第1章 クラス交流会

第3話 クラス交流会と兄妹と

「姉ちゃん、姉ちゃん! なんしとん、早起き! 学校あるやろ、俺もいかなあかんし! だから姉ちゃん早く行くよ!」


「……ヤダヤダ、眠たい、今日は行きたくない!」


「なんで? 行こうよ、学校行かないとマンガみたいな青春なんて夢のまた夢やで?」


「……だってぇ」


「だってぇ、じゃない! ほら行くよ、姉ちゃ……ってもう! ズボンくらい履いて寝なさい!!! いつまでもパンツで寝るな風邪ひくぞ!」


「……ぴえぇぇぇ」

 ―だって今日クラス交流会あるもん。自己紹介、遅刻とか緊張とか前の二人のイチャイチャとかで大失敗したもん、ダメダメだったもん。


 ―それに今回のペアが前の席の、樹神君で、樹神君はその前の席の工藤さんとの例の仲良しいちゃいちゃカップルで……そんなのに割り込むの私ヤダよ、リア充さんに殺されちゃうよ、私なんか……


「姉ちゃん! 俺出てくから早く着替えなよ! 着替えないとマンガ、没収するからね! アニメも観れないようにするよ!」


「……むむむ、雅樹のケチ!」


「ケチで結構、俺は姉ちゃんのために言ってるんだから!」


「ぷわぁぁぁ⋯⋯」


 ―雅樹のバカ、私だってあの二人のために言ってるの! 話したことないけど、めっちゃ仲良しで、それで……ああ、やっぱり学校行きたくないな。


 ―ああ言うリア充さんとはどうしたらいいかわかんないし……やっぱり黙ってるのが正解? いやでも、もし仲良くなれたら……ああ、でも工藤さんに……





「……なんだよ、希美! 朝だぞ、今日学校! いきなり電話やめろ!」


「何よ、雅樹のくせに! 今日の予定、今日クラブで練習だから! 来いよ、ちゃんと!」


「LIMEで良いじゃん、それなら!」


「返事遅いじゃん、雅樹! 電話しないと放課後までどうせ見ないだろうし! それじゃあ、ちゃんと来るんだぞ! 放課後……ていうか昼までだから昼からだ!」


「おい、希美……ってもう! 希美……もっと話したかった!」

 ……雅樹は結構リア充だよね?

 そう言うコツ聞いたら……でも弟に聞くのは……


「……何? どうかした、姉ちゃん?」


「……何でもない」



 ☆


「ああ、次の授業怖いなぁ……工藤さんとペアが良かった」


「ああ~ん、佑司君私も、私も! 私も佑司君とペアが良かったぁ~! 佑司君と一緒が良かった!!!」

 昼休み、竜馬と一緒にお昼ご飯を食べてる途中にそんな愚痴をこぼすと、前の席で立川さんとご飯を食べていた工藤さんが超反応で僕の手をギュッと握ってくる……ちょいちょいちょい、ご飯中ご飯中! それに唇に卵焼きついてるよ!


「あ、ごめん、ありがと……佑司君は後ろの斉川さんだよね、ペア相手? それは大変だね、話してるの見たことないし。私は葛西君だけど……でもやっぱり佑司君が良い!」


「あはは、ありがと。武史には悪いけど、僕も工藤さんと一緒が良かったな」


「うんうん、私も私も! やっぱり両想い、今からでも同じペアになろ~よ、佑司君!」


「ちょっと近い、ご飯食べれないよ工藤さん……」

 くいくいと机を後ろに引いて僕の方に顔を寄せてくる工藤さんをていてい、と追い払う。


 次の授業はクラス交流会―という名の男女の交流会だ。

 この学校の恒例行事らしく体育館に集まって男女のペアでお話して交流を深めよう! という簡単なイベント。


 クラスが男女均一になる様に設定されてることもあって、ペアが余ることは無いんだけど、出席番号6番の工藤さんは5番の葛西武史、7番の僕は8番の斉川さんと組むことになった。


 斉川さん、あれから何度か話しかけてはみてるんだけど全然反応してくれないし、誰とも話してるとこ見たことないし、相変わらずイヤホンで目つき怖いし。

 今もお昼休みだけど早々に教室を飛び出しちゃって……もしよかったら次の授業の事もあったし、一緒にご飯食べようかと思ったけどでもそんな隙もないくらい一瞬で外に飛び出しちゃって。


 だから全く斉川さんとはコミュニケーションが取れそうになくて、次の授業が心配、というわけです。工藤さんとか立川さんならいっぱい話せるんだけど……工藤さんは距離近すぎてちょっと怖いけど。可愛いし、スタイル良いし危険だけど。


「えへへ、良いじゃん佑司君! それなら私が食べさしてあげようか、佑司君にご飯?」


「何がそれなら? 良いよ、自分で食べるから少し離れて工藤さん!」


「ぬへへ、良いじゃん良いじゃん! ほら、あーん! あーん、佑司君!」


「……相変わらずいちゃついてんな、お前達。佑司のどこがそんなにいいんだ、光ちゃんは?」

 あーん、とお箸を近づけてくる工藤さんを何とか避けていると僕の前方から呆れたような凄い低い竜馬の声が聞こえる。

 い、いちゃついてません、そんなことしてません!


「もう、瀬川君ったらぁ~! そうだね、佑司君の良いところは、まず……」


「ああ、良い良い! こいつのいいところは俺も結構知ってるし、惚気られるのも嫌だし……それより、真夏ちゃん! 今日は俺とペアだよね、よろしく真夏ちゃん! いっぱいお話しようねー!」

 嬉々として何かを話しだそうとした工藤さんを遮って、竜馬はくいっとペアの立川さんの方に目を向ける。

 その声に立川さんの耳がピコンと嬉しそうに反応する。


「お、何だ私のペアは瀬川なのか? ちょうど良かった、背負い投げしていい?」


「体育館木の床だよ!? 死んじゃうよ、俺死んじゃうよ? ていうか俺100キロ近くあるよ、難しいよ、まず!」


「でも柔道部だろ? 大丈夫、何とかなる! 柔よく剛を制す!」


「限度あるって! 真夏ちゃん体重50キロくらいでしょ? 結構大変だよ、それ!」


「はぁぁ、私47キロですけど……って何乙女の体重軽々しく聞いとんじゃ! 天誅!」


「理不尽!?」

 ……この二人も相当仲いいよな、いつもケンカみたいなことしてるけど立川さんも竜馬もすごく嬉し楽しそうだし。

 この二人のペアもうまく話が回って面白くなりそうだ。


「ふふっ、あの二人も仲いいね。いつかダブルデー……ねえ佑司君。佑司君の良いところ行ってあげようか、耳元で? 佑司君の気に入ってるとこ、話してあげよっか?」


「……遠慮しときます、大丈夫です。僕ご飯食べたいからちょっと離れて」


「む~、佑司君のいけず! そう言われたら離れるけど……あ、そうだ! この交流会、ペアのお話は15分くらいで終わって、その後にドッヂボールとかクラスみんなで色々するんだって! その時は一緒のチームになろうね!」


「ふふっ、そうだね。一緒にしよう」

 ……僕も工藤さんとペアだったらすごく面白くなったと思うな。

 斉川さんとはちょっと……後ろの席だから仲良くなりたいし、それに空気も地獄にしたくないから頑張るは頑張るけど!



 ☆


「いただきます……うん、美味しい。それにここ、落ち着く……次の授業どうしようかな?」

 前の席の樹神君とペアで二人で……男の子と話すのも雅樹のぞけば久しぶりだし、絶対上手く話せないよ。


 それに私の趣味とか聞かれてもあんまりリア充樹神君とは合う気がしないし……絶対気を遣わせて、変な空気なるよね?

 それにいっぱい喋っちゃって、他の人からの報復も……やっぱり黙っておこう。それが絶対一番いい!


「……ごめんね、雅樹、古川先生お姉ちゃん妹さん。私はその……高校でもうまくいきそうにないです」

 ……良くないのは分かってるけど! 

 でも無理なもんは無理! もっと私に近いというか、もっと私みたいな陰キャ寄りの男の子がペアが良かった!


 それなら多分…………いや、それでも無理だ、私じゃ。

 私の好きなマンガとかゲームとか……あんまり好きな人、多くないし。結構人選ぶみたいだし。


「ぷえぇぇぇ……」

 ……人づきあいって難しい。



 ☆


「それじゃあ交流会はじめ! 皆さんお互いを知れるよう、いっぱい話しましょう!」

 さっきまで僕に引っ付いて「一緒が良い!」と言っていた工藤さんも武史のところに行って、先生の合図とともに僕と斉川さんの交流会が始まる。


 長い髪に真っ黒な瞳の斉川さんは今日も世界を遮断するようにイヤホンを耳元につけていて……いやでも、多分オシャレでしょ、多分!


 それに声出したらイヤホン越しでも声聞こえるし!

 野球部のムードメーカの出番だよ、ここでそれを発揮するぜ!


「よ、よろしく斉川さん! 僕の名前は樹神佑司です! 今日はよろしく……あ、今日だけじゃなくて他の日もよろしくしてくれたら嬉しい! 仲良くしてくれたら嬉しい、仲良くなりましょう!」


「……」


「えっと、斉川綾乃さん、だよね? その僕の樹神も結構珍しいけど、斉川さんの名字も結構珍しいよね? あんまり聞いたことないし、二人とも結構珍しい名字な気がする! それに綾乃、って名前も結構可愛いよね、良い名前! あ、うちの妹の名前が希美って言うんだけど二人の名前でしりとりできるね!」


「……」

 ……何言ってるんだ、僕は! 

 何だよ、名前でしりとりって、可愛い名前とか今言う話じゃないだろ、もっと仲良くなってからだろそう言うのは!


 なんか微妙にてんぱって変なこと言ってるよ、これじゃあ無言なのも納得だよ!

 急に名前でしりとりとか妹とか言われたらこうなるよ、意味わかんないもん!

 ああ、失敗した、出だし失敗した!!!



 ―え、え? え? え?


 ―なんか樹神君凄い喋ってるけど、でも可愛いとかずっと仲良くしたいとか……え、ももももしかして私の事そ、その……せ、セフレとかそう言うのにしようとしてる?


 ―こんな感じで甘い言葉で誘って、本命は工藤さんだけど、都合悪い時とかに使われる感じの……え、怖い! 陽キャの人怖い! 怖い、助けて……雅樹……真乃、めぐる、灯織……!




「⋯⋯んっ?」


「……どしたん、雅樹?」


「いや、姉ちゃんの悲鳴が聞こえた様な気がして……」


「雅樹はシスコンだよね」


「……希美だって、ブラコンのくせに。佑司お兄さんの事、大好きなくせに?」


「はー、私がお兄ちゃんを? そんなわけないですけど! ていうかシスコンは否定しないんだね、シスコン!」


「……うるさい、希美! 俺はその……ばーか、ばーか!!!」



 ★★★

 今日は3話あるかもです。

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