第16話
まず、魔法矢の生成からだ。矢に、私の描いた『漫画』の紙を巻き付ける。
それを、ジャンヌさんが試し打ちした。
「……凄いね。スクロールの効果そのものだ」
実際のところ、私が写し取った『漫画』なんだけどね。描いた魔方陣に魔力を持たせることで、再現していた。
「欲しいスクロールがあれば、後日リストをください。作っておきます」
「お代は?」
「要りませんよ? シーナさんと良くしてくれれば文句はありません。それとお願いとして、食材の融通ですかね」
ジャンヌさんは、なんとも言えないといった表情だった。
推測はできる。スクロールは高価なんだろうな。
それを私は、魔法で再現できる……。
混乱を招くかな?
「ユージは、シーナの店から動く気はないのかい?」
「私にあっている仕事を、提供して貰っています。賃金も十分だし、移動は考えていません」
「料理人より、漫画家の方が稼げるんじゃないのかい? いや、スクロール作成師?」
なんだ、作成師って……。
私も前の世界でそれなりに『漫画』を読んだけど、聞いたことがなかった。
ジャンヌさんの造語だよな?
「……そうかもしれませんね。でも、興味ないです」
とりあえず、私は動く気はない。地位も名誉も、金も興味がないからだ。
◇
夜になり、ジャンヌさん用の魔法陣を描いて行く。
「水を凍らせる魔法……。これでいいよな」
もう一度、試し打ちして、桶の水を凍らせてみた。
「私の漫画は、魔法のスクロールの代わりにもなる。売らなければ、問題ないよな……。いや、魔法のスクロールがどうやって作られているのかも分からないけど」
とにかく大量に必要らしいから、複製して行く。
ペンを念動力で動かして行く。
大分上達した。
上手く描けるのなら便利かもしれない。
その日は、疲れが出ない程度に数枚描いた。魔方陣による複製は、性能評価が終わってからにしよう。
喫茶店シーナの営業再開が決まった。
素材が入手できたからだ。
でも、何時もの半分の量だな。
店を開けると、冒険者が雪崩れ込んで来る。
そして、『ゴブリン討伐記』を奪い合っていた。十冊用意したんだけど……、もっと増やそうか。
「お客様……。ご注文をお願いします」
シーナさんの静かで低い声が店に木霊する。
一気に注文が入った。
今日は、カレーで良かったな……。
数分でオーダーストップ。
客からは、なんでもいいので料理を作ってくれと頼まれる始末だ。
シーナさんと相談して、お粥にした。
まじで、食材がない。
お粥を出すと、冒険者が数人出て行って、戻って来たら食材を持って来てくれた。
ありがたく使わせて貰う。
さて、なにを作ろうかな。
その日は、午前中で店を終わりにしたけど、冒険者は満足そうな顔をして帰って行った。
「ユージの料理は、大人気だね」
「人気なのは、喫茶店シーナですよ。居心地がいいんでしょうね」
「嬉しいことを言ってくれるね」
その後掃除して、私は、魔法陣の製作にかかった。
今日は時間がある。
「毎数を稼がないとな……」
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