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選手交代
鷲川(PR 2)→近堂(PR 3)
1トライ1ゴール差。ラグビーではよくつかわれる言葉である。7点差は、一つのトライですぐに追いつかれる点差である。そのため、8点以上のアドバンテージを持ったまま、試合終盤を迎えるのが目標となる。
現在、10点差。総合先端未来創世は、この差を保っていけば勝利することができる。
そんな中鹿沢監督が選んだのは、プロップの鷲川から近藤への交代だった。前線を重たくする。モールに備え、走り合いにはならないという読みである。
ラグビー経験者の数だけならば、新口の方が多い。しかし一年生が大半であること、交代要員がいないこと、そして突出した選手がいないことがネックであると鹿沢は感じていた。総合先端未来創世には、金田やカルアといった局面を変える選手、荒山や宝田といった一流の選手がいる。
問題は、宮理や梅坂学院には一流の選手がゴロゴロいるということだったが。
ここからは、何を見せるか、何を隠すかの勝負でもある。すでに、監督は次に向けた戦いを始めていたのである。
点差が大きくなっていく。
江里口は、唇をかんでいた。トーナメント表が決まったときから、なんとか高校に勝つことを目標としてきた。そのための作戦を立て、先輩たちも納得させてきた。粒ぞろいのメンバーは、なんとか高校にも引けを取らないと考えていた。
実際、一時はリードしたのだ。荒山がスクラムハーフでないのも幸運だと思った。最初は意味が分からなかったが、ウイングが足りないということだろう。星野をそのままウイングで使えればいいが、そういう選手ではないのだ。苦肉の策に違いない、と思った。
しかし、なんとか高校は逆襲してきた。犬伏のキック、金田のステップ、そしてモールまで。
ラグビーは、奇跡の起こりにくい競技だ。実力差が反映されやすい。
なんとか高校の方が、上だったのか。
江里口はそれでも、食らいついていった。ラグビーにかけた思い。今原と語ったこと。仲間たちとの努力。
様々なものが、押し寄せてくる。そして、様々なトライで、点を取られていく。
近堂が入ってからは、モールも受け止められた。100キロを超える巨体が壁になっている。それだけではない。近堂は足腰が強い。ただ大きいだけでなく、スポーツをやっていた体だ。
点差が開いていく。目の前には、ベスト4常連校の、東嶺がいるのだ。
笛が鳴った。
59-12。試合は終わった。
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