第4話 頑張って話すんだ! 仲良くなるために!
「えっと、僕は誕生日が9月24日でキンシャサノキセキと一緒! 南半球だから! だから星座はてんびん座のAB型! 僕汗もかかないし、AB型だから夏場でも蚊にほとんどかまれないんだよね! 斉川さんは誕生日いつ? 血液型とかはどう?」
「……」
「あはは、そっかそっか。ごめんね、急に。そ、それなら……斉川さんって好きな動物とかいる? 動物とか何でもいいけどなんかある?」
「……」
「僕はね、キツネとウサギが好き! ていうか可愛い動物が好き! シャチとかペンギンとか!」
「……」
「……斉川さんはポケモンとかして事ある? 僕は結構好きなんだけどどうかな?」
「……」
「僕ね、初めてしたポケモンがXYで、その時にうさぎとキツネが好きだからマリルリとフォッコが大好きになって……あ、でも一番好きなのはヌメルゴン! 斉川さんヌメルゴンわかる? 可愛いドラゴンポケモンだよ、こんな感じの!」
「……」
「……本当に可愛いんだ、ヌメルゴンは! あのあほっぽくて可愛い表情とか、バトルの時の表情とかリージョンのちょっとヤンデレなところとか……そう言うところ色々含めて大好きなんだ! 斉川さんはそうだな……グレイシアとか好きだと思うな、似合うと思う! グレイシアは笑顔も可愛いし、それにキレイで可憐でカッコいいし! 斉川さんに似合うと思う!」
「……」
……きっつい!!!
めっちゃきついよ、最初から僕しか話してないよ、ずっと無反応だよ斉川さん!
スタートダッシュを完璧に間違えたからその後巻き返そうと色々頑張って話してるんだけど……全然反応してくれない!
そもそも質問を間違ってるな、話す内容がダメだよな……知らないよね、キンシャサノキセキとかポケモンとか言われても! 男の趣味だもん、どっちか言うと!
ほんでグレイシアて! 暗に心冷たそうって言ってるようなもんじゃん……ああ、もう間違えた間違えた! 本当に何の話すればいいの!?
「……」
先生に貰った紙には他には部活とか趣味とかそう言うの書いてあるけど……一回部活の話してみるか! 野球大好きかもしれないし! 部活ガチ勢かもしれないし!
「斉川さんは中学の時、部活何かやってた? 僕はずっと野球部だったんだけど、斉川さんって野球とか見る?」
「……」
「ふふっ、プロ野球もだけど高校野球も結構面白いよ! 甲子園とか見るのおすすめ……え、えっと、ちょっと野球の話は置いておいて、斉川さんは部活何かやってた? 僕のイメージはね……吹奏楽部! フルートとかすごく似合うと思う!」
「……」
「……吹奏楽部と言えば、響けユーフォニアムってアニメ知ってる? あのアニメ、すごく良かったんだけど、映画もすごくよくて……すごい感動しちゃった! 結構おすすめのアニメだし、映画! 斉川さんはアニメとか見る?」
「……」
……響かねぇ!!!
相変わらずの無表情で、言葉も聞こえなくて……あ、でもさっきよりはちょっとだけ反応あったかも! アニメの話題した時、ちょっと耳がぴくって……そっち方面か? そっちが正解か?
「⋯⋯そ、その僕のおすすめのアニメは中二病でも恋がしたい! ってアニメなんだけど……これ原作の小説とアニメで話が全然違うから一粒で二度楽しめてそう言う点でもおすすめ! それに内容も面白いし、裕太君も六花ちゃんも可愛いし、ストーリもキュンキュンして凄く良いし! もし興味あるなら見て損はないアニメだと思うよ! 斉川さんが好きかはわかんないけど、でもおすすめのアニメ!」
「……」
「……さ、斉川さんはマンガとか読む? 僕はね、結構マンガとか読むんだけど最近僕が好きなのはウイッチウォッチ! お父さんの部屋で読んだSKET DANCEで大好きになった作者さんなんだけど、やっぱり篠原先生の書くギャグは最高というか! あの10倍速の回とかすごく面白かったし、それに……」
「……」
「……あはは、取りあえず面白いからもしよければ読んで欲しいな!」
……ダメだ、全く手ごたえがない!
反応が無さ過ぎてわかんない、響いてるのか響いてないのかわかんない!
やっぱりもうダメなのかな、斉川さんとは話せないというか、話すの諦めた方が……いや、でもこんなところで諦めるのダメ!
クラスのみんなとは仲良くしたいし、後ろの席の人なんて特にだし!
班ワークとかでも色々これから一緒になること多いだろうし、ここでちゃんと斉川さんの声を聞いて、仲良くなるんだ!
「斉川さんはどんな食べ物が好き? 僕はねラーメンが好きなんだけど、特に豚骨が好き! 他にもオムライスとか、ヨーグルトとかも好き! 斉川さんはどう? 好き?」
「……」
「斉川さんは得意な教科とかある? それとも苦手な教科とか! なんかあります、この学校に入るってことはすごく賢いと思うけど!」
「……」
「……僕の予想では数学! 斉川さんは数学が得意だと思う! 斉川さん賢そうだし理系得意そうだし! どう、僕の予想当たってる? ちなみに僕は国語が得意!」
「……」
「……えっと、斉川さんは映画とか見るかな? 僕は毎週金曜ロードショーを欠かさず見るんだけど斉川さんはどう? 金曜ロードショーとか見てる?」
「……」
「えっと、僕はジブリ映画と洋画が大好きなんだ! ジブリだと魔女の宅急便、洋画だとバックトゥザフューチャーが好き! ニシンのパイ作ったことあるし、デロリアンにも乗ったことある! 斉川さんは好きな映画とかある? もしよかったら話してくれたら嬉しいな!」
「……」
「あ、後は何だろう……斉川さんは好きなスポーツとかある? スポーツとか見たりしたりする?」
「……」
「ぼ、僕はさっきも言った通り野球を見るのもするのも好きなんだけど、他にはサッカーも好き! 見るのだったら冬季のオリンピックが大好き! カーリングとかハーフパイプとかボブスレイとかジャンプとか! 冬季のオリンピックは見るのがすごく楽しいよ!」
「……」
「え、えっと……そ、そうだ斉川さんは競馬とかウマ娘とかそっち方面には興味ないかな? 僕はそっち方面大好きでよく見てるんだけど! 斉川さんはどう?」
「……」
「競馬ってギャンブルだから結構敬遠されがちだと思うけど、でも見るだけでも楽しいし、スポーツとしても血統のロマンとしても最高に楽しいものだよ! あとお馬さんも可愛いし! エールちゃんとかドンキちゃんとかオロ君とか! カッコいいならヴィルシーナとかオルフェーヴルとか!」
「……」
「……んっと、えっと……あ、そうだ他にもその……好きな歌手とかいる? ほら、いつもイヤホンつけてるし、だから音楽とか好きそうだし! どうかな、答えてくれないかな?」
「……」
「ぼ、僕は坂道も好きだけど、他にはゆずとかスピッツとかBUMPとか! あとKING GNUとかそう言うのも結構好き? 斉川さんはどうかな?」
「……」
「えっと、あの……」
☆
「……ですので、このマンガは面白かったよ! もしよければ!」
「……」
「……どうしようかな……」
一人で話し続けること十数分、未だに何の返事もない斉川さんに漏れるは盛大なため息。
リストに載ってることはほとんど話しきっちゃったし、それ以降はおすすめマンガと映画の紹介みたいになってたけど、それのどれにも斉川さんは反応してくれなくて。
ずっと斉川さんに問いかけて、プレゼンして、でもひたすら無反応で。
何というかもう……疲れちゃった。
情けないな、ホント。
確かに少し嫌で地獄になるかもとか思ってたけど、でも僕は野球部時代からムードメーカー声出し担当だったからいけるでしょ、話せるでしょ! とか思ってたけど、僕では全然斉川さんの心を開くことが出来なくて……もっとうまく話せたら心開いてくれてたのかな?
自分の能力過信して、いけると思って……ハァ、情けない。
こんなんじゃダメだ、もっと頑張らないと……でも、やっぱりもう疲れた。
「……」
そんな事を考えながら休憩がてら周りをクルクル見回してると、さっきとは違うざわざわがうねり始めていることに気づいた。
よく見ると何人かの友達がドッジボールをするために体育館倉庫の方に向かっていて……あ、もうそんな時間か。
「……」
斉川さんも一人の方が嬉しいだろうし、僕がいない方が良いだろうし。
だから僕もそっち手伝うか、工藤さんと一緒にチームになる約束もあるし。
「ごめんね、斉川さん。僕一人でずっと喋っちゃってて。つまんなかったよね、ホントごめんね、僕だけこんなに……それじゃあ僕準備行ってくるから後は……」
「……ま、待って! ままま待って! ごめんなさい、で、でも⋯⋯ま、待って欲しいです、こ、樹神君!」
「……え?」
邪魔者の僕は退散しよう、なんて思っていたら背中の方から声が聞こえる。
聞き覚えのないその声は、初めの自己紹介の時とは違って透き通ってキレイなよく耳に残る温かい声で。
「さ、斉川さん?」
今日初めて聞いた斉川さんの声はそんな風にどこか癒されるような、ふわふわするような声で。
その声に少し動揺してしまっていると、斉川さんは長い髪をふわっとかき上げる。
初めて見た素顔の斉川さんは、いつもの印象とは違って優しい目をしていて、キレイな真っ白な顔を赤く染めていて……その顔に思わず心を奪われてしまって。
「ご、ごめんなさい、樹神君! そ、その……ぜ、全部聞いてた! イヤホンつけてるふりして、全部樹神君の話聞いてた……それでいっぱい話しかけて嬉しかった! 私の事いっぱい聞いてくれて、優しくいっぱい話してくれて嬉しかった、楽しかった! すごくすごく嬉しかった! 樹神君が話してくれて、聞いてくれて嬉しかった!」
「……あ、えっと……そ、それなら良かった! ぼ、僕も嬉しいな」
「だ、だから、その……わ、私の名前は斉川綾乃! ぶ、部活はしたことないけど、でも茶道部入りたい! たたた誕生日は3月12日で、その、えっと、す、菅原君とストレイトガールと一緒!」
「え、あ、ふ、フジキセキ?」
「う、うん、フジキセキ! その、私もお父さんの影響で競馬好き! えっと、あの、な、ナムラクレアが好き、もちろんエールちゃんも好き! や、野球はわかんないけど、でも、あの、マンガもアニメも映画もポケモンも……その、ぜ、全部好き! 六花ちゃんもウイッチウォッチも黒岩メダカもバックトゥザフューチャーもヌメルゴンもジブリも少女漫画も……全部全部大好きです!!!」
「う、うん!」
「全部大好きだから、大好きだから、嬉しいから、だから、その、えっと……よ、よろしくお願いします!!! よろしくです!!!」
「……ありがと、斉川さん! こっちこそよろしくね⋯⋯僕も話してくれて、そう言ってくれて嬉しいよ」
泣きそうなくらいにキレイな顔を真っ赤にして、キラキラの潤んだ瞳を向ける斉川さんの言葉に、僕は大きく頷いた。
★★★
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