そうだ! 異世界来たけど漫画喫茶を開こう!
信仙夜祭
第1話
「何処だ……、ここ……?」
私は、見知らぬ土地に立っていた。
え~と……、記憶が曖昧だ。通勤電車の中で、漫画本を読んでた記憶しかない。
一応、人里は見える。見えるんだけど……。
「箒に跨って、人が空を飛んでんですけど?」
誰に突っ込みをいれているのか分からない、独り言を呟く。
だけど、ここにいても始まらない。街が見えるので、向かう事にした。
私に野宿とかは無理だ。
「こんにちは……」
「……こんにちは?」
おお! 言葉は通じた。もう見た目から、外国人で、外国風のというか、見た事もない服装をしている人達だから、不安だった。
自動翻訳なのかな? ラノベの読み過ぎ?
まあ、いいや。訊いてみよう。
「ここは、どこですか?」
「魔法王国の、テペ・ピッサーイルですが?」
魔法王国って外国ですか? 地球ですか? でも言葉は通じる?
混乱が、更に私を襲う。
だめだ……。終わったかもしれない。
◇
街への出入りは、自由だった。
治安は、良さそうだな。
河原へ移動して、橋の下で腰を下ろす。
「持って、三日かな……」
それまでに、なにかできるとは思えない。
ブラック企業で、社畜として仕事しかしていない生活だった。
その仕事をも失ったかもしれない。
「兄さん、異世界転移者かい? 服装が独特だね?」
声の方向を振り向く。
緊張する。
「異世界転移ですか? まあ、そうなのかもしれないんですけど……」
話を聞くと、泊めてくれるという。それと、仕事も斡旋してくれるのだとか。
親切だな……。親切すぎる気がする。
だけど、どうしても疑ってしまう。
その日は、帰って貰った。
「どうしても、信用できないんだよな……」
その日は、川の水だけで過ごした。
◇
二日目。
することもなく、横になっていた。
もう、気力もわかない。
正直、このまま死にたい。
「兄さん。まだいたのかい?」
昨日の女性だった。
バナナみたいな食べ物を差しだして来たけど、受け取りを拒否する。
受け取る理由がなかったからだ。
女性が、帰って行く。残念といった背中を見せながら。
「移動しよう……」
三日目。
私は、街から出た。
体力は限界だったけど、人知れず死にたかったので、森の中を歩いた。
まあ、川沿いを進んでいるので、戻ることはできる。
体力の限界が来たので、今日はここまでとした。三日間、なにも口にしないとこうなるんだな。
森を探せば、果物くらいあるかもしれない。兎くらいなら、捕まえられるかもしれない。
だけど、気力がわかなかった。
目を閉じる。
もう、どうでも良くなった。
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