第2話
「……」
起きたら、ベッドの上だった。
上体を起こす。テーブルには、すぐに食べられる物が置いてある。
「あ! 兄さん、起きたのかい?」
声をかけてくれた女性だった。
あんなに移動したのに、追いかけてくれたのか?
「追跡魔法がなかったら、追いかけられなかったよ。それと、他人の好意は受け取っておくべきだよ?」
「……魔法?」
「ああ、異世界転移者だったみたいだね。まず、この世界の常識を覚えようか。でも、その前に食事だね。ゆっくり食べな」
目の前にスープが置かれた。
私は涙を流しながら、スプーンでスープをすすった。
こんなに親切にして貰えたのは、何時以来だろう……。
味は……、分らなかった。
◇
「……イメージしたモノを作り出す? それが、魔法?」
私は……、美大を中途退学した経歴を持っている。
親に、多大な負担をかけて、進学できなかった。
理由は……、『本物の天才』を知ってしまったからだ。
それから、混乱に陥り、筆が進まなくなった。
気が付くと、あれだけ好きだった、創作活動から遠ざかっていた。
「イップス……、トラウマ……。打ち込んでいただけにダメージが大きかったんだよな」
その後、バイトを始めて親の援助も断って自立した。
確定申告も行った。
誰にも批判は言わせない。私は、独立していた。
最終的には、就職もしたんだ。
その経験を生かす……。
「イメージね……」
白いハンカチを取り出す。
それに、魔力を送った。
「……えっ? なに? その魔法?」
私は、今目の前の風景を、白いハンカチに投影した。線となる部分が燃えて色が付く。分類としては、火魔法かな?
この方法では、紙だと燃えてしまいそうだな。紙なら、インク……水魔法?
それを見た女性が驚いている。
「……私のこの街に対するイメージです。まあ、悪くはないかな?」
そこそこの出来栄えだとは思う。
写真ではない。ただの風景画だ。窓から見える風景。証拠にもならない。
でも、私の心にはこの風景が映っている。
それを具現化する……。
「『イメージ』って言葉を捉え間違っているね。普通は、火や風などの奇跡を生み出すモノよ?」
そうなのかな?
でも、そんなのは、先入観だと思う。
試しに、人差し指から火を出すイメージを持って見た。
──ポッ
火が出た。
「……これは、つまんないな」
こんな火なら、ライターでも使えばいい。
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