そうだ! 異世界来たけど漫画喫茶を開こう!

信仙夜祭

第1話

「何処だ……、ここ……?」


 私は、見知らぬ土地に立っていた。

 え~と……、記憶が曖昧だ。通勤電車の中で、漫画本を読んでた記憶しかない。

 一応、人里は見える。見えるんだけど……。


「箒に跨って、人が空を飛んでんですけど?」


 誰に突っ込みをいれているのか分からない、独り言を呟く。

 だけど、ここにいても始まらない。街が見えるので、向かう事にした。

 私に野宿とかは無理だ。



「こんにちは……」


「……こんにちは?」


 おお! 言葉は通じた。もう見た目から、外国人で、外国風のというか、見た事もない服装をしている人達だから、不安だった。

 自動翻訳なのかな? ラノベの読み過ぎ?

 まあ、いいや。訊いてみよう。


「ここは、どこですか?」


「魔法王国の、テペ・ピッサーイルですが?」


 魔法王国って外国ですか? 地球ですか? でも言葉は通じる?

 混乱が、更に私を襲う。

 だめだ……。終わったかもしれない。





 街への出入りは、自由だった。

 治安は、良さそうだな。

 河原へ移動して、橋の下で腰を下ろす。


「持って、三日かな……」


 それまでに、なにかできるとは思えない。

 ブラック企業で、社畜として仕事しかしていない生活だった。

 その仕事をも失ったかもしれない。


「兄さん、異世界転移者かい? 服装が独特だね?」


 声の方向を振り向く。

 緊張する。


「異世界転移ですか? まあ、そうなのかもしれないんですけど……」


 話を聞くと、泊めてくれるという。それと、仕事も斡旋してくれるのだとか。

 親切だな……。親切すぎる気がする。

 だけど、どうしても疑ってしまう。

 その日は、帰って貰った。


「どうしても、信用できないんだよな……」


 その日は、川の水だけで過ごした。





 二日目。

 することもなく、横になっていた。

 もう、気力もわかない。

 正直、このまま死にたい。


「兄さん。まだいたのかい?」


 昨日の女性だった。

 バナナみたいな食べ物を差しだして来たけど、受け取りを拒否する。

 受け取る理由がなかったからだ。


 女性が、帰って行く。残念といった背中を見せながら。


「移動しよう……」



 三日目。

 私は、街から出た。

 体力は限界だったけど、人知れず死にたかったので、森の中を歩いた。

 まあ、川沿いを進んでいるので、戻ることはできる。


 体力の限界が来たので、今日はここまでとした。三日間、なにも口にしないとこうなるんだな。

 森を探せば、果物くらいあるかもしれない。兎くらいなら、捕まえられるかもしれない。

 だけど、気力がわかなかった。


 目を閉じる。

 もう、どうでも良くなった。

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