斉川さんと二人で一緒に洗い物して、その後……えへへ、取りあえず洗い物だ、斉川さんと洗い物だ!!!
その後の事はその後考えよう、工藤さんの事は……終わったら一緒に遊ぼう、何してるかわかんないけど!
「えへへ、樹神君と……えへへ、お腹いっぱいでせいこうで……えへへ」
「ふふっ、洗い物は大事さからね。あ、斉川さんそれ重いでしょ? 僕持つよ」
「え、でも樹神君もお皿持ってるし、それに……」
「大丈夫、持てるよ。男の僕に任せなさい! 斉川さんはしんどいだし、ゆっくりふんわりしとけばいいよ」
「う、うん……えへへ、樹神君……えへへ、ありがと……サクセンダイセイコウ」
「ん? なんか言った?」
「ううん、何でもない……洗い物、頑張ろうね、って……えへへ」
ふんわりと大きくなったお腹を撫でながらゆるっと僕の隣に身体を寄せる斉川さんを隣に感じながら僕たちは二人でゆっくり洗い場で向かった。
「あーあー、佑司君が、佑司君が……小春! 何するの小春! 私佑司君と一緒に、じゃないと佑司君が! 佑司君が!!!」
「佑君の事は後でちゃんとするから! その一大事なの!」
「一大事って何! こっちの方が……」
「めっちゃでかいカブトムシいたの、この時期に! 4月なのにめっちゃでかいやつ! それを真夏と竜馬君で取ろうとしたんだけど全然取れなくて……だから光にお願い! 取ってよ、光カブトムシマスターなんでしょ、真夏に聞いたよ!」
「うー、生物部! カブトムシマスターも本当だけど、でも今は佑司君が……あー、もう真夏のバカ! バカバカバカ!」
佑司君と一緒に居なきゃなのに、一緒に居ないといけないのに! 一緒に居ないと佑司君は斉川さんと二人になって、それで……ああ、もうバカ! 真夏のバカ!
佑司君と二人にならなきゃいけないのに、佑司君と二人きりが必要なのに……遊んで抜け出して、二人になってそれで斉川さんを忘れるくらいに……ああもう!
これじゃあ斉川さんの方にまた佑司君が……もう、真夏のバカ! 小春もそこそこバカ!!!
★★★
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