第14話 不思議な夢と初邂逅。それから残酷な事実
お風呂が終わり、心身ともに疲れ切ったアリアは部屋に到着するとシオンが出ていくなり、ベッドへ飛び込んだ。そして、そのまま夢の世界に落ちていったのであった。
アリアは、見知らぬ薄暗い部屋の中にいた。その部屋は、筒状の水槽が並んでいて中には黄緑色の液体が入っていた。
(何だここは?)
その水槽の中に2つだけライトで照らされているものがあった。
アリアは、その水槽が気になり近づいて中を覗き込んでみようとした。しかし、その瞬間身体が拒絶反応を起こしたように震え出した。
(何だ何だ!?)
突然の出来事に、アリアは当惑し、ただ震えが収まるのを待つだけであった。
しばらくして、震えが収まったアリアは恐る恐る身体を動かして様子をみた。
(何ともないな。何だ、さっきの震えは?)
少し考えてみたが分からないのでまた今度考えるとして、今は気になっていた2つの水槽に近づいていった。
しかし、その水槽の中には液体のみで何も入ってはいなかった。次に、水槽の周りも調べてみると水槽から管やケーブルなどが出ていて、管は奥の装置に繋がれていた。
ついでに、その装置にも近づいて調べてみた。今は、電源が入っていないのか計器もボタンも明かりが消えていて、沈黙していた。
(何だこれ?研究所?何か生物でも培養しているのか)
アリアは、更に部屋の中を見回してみた。すると、水槽群の間からドアがいくつか見えた。
その中の一つに、やけにごつく分厚い鉄ドアがあり、アリアはそれが気になった。そして、音が鳴らないように慎重にドアを押し開けて、そのドアの先に進んでいった。
そこは、ただ広い何もない部屋であった。
アリアは、ゆっくりと部屋の中を観察した。すると床に、何やら大きな丸とその中に図形やら文字らしきぐにゃぐにゃしたものが描かれていた。
(錬成陣とかか。ハ●レンか!?ホムンクルスでも出るか!!)
少しだけウキウキしながらそれを見つめた。
しかし、それ以上の事は何もわからず、アリアは再び部屋の観察に戻っていった。
部屋を見回していると、錬成陣らしきものとは別に、部屋の奥にまたドアがあった。
アリアは、そのドアに向かいドアノブを握りしめた瞬間、その腕を掴まれた。
突然掴まれて声にならない悲鳴を上げてアリアは、すぐに隣を見た。すると、自分よりも成長した15歳ぐらいのアリアがそこにいた。
そのアリアが自分に向かって口を開いた。
「まだ、この先を見るのは早いわ。ちゃんと、学園生活をして来て!」
そして、急いでアリアの手を引くと、元の水槽だらけの部屋に戻った。
「ここで見たことをすべて忘れて!まだ、バレていないはずだから!」
成長したアリアが真剣な表情で見つめそう口にした。
そして、アリアの胸を触ると辛そうな表情で見た。
「ごめんなさい。私では、出来なかった。あなたは私みたいにならないで!」
それを聞いたアリアは、“何がどうなって”と聞こうとした瞬間、目の前が白くなり始めた。
「・・・・・・・・・・・、暴いて!!」
最後の心からの叫びだけが聞こえた
アリアは、飛び起きると部屋を見渡した。
そして、自分の部屋であることにほっとした。
「ん、なんで俺はただ部屋を見ただけで安心したんだ?」
もう一度、自分の部屋を見渡してみた。
「今度は、なんともないな。んーー?」
そして、何か悪い夢でも見たのかと、内容を思い出そうとした。
「ダメだ!全然思い出せない。何か見たのか、俺は?」
それでも、なんとも釈然としない思いがあり、もう一度頭の中を掘り返す様に想起した。
「あっ!何かでそう!もうちょいだ!」
頭痛がするくらい、掘り起こすとあることが想起された。
「あ、思い出した!何か成長したアリアにあったような気がする」
そして、そのアリアの姿を脳裏に思い起こした。
「表情はぼんやりして分からないが、その他は思い出せたぞ!」
アリアは、自分の胸に触れ確認した。
「全然育ってなかったぞ!ゲームのは、盛ってたのか!これが、悪役令嬢のやり方かよ!ちくしょーー!あれは、盛りすぎだろ!」
実物の控えめな制服の盛り上がりのみがアリアの脳裏に思い出されたのであった。
アリアは、もうあまり成長はないのだなと胸を見て一瞬絶望した。しかし、今日一日のことを思い出すと、その考えを改めた。
「俺なら出来る。今日一日で関係の修復をやり遂げた俺だぜ!大きく出来るはず。諦めたらそこで試合終了と偉大な先生も言っていたぞ。やればできる!!そうと決まれば、大きくする方法だ!」
アリアは、もう先ほどの夢を完全に忘れて、一心に大きくする方法を考えた。
「鉄板事項はミルクだろ。後は、胸を揉むとかがあったか。それから、適度な運動だったな。最後に、胸つながりで鳥の胸肉でも食うか。これで行けるはずだ!」
そう考えを纏めると、明日から屋敷の周りをランニングしようとアリアは決心した。
それから、廊下に耳をやり足音が無いことを確認すると、徐に胸に手を置き、マッサージを開始した。
「・・・」
ひたすら、マッサージを続けていると視界の端に大きな鏡が入り、そこに自分の胸を揉むアリアの姿が映っていた。
「何やってんだ、俺!!」
空しい行為を一心に励んでいる自分にアリアは、そう叫んだ。
そして、マッサージを止めようとした時、ドアが開きシオンが転がり込んできた。
「アリアお嬢様、いかがなさいましたか!」
シオンは急いでアリアの無事を確認しようと目を向けた。
そこには、驚いて目を見開いたアリアがいた。
シオンはそれとアリアの健気な努力を目にして、薄っすらと涙が瞳に浮かんだ。
「申し訳ございませんでした」
そう言うと、柔和に笑み、いたいけなアリアの姿を脳内に焼き付けてから、ドアからそっと出ていった。
アリアは、ベッドに顔を埋めると声にならない叫びを上げて、夕食までの時間を顔を埋めて過ごした。
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